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ヒロアカと教育論〜能力主義とヒーローのノブレスオブリージュ〜

先週ヒロアカの最新映画WORLD HERO’S MISSIONを観に行った。
自分は漫画よりアニメ派なので(ながら見ができるから)、ヒロアカも例外ではなく、アニメで日々追いかけている。コロナ禍自粛中に好きになったアニメ作品の1つだ。

見始めたのが去年からだったこともあり、劇場でヒロアカ映画を見るのは初めて。
全体を通じた印象はとにかくバトルシーンの作画がすごかった。鬼滅もすごいと思ったけど、それを超えてくるんじゃないかというレベル。
バトルシーンと打って変わっての、挿入歌のシーンも絵が綺麗で、物語に緩急をつけてて、アジカンの歌が味があって、とってもよかった。

そんな映画を見終わって考えたことを、ヒロアカという作品全体にも視野を広げて、今つらつら書き記す。

※できる限り、作品内容の直接的な表現はさけていますが、以降一部ネタバレ含みますので、ご注意下さい。

悪役とナチスドイツ


ヒロアカの説明や、今作の映画の細かいあらすじ説明は以下のサイトを見てほしい。

https://heroaca-movie.com/

ヒロアカを語る上で外せないのが個性。今作の悪役はその個性が将来世界を破滅に導くとし、個性を持っているものの排除を企み、事件を巻き起こしていく。

最近のアニメでは悪役がただ悪いやつではなく、悪い行動に至る明確な理由が描かれる作品が増えている。
個性が将来世界を破滅に導くという思想。アニメの中でも、個性は世代間を超えるごとに、個性同士が入り混じり、強力な個性に変化し続けている様が描かれている。よって、この思想も全く理解できない発想でない。

ただ、個性が将来世界を破滅に導くという問題に対し、解決手段として”排除”を選んだことは現代では完全悪とされている。
これは、ユダヤ人を排除するという手段を選んだナチスドイツと通ずるものがあると感じた。
(もちろんナチスドイツについては”排除”という手段の上にある思想についての問題の有無もあるだろう。正直ここはまだまだ自分は勉強不足なので手段についてクローズアップする。)

この”排除”を問題解決の手段とする者を悪とする設定は、海外を意識したものだと思う。
ヒロアカが海外で評価が高いことを考慮すると、ナチスドイツという世界の歴史から見て悪役に位置しているものと一致するため、どこの世界でも共感を得やすい設定である。

プルスウルトラという根性論

ヒロアカの代表的なフレーズといえば、
“さらに向こうへ。 プルスウルトラ”という雄英高校の校訓。
今作でもこのプルスウルトラの精神は色濃く描かれている。

ただ冷静に考えるとこの”プルスウルトラ”というのは、自分の能力のその先にたどり着くための諦めない姿勢という、いわば根性論であり、今時っぽくはない。
そして、その根性があるキャラクターの筆頭であるデクが主人公であり、最終的にヒーロー社会で最も評価されるとしている作品である。

頑張るのも1つの才能であると考えるならば、諦めない姿勢を絶対的に正しく、優れた”美しいもの”として描くことが良いかについては議論の余地があるだろう。

個性の優劣

この時代遅れの根性論を振りかざしているにもかかわらず、現代になんの違和感もなく受け入れられている(特に海外)のは、優れた能力の使い方を本質的な形で提示しているところだろう。

今作に限らず、ヒロアカ全体を通じて言えることだが、ヒロアカで描かれている社会は能力(=個性)が全てである。遺伝により、個性が定まり、その個性によって強弱が決まる。
個性がなかったデクが今ヒーローとして活躍できるのも、”ワン・フォー・オール”という強力な個性を手に入れたという要因が大きい。

ただ、その個性の発揮しどころが”ヒーロー”というノブレスオブリージュをそのまま職業としたところがミソだと思う。
強い個性を持ったものが、弱い個性、もしくは無個性の者を、憐れむでもなく、やってあげている感もなく、ただ当たり前に救うのである。
(この筆頭がかっちゃんなので自分は爆豪推し。あの性格でなんの疑問も持たずヒーロー目指しているの最高すぎる。)

WHMと教育


私は映画は気づきを体験できる学習コンテンツと捉えている。その上で、今作のヒロアカWHMは非常に優れた教育コンテンツだと思う。
別に子どもが今作を見たからといって、ナチスドイツだったり、ノブレスオブリージュについて想起する子はほとんどいないだろう。
ただ、排除という手段が悪役として描かれていたことや協力な個性の使い方というのは、言語化されずとも実体験的に積み上がっていくと思う。

このクリエイティブにたどり着くまでの思考を想像するとえげつなさを感じるし、改めてクリエイティブに関わる人たちへの尊敬の念が止まらない。

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