きっとこれからも足元の仲間と共に歩いていく

「変な靴下」(自分では「個性的な靴下」だと思っている)を履くことが“やめられない、とまらない”

「変な靴下」(自分では「個性的な靴下」だと思っている)を初めて買ったのは大学生になって一人暮らしを初めて初めての冬。

渋谷で靴下を探す中で見つけたのが「3足1000円」のコーナー。オーソドックスな無地から派手な柄物まで、どれを選んでも「3足1000円」らしい。

生まれ育った場所があまりに田舎で、それまで制服かジャージで過ごしていたため、衣類を自分で買うことが苦手だった私は、「これは無地の靴下よりも派手なものを買ったほうがお得なのでは!自分は天才かもしれない!」という考えにいたってしまい、3足ともデカデカとキャラクターがプリントされた靴下を選んで帰った。

持ち物内の派手ランク、他の追随を許さない圧倒的1位。

きっとこんなに派手なものを買えた自分が嬉しかったのだと思う。地味な顔、地味な服装。でもスニーカーやブーツの中には派手な靴下。こっそり仕込むことが楽しかった。

それから足元では、某黄色い熊や、屋根の上で寝る某犬など、様々なキャラクターたちが微笑む日々が始まった。はじめこそ土足厳禁の部室で友人たちに靴下のデザインに引かれたが、徐々に「今日の変な靴下は何の柄」と、学食の日替わり定食メニューを確認するくらいになった。

馴染めないクラスの授業があっても、1限に寝坊して遅刻しても、バイト先で失敗しても、「今日は○○が足元にいるから大丈夫」と思えた。たかが靴下、されど靴下。靴下は味方だった。


30歳を過ぎた今でも、何かにつけて「変な靴下」が増え続けている。出張先で買ったゆるキャラ靴下、展覧会のミュージアムショップで買った靴下、アンテナショップで買ったご当地企業靴下…仕事には履いていけないのに、休日がどれだけあっても足りないくらい靴下が増えていく。

落ち込んでカラオケへ行く時に、一番好きなキャラクターの顔が前面に描かれた蛍光グリーンの靴下を。

転職して仕事に慣れず疲れた時に、子供の頃好きだった絵本のキャラクターが描かれた靴下を。

右も左もわからないまま一人でアメリカ旅行をした時に、石巻の石ノ森萬画館で買ったヒーローの靴下を。

アイドルのコンサート遠征のために決死の覚悟で休みをとって沖縄へ行った時に、岡山で買った桃太郎が大量に描かれた靴下を。

自分の足元の見えない部分には仲間がいた。回り道でも近道でも、歩きたいように歩く自分についてきてくれる。

これからも見知らぬ道を歩くことがあるだろう。前向きな気持ちで歩く道ばかりとは限らない。でもきっと大丈夫、その道を歩く足元には仲間がいるはずだから。

きっと「変な靴下」を履くことは今後も“やめられない、とまらない”


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