黒柴的パンセ #22

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #12

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく

上手く行かなかったら、どうする?
これは、黒柴が人事担当の役員Eから言われた言葉である

この言葉を言われたのは、人事考課会議の席だった
当時、黒柴はグループのマネージャであり、自身のグループのメンバーに対する人事考課について、詳細を報告していた
グループのメンバーに中堅社員Mがいて、Mは社内の人事ランクとしてはかなり上位となっていたが、当然のことながらその上のランクへのアップを希望していた

人事考課に携わっている諸兄ならわかると思うが、新入社員から一人前のエンジニアとして評価されるくらいまでは、単純にスキルレベルが向上したことを確認することでランクを上げることが可能である
しかし、社内ランクが上位となっていたMは、スキル面は問題ないレベルのため、売上額とか、利益額など、直接的な会社への貢献度が評価の対象となっていた

しかし、現在も同様だがほとんどがSIerへの人材派遣がビジネスの根幹となっていた自社では、SIerとの契約単価以上に売り上げを上げることは出来なかった
また、Mにビギナーランクの社員を大量に押し付けて、そのビギナーランク社員を含むグループでの利益を成果にしようにも、新卒採用に苦労しておりビギナーランクの社員数もほとんどいなかった

Mと面接を重ねる中で、MがSIerに常駐して作業をしている中で、あるパッケージメーカーの社員と懇意になり、そのパッケージの導入について協力し、導入事例を一つ作ったことが話題になった
そのことから、そのパッケージメーカーと協力し、セールスエンジニアのような形で開発案件を獲得し、開発作業を自社に委託することで、売り上げの貢献を増やしていこうかという提案をし、Mも乗り気になった

このMとの面接結果と合わせて、Mの次年度のMの活動・ミッションについて報告したあとの役員Eの一言目が「上手く行かなかったらどうする?」だった
文章だと全く伝わらないが、『上手く行かなかったら、どう責任を取るつもりなんだ、お前は?』という感じで、ほとんど叱責に近い言い方だった
また、会議に参加していた他のグループマネージャ数名も「そんなの上手くいくわけがない」と、役員Eに同調していた

黒柴は、「上手く行かなかったら、上手くいくように施策を考えて、継続して実施していくだけなんだけど・・・」と思っていたが、役員Eを含めた複数の参加者が口々に否定形で意見を言ってくるので、「こいつらに言っても無駄だな」と考えて、あえて反論はしなかった

パンセ#12では、自社の経営層は「自ら経営のビジョンを示さず、社員からのボトムアップで何かが変わるのを待っている」と書いた
また、「ボトムアップを期待しているにも関わらず、発生したアクションに対して、何も反応を示さない」とも書いた
しかし、ここではアクションに対して、それを否定するという反応を示してくれた
このとき、E以外の役員も考課会議に参加していたが、誰ひとりこの件に意見を言うことはなかった
結果として、黒柴の報告・提案は、「否決」ということで実施しないことが決まった

ほどなくして、Mは退職した
望んでいた人事ランクのアップ、およびそれに伴う収入の増加の道が閉ざされたのだから、当然と言えば当然の結果だった
この件は、黒柴にもいろいろと考えさせられることになった
黒柴も、ほどなくしてグループマネージャの職を下りることになる

諸兄らの周囲にも、自分自身が理解できないことに対して、否定する反応しか返せない人は居ないだろうか?

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