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戸建住宅を買う

 あれから小畑雄一はゼネコンT建設の営業課長として宇都宮市での3年目の冬を迎えている。
 
妻:瞳「もう社宅出るって何人かには言っちゃってるからね。隆博だってもう3年生だし、宇都宮いいところだからここで家買おうって言ったのお父さんじゃん。」

雄一「あっ、あー。わかってる。今いろいろと探してはいるんだど・・・。」

瞳「とにかく学区、学区だからね。今の小学校は優秀な学校だから転校は絶対無理だからね。」

雄一「優秀って、公立なんだからどこも変わらないだろ。」

瞳「ちょっとぉ、わかってないなー。公立でも環境とか学力とか違うんだから、気にするに決まってるでしょ。あと出来るだけ小学校に近いところ、今いろんな物騒な事件起きてるから。隆博に何かあったら大変でしょ。」

雄一「やられたらやり返す。倍返しだ。」

瞳(スルー)

瞳「こないだ見に行ったとこ、道狭かったよね。」

雄一「え、そうか?普通に車走ってただろ。」

瞳「うそ、うそ。あれじゃすれ違いできないよ。お父さんは朝、会社に行ったっきりだからいいかもしれないけど、私はスーパー行ったり、スイミングの送り迎えしたり、酔ったお父さん迎えに行ったり、何かと車で出かけなきゃいけないんだから、そのたびすれ違いや車庫入れで怖い思いするのなんて、あー無理無理。」
 
瞳「あとさ、できれば新しい街にして欲しいんだよね。」

雄一「新しい街?」

瞳「そうそう、例えばあれよ、埼玉の越谷レイクタウンみたいなとこ。」

雄一「なんで?」

瞳「こないだ、はるかちゃんママが言ってたのよ。はるかちゃんち家建てたでしょ。そしたら御近所が大きいおば様方ばかりで、住んだそうそう町内会の役員がどうこうとか、慣習でお祭りには必ず参加しなきゃならないとか、引っ越した途端、部下みたいになっちゃってるって、だから絶対新しい街がいいよって言ってた。」

雄一「あぁ、そうか。何かといろいろあるんだね。俺は出来ればLRT(※)で通えたらいいんだけどなぁ。」

瞳「LRTなんて、お父さんの会社の前が開通するの、あと何年かかるかわからないでしょ。」

※説明しよう。LRTとは宇都宮市を横断する形で現在JR宇都宮駅東口から東方に運行している新交通システムである。

    
 会社では営業課長として実績を伸ばしている雄一であるが、家庭に戻り、しかも住宅購入の話になると、妻瞳の前でたじたじとなるのであった。


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