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「君に贈るランキング」①

 どうしよう、何も浮かばない。真里亞は頭を抱えた。聖テレジア学園の卒業試験にはユニークなルールがあった。答案用紙の裏に詩を書くのだ。どんな詩でも構わなかった。卒業証書には『君に贈るランキング1位』と書き込まれる。ランキングは非公開なので誰もが1位だ。伝統行事なので同窓生のあいだでは使えないが部外者には自慢できる。   
仕方ない。真里亞は筆を走らせた。
『大好きなシスター。貴女は私のランキング1位です。だから詩を書いて卒業なんてしたくないのです。』
シスターは苦手なタイプだったが何を書いても『君に贈るランキング1位』だろうし、まともに目を通さないだろう。
 式の前日に発表があった。
「残念なお知らせです。皆さんの詩は素晴らしい出来でした。でもそちらに没頭するあまり、肝心の答案が白紙だったのです。今年は落第生が大勢います」
 シスターはなぜか嬉しそうだ。女の園の楽しみに目覚めてしまったせいだと、卒業できた真里亞は知らない。

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