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ウミユリの茎とウミツボミ(自作の短歌)

私がウミユリの化石を好きになったのは、ウミユリの茎の化石をもらったことからはじまりました。

ウミユリは、ウニやヒトデなどと同じ仲間の棘皮動物で、その姿からウミユリと名付けられていて、茎と呼ばれているのは、体の節の部分です。私がもらったのは、5〜6mmの大きさのウミユリの茎の化石で、星型をしていて、それは五弁の花が咲いているようにも見えるのですが、それがふたつ仲良く並んでいるものです。こんなにきれいな化石があるのだ、と感動しました。発見、採集した人によると、その化石の母岩はとてもやわらかくて、風化したことにより、ウミユリの茎の化石が露頭表面に自然と現れたもので、その状態で足元にあったそうです。

足元にこの化石があったら、小さな花が咲いているように見えたのではないかなと想像していたら、短歌ができました(下の引用の3首目の短歌)。短歌研究社の詠草に投稿しようと思い、他に4首つくって投稿したところ、準特選に選んでいただけました。この時はとても嬉しかったです。

今日という日付を書いて記録するたったひとつの一日だった
化石には採集された日付あり生まれ変わった証しのようだ
風化した露頭に咲いた花見れば化石になりしウミユリの茎
ウミユリの茎の断面五角星 好きになりたる理由のひとつ
ウミユリの星形の茎集めてる光の粒を並べるように

短歌研究詠草(永田和宏選),『短歌研究』,短歌研究社,2022年7月号,236-251

また、母岩から完全に離れたウミユリの茎の化石ももらって、それも5mmくらいの大きさで、いくつか並べて見ていると嬉しくなってきて、上の引用の5首目の短歌ができました。採集した人は、本当は別の化石を採ろうとしていて、微小な化石を採り出すために岩石を処理していたら、そこにウミユリの茎の化石が紛れていたそうです。小さな星形の化石が紛れて出てきたなんて、それだけでもわくわくします。

化石はいつ、どのようにしてできたかはそれぞれの化石でさまざまです。けれども、いつ、どこで採集されたものかは記録することができます。化石が採集された年月日は、たとえば、2023年8月30日でしたら、20230830と記します。ただの日付としての数字ですが、私はその数字を見ていると、その化石がもう一度この地球に生まれた日付のような気がしてくるのです。誰かに見つけられて、もう一度存在しなおすような感じがします(引用の2首目の短歌)。

そして、ウミユリの化石をきっかけに、ウミツボミという生き物の化石を知りました。ウミツボミもウミユリと同じく棘皮動物で、ウミツボミは名前のとおり、蕾のような形をしていて、可愛らしくて、好きになりました。

化石というと、恐竜やアンモナイトの化石の印象が強いですが、形の可愛さなどから化石と出会ってみると、また違った世界が広がってきます。自然の造形は美しいし、化石の質感もそれぞれ違って、見ているとおもしろいし、美しいと思います。

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