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隊長職変死の椅子

 帰宅した私を暗がりで出迎えたのは着信を知らせるランプの点滅だった。家電なんて解約しとくんだった。
『急いで隊長に連絡してくれ』?   
非通知だ。隊長って誰よ。そもそもあの子が集団に属したりするはずがない。クラスなら級長とか委員長クラブなら部長生徒会なら会長でしょ? まさか私に黙って社とか局とか課とか係の組織図に所属しているの? なんとか隊となるとさらに悲惨よ。あの子には絶対に無理ね。あそこは噂によると職業変更は死語、いいえ死後だったかしら。音楽隊とか合唱隊など長閑な集団? 駄目よ油断は禁物よ。パート争いで楽器に細工とかされちゃう。

 そのときインターホンが鳴った。電話に気をとられ閉め忘れた扉が開かれた。
「私こういうものです」
言うより早く男は椅子に、あの子の死後の姿のままの上に被せたカバーに手をかけていた。見せられた身分証には『刑事 タイ・チョウ』と記されていた。それより何より思えば留守電はあの子の声だったのよ。

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たらはかに様の裏お題に参加しています。

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