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「神様時計」②

 とうとうぼくらはたどり着いてしまった。
「ここが世界の果てと言われる場所か」
「大げさねえ。あんなにはるか彼方に巨大に聳えていた『塔』だけど案外ただの時計台にしか見えないわ」
「登り始めるとかなりきついよ。まず入場料を取られる。それが安くない。親の仕送りと自分のバイト収入と奨学金という名の借金。体力と気力は奪われ遊びの誘惑という風に飛ばされそうだぜ」亡霊が現れる。
「オレたちは戦ったぜ」顔はやはりマスクで覆われ手には液体いりの瓶。
「権力の牙城へようこそ」
「誰だってここを目指すことができることは平等で公平だよね」
「どれだけ容易くたどり着けるかがそもそも不平等なのさ」
「こんなとこ楽しくないしわざわざ来るだけのメリットもないわ、プライドの高い田舎者にはウンザリよ」
さまざまな声が響いているが無視して登る。ついに文字盤だ! そのとき鐘の音が鳴り響き足元がガラガラと崩れた。『受験の神様時計台攻略編』
ゲームオーバーだった。

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