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「プロのバナナ」③

「プロのバナナください」
「ええと、13のゴールドでよろしいですか。13万7800円になります」
「おいおい、何だいこの平べったい蒲鉾板みたいのは。人の頭部は丸くて耳はサイドに、口は正面の下のほうに付いてるんだぜ。顔のラインに沿って曲線を描いた、たとえばバナナ形状のやつに進化させることはできないのかね」
(いやあね、いくら仕事だからってヒマ人のたわごとには付き合ってられないわ)
 すると奥から別の店員が出てきた。
「こちらでいかがでしょうか」
見るとバナナだ。ただのバナナ。
「ワシは通話がしたいのだが」
「ですからこちらです」
試しに耳に当ててみる。
『もしもしアンタ? 希望どおりの機種はあった? 早く戻って電球取り替えとくれよ、ついでにスーパーに寄ってネギ一本頼むわ』

 この通話できるバナナは大いにウケて野次馬客が詰めかけた。安いとあって飛ぶように予約が入る。ついに本社からお叱りの連絡が。

「困るよ、ウチはリンゴ屋なんだから」

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