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DARK SOULSで考えるwebデザイナーのステ振り攻略

はじめに

Webデザイナーというのは、時間が有限にもかかわらず求められるステータスが多い。そのために、あるジャンルを追求しているように見えるグラフィックデザイナーやエンジニアに比較して中途半端だなと迷いながら日々、制作や学習に励むことになる。
Webデザイナーという職業自体が、中途半端さを含んでいる。ブラウザの仕様や使われるプログラミング言語、またハードウェアの性能といった環境要因が制作の方向の多くの部分を左右するだろう。それに伴うツールの変化もある。

Webデザイナーは、デザインとプログラミングを学んでいるだろう。そして、そのデザインというのはタイポグラフィーであったり、アイコン、ロゴ、レイアウト、ビジュアルデザイン、モーション、webデザインの歴史、グラフィックデザインの歴史といったあらゆるものを含んでいる。
プログラミングにしても、基礎的なHTML、CSSの知識から、Javascriptやweb glなどの演出、さらにはReactやNuxtなどのフレームワーク、サーバーの仕組みや、プログラミングの歴史、ハードウェアの歴史といった部分、ハッカーとしてのマインドまで幅広い。

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Webデザイナーというのは、可能性は無限大でめちゃくちゃ楽しいが故にスキルアップが非常に難しい。何かを勉強する際には特定の分野を区切ってそこにフォーカスして学ぶ、それをまた繰り返すというのが重要だからだ。意思を持って区切る、有限化するというのが何よりも重要になってくる。

DARK SOULSについて

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DARK SOULSとは、FROMSOFTWAREが開発したゲームで2011年9月22日に第1作が発売された。その難易度の高さと、作り込みの凄さ、それに比例する攻略した後の達成感で多くのプレイヤーに衝撃を与えた作品だ。後にジャンルの名称そのものにもなりソウルライクと呼ばれる多数のゲームが出ることになった。
DARK SOULSにはステ振りと呼ばれる「経験値をキャラクターの能力値に割り当てる」ものがある。どの能力値を伸ばすかというのがゲームを進める上で肝になっている。今回は、DARK SOUKSシリーズの基本的なシステムについては共通のものとしているので1,2,3でそれぞれ違いはあるにせよ大まかに捉えていただければと思う。

DARK SOULSのステ振りをWebデザインに当てはめてみる。
人生というのは、DARK SOULSである。人生とはDARK SOULSのような困難な状況に心折れずに立ち向かえるのかという問いかけである。
フロムソフトウェアのゲームは、まさにそういった傾向がある。
私が未知の言語に向かう際の、非力さや感じる絶望はまさにDARK SOULSのボスを目前とした心境に似ている。
かつて、Reactの本を買った時に感じたのはまさに絶望でしかなかった。何も分からない、エラーが一つでも出れば自分では解決できない、Reactの本こそが絶望を焚べよという感じだった。DARK SOULSにReactの本を焚べて現実世界における亡者化が進行。パソコンに絶望を焚べ、パソコンに人間性を捧げていた日が存在していた。

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ステータス振りを考える

DARK SOULSにおける各値を、webデザイナーにおける技能にわけて考えてみる。

以下がDARK SOULS3のステータス

レベル:総合的な能力の高さ
生命力 : HP量と冷気耐性を決めるステータス
集中力 : 魔法のスロット数とFPを決めるステータス
持久力 : スタミナ量を決めるステータス
体力 : 装備重量を決めるステータス
筋力 : 筋力で扱う武器を装備と、攻撃力に影響するステータス
技量 : 技量で扱う武器を装備と、攻撃力に影響するステータス
理力 : 魔術を使用するために必要なステータス。魔術の効果、魔法防御力にも影響
信仰 : 奇跡を使用するために必要なステータス。奇跡の効果、雷防御力にも影響 : 
運 :  アイテム発見力や、状態異常への耐性値に影響するステータス


これらをwebデザイナーのステータスに置き換えてみる。

レベル : 総合的な能力の高さ
生命力 : モチベーション
集中力 : デザインやプログラミングの歴史、ハッカーマインドの知識
持久力 : 仕事や学習にさける時間
体力 : パソコンや技術書を持ち歩ける力
筋力 : デザインをする能力
技量 : プログラミングをする能力
理力 : 企画やプロジェクト進行をする力
信仰 : 尊敬するデザイナーやハッカーの崇拝度
運 :  故障の少ないパソコンを買える力
( 武器、装備の強化 : パソコンのスペック、ソフトウェアのスペック)

冒頭にも書いたがWebデザイナーというの求められるステータスが多い。故に常に今はどこにフォーカスするべきかかという葛藤がある。
ここで常に覚えておきたいのはステ振りとはある部分に極端に振った方が戦いやすい。DARK SOULSシリーズで定説的に言われているのが中途半端にステ振りをすると詰むということだ。
しかし、一方でwebデザイナーというのはとことん中途半端であることを余儀なくされるという矛盾がある。なので一つを極めるのではなくある一つのハイブリッドを当初は目指すべきである。ステ振りは絞らなくてはいけないが、そもそもハイブリッドでなければwebデザイナーとは言えない。

どの素性で攻略するのか

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Webデザイナーの場合、大きく分けてルートは2通りある。プログラミングやマークアップの側から覚えていくタイプとFigmaやsketchなどのGUIツールを使ったデザインから覚えていくタイプがいる。
私の場合は、デザインの側から覚えていっているタイプである。そちら側の視点で書かれている。

私が現在プレイしているDARK SOULS 3は1週目は筋力と技量を伸ばす上質ビルドにしつつ、2週目で理力を伸ばす魔術剣士を目指している。
上質ビルドは、黒騎士の剣を使っていくと、筋力と技能に補正がかかるので終盤において攻撃力が上がってくる。
剣の強化プラス筋力と技量の補正効果が追加されるので大抵の敵には通用する攻撃力を出すことができる。(さらに、DARK SOULSでは指輪の補正効果などもあるがキリがないのでその辺は割愛する)

DARK SOULSの攻略において、一般的に言われているのは攻略序盤においては何よりも生命力と持久力に振った方が良いということだ。
攻撃力の強化などは、終盤のステータスが上がってきた段階でできるので最初はまずは死なないようにすると言った感じだろうか。

Webデザイナーも同じく、最初は生命力(モチベーション)や持久力(学習、制作に当てる時間)に振るべきだと思う。何か情熱を感じるものを見つけることというのが大事になってくる。それらは、原体験のようなものなのでデザイナーになる頃にはステ振りとして極まっている人も多いだろう。私にとっては、キャリアの始めに見たSemitransparent Designのハードウェアとインターネット、デザインのハイブリッドで繊細な感性、SIMONEのファッションデザインにおけるシャープさ、Basculeの意味不明なエネルギーといったものに衝撃を受けて今も目標にしている。

ただ、モチベーションと時間があるだけではやる気ある若人にすぎないので何かしら特殊技能というか実際に役立つスキルのようなものを身につけたいと思うだろう。

ここからが重要なことで、とにかく一つのステータスをある程度まで伸ばすこと。デザイン(筋力)なのかプログラミング(技量)なのかとにかく一つのことを他の誰よりもうまくできるというレベルまで持っていくことが重要だ。
その際に、勤めている会社の要請や周りのスキルみたいなことをなるべく無視して一つのことに打ち込むこと。ハイブリッドなスキルを身につける近道としては、一つのステータスを一度極めることが大切になってくる。

私が入社した会社は、周りがほとんどプログラマーで求められるものはデザインだけだった。そのおかげで集中的にデザインをやることができた。当時はクリエイティブコーディングと呼ばれるプログラミングによるビジュアル表現が盛んで自身もそういった分野をやりたいと思いつつ、まずは自分ができる部分を作ろうとwebのレイアウトやアイコン、ロゴといった部分のフォーカスした。環境要因と自身でやることをだいぶ狭めていくことを意識的にやっていた。

現在、私はプログラミングの学習をしているが多くの本を買っている。そして無駄にしている。一度取り組んでは忘れ、挫折して別の言語に挑戦してということを繰り返している。デザイナー出身のプログラミング学習を見ていると一つの教材や本でその言語を覚えようとしている人がいるがそれは難しいだろう。いくつかの言語を同時並行で覚えることでその中からおぼろげにプログラミングのパターンのようなものを覚えていく、手を動かして実際に実装して失敗しないと覚えることはできない。
一度で理解するのではなく違うもの、何種類もの本や教材をとりあえずやったという状態にするのが良い。

私は、それらを自身のデザインの学習方法を参考にして思いついた。私は、デザインはある程度はできるようになったと思える(入社してから8年くらいはデザインだけをやった)
その際に、多くの本を買い、体験、展示、ゲーム、あらゆるものを参照しながら実際に手を動かし失敗の中で覚えてきた。そしてある時からプログラミングの学習を始めたが、その際に読んでいる本や学習のリソースが自分がデザインを学んでいるときに比べて圧倒的に少ないと感じた。
本気でプログラミングを学ぶなら自分がデザインを学んだ時と同じ分量の専門書や教材を用意して当たるべきだと考えた。実際に周りのプログラマーたちは言語の本だけでなく過去の歴史や考え方、どうあるべきかなどの心構えも読んでいることを思い出した。
これらのことはプログラミング出身のデザイナーにおいても言えるだろう。自身がプログラミングに割いてきた時間や情報量と同じくらいデザインに対してもできているかどうか、その辺りが今自分がどのあたりにいるかの目安にもなるだろう。

当たり前のことのように思えるが、あるステータスを納得いくまで追求するとその時の方法論や感覚が他ジャンルを学習する際に役立つし指標になる。その一方で、どのステータスも深く追求していない場合、他のステータスにおいてもどうすればうまくなるのかということがわからなくなるのではないだろうか。

DARK SOULSにおけるステータスとは

DARK SOULSにおけるステータス振りはとても重要だ。DARK SOULSを初めてプレイした時はシステムについて何も調べずにプレイして、ソウルをロストしまくってレベルを上げられずにアノール・ロンドで武器も壊れて完全に心が折れた。再挑戦してクリアするまで2年以上かかった。その間に、SEKIROやBloodborneといったFROM SOFTWAREの別のゲームでシステムを理解できたのも良かった。

DARK SOULSがドラゴンクエストなどの伝統的なRPGゲームと何が違うのか。それはステータス振りの半分以上はユーザーのプレイの上達にかかっているという点だろう。
ドラゴンクエストなどのゲームにおいては、成長するのはゲームの中のキャラクターであるがDARK SOULSで成長していくのは動きを学んでいるゲームコントローラーを握ったプレイヤー自身である。周回プレイをするとゲームの原理が分かり楽しさもあるくらいに簡単に敵を倒していける。パリィ、バックスタブ、といった基本を実現できているからだろうか。

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これらについて、webデザインに置き換えて考えてみる。
ステータスとはなんだろうか。それは、基礎力であり知識である。本などで読んだ基本的な知識や今までの経験によって蓄えられた技術や形にする力といったところだろうか。
それに対して、プレイとは現在の状況に対して自分の持っているステータスをぶつけていく瞬間のことである。言い換えれば、仕事に対する向き合い方とも言えるだろうか。
デザインやプログラミングや企画といったいわゆるベーシックなスキルがいくらあっても達成できるかというのはプレイ次第ということになる。逆に言えば、ステータスが多少低くてもプレイ次第ではステータスが高い人よりも良いものを作れる可能性がある。(往々にして上級者とはステータスもプレイもすごいが)

デザインに関して、求められる条件をこなすというものがある。仕事として、成立するという状態だ。キャリア初期の場合は求められるものも多くないので物足りなさを感じるだろう。そのような条件下でおすすめなのが仕事として求められるもの以外のテーマを設定してクライアントから見えない部分でハードルを作ることだ。例えば、ロゴを制作する際にはロゴを作るだけではなく、ロゴの書体を制作して書体制作ソフトのGlyphsを覚える(さらに見出しで使えるようにする)とか、メインビジュアルがなければ撮影までしてしまう(簡単にレンポジを使わない)など、運動量を増やすことで一回の仕事でより多くのレベルアップを図ることができるだろう。

プレイとは絶望的な状況に直面したときの心の動きでもある。自分には理解できない、このジャンルは無理だ、新しい技術に対して尻込みしてしまうこと、タイポグラフィーの奥深さに慄くこと。

プログラミングに関して、なんでこんなわからないことをやり続けなければならないのか、もっと職人的な技術として積み重ねられることをするべきでないのかという葛藤を抱えている。そんな状況下においても続けていられるのは原体験のおかげでもある。私はSemitransparent Designの人は全員、プログラミングからデザイン、ハードウェアまでできるんだろうなという思い込みによる架空の人物を設定していた、なのでそこに向かうことが今後の人生で時間を使うことだと明確にわかった。周りから求められているものや、流行しているからではなく、自身がイメージした製作者の像に近づくということを仕事や学習で実践している。
難しいなぁとか迷っているときは自身の原体験にあるようなものに立ち返ってみると良いと思う。DARK SOULSのゲーム中に何度も出てくる「心が折れそうだ」というのは、全てのwebデザイナーが感じていることではないだろうか。

別のやり方を考える

ここまでは王道プレイ的な内容を書いてきたがそれだけだと自分のやり方では他の人に並ぶのは難しいと感じる人も当然いるだろう。
個人で達成できなくても良い。協力プレイや、別の仕方でどこかに到達する方法もある。最後にその辺りを書いて終わりにしたい。

DARK SOULSにおいて、ボスや道中において攻略が難しい場合、白霊を呼ぶシステムがある。自分一人ではなく、友人や、ネット上で募集した人と一緒にオンラインで攻略を進めるというものだ。
白霊がいればだいぶ助かるし、何よりもある程度分担ができる。例えば、近接で殴るのがあまり強くない場合は殴るのは他の人に任せて後ろから魔法を撃って援護に回ったり、回復魔法を使ってプレイヤーを助けたりといったことができる。

Webデザインにおいても、最初は自分一人で考えるのではなく周りにいる人を自分の一部だと仮定してそこにない部分をやると全体としていいものができるようになるかもしれない。自分のステータスは、チームに依存させながら、足りない部分のなかで、自分にできることをやる。まずは、チーム全体として、何か突出したものを作るという考えであれば多くのステータスはいらないはずだ。少し、実例を交えながら書いてみる。

実例

1、ユニバ株式会社 ポートフォリオサイト

私は最初の会社に入った際は周りの会社の人たちに比べてデザインの能力があまり高い方ではないなという認識をしていた。作るポートフォリオの実績においても見栄えがよいというよりも技術的に面白かったり、裏側部分だけを担当しているというのがありグラフィカルな見た目は統一性がなかった。
なので、ポートフォリオサイトを作る際は中身をじっくり見てもらうといよりもサイト全体で一つのメッセージになるようにしようと考えた。3Dでビジュアルが動くイメージで、一つ一つの画面はシンプルに、静止画で見ても良さは分からないが触ってみると面白いとなるようなものだ。サイトの出来としてはエンジニアの力量に多くを委ねていて私はアイデアや設計の部分、また進行などを主に注力している。実績として何が入ってもある程度見えるように強いフレームを作った。そもそも、webデザインは静止画で見るものじゃないということにしてならではの強みを生かそうとした。

2、ルミネ株式会社 コーポレートサイト

もう一つは、日本デザインセンターに入った後のもので、ルミネのコーポレートサイトを制作した。こちらの製作時は、社内にエンジニアがいない環境だった。その代わり、デザイナーで手伝ってもらえる人がいた。私自身のデザインのスキルが上がっていたこともあり、静止画の状態でもある程度良さが伝わるものを作ろうと考えた。中身をしっかりと見せようと思い、写真を北村圭介さんにお願いして雰囲気を作っている。また、デザインセンターにはコピーライターがいるので言葉の面でもデザインと合わせて雰囲気を伝えらるようにしている。
サイトの作りとしても派手な演出ではなく丁寧なレスポンシブ対応でどのデバイスで見ても印象を合わせること。割合としては、レイアウトや中身を重視して、フレームの部分は少し引いた構造になっている。

3、SOTOグラフィックアーカイブサイト

こちらは、最近作ったもので上記に書かれているような自分や環境のウイークポイントを意識した上でスキルアップをしながら作った。Next.jsでサイト自体を実装しながらデザインも調整していくような進め方をしていった。デザイン、実装どちらかに振るというのではなく互いの利点を生かすようなポイントを探りながら一人で制作していった。上質的なビルドをしてどちらかが特化しているわけではないが総合力で火力を出せるようにしている。また、演出部分も普段はあまり作らないが今回はGSAPの有料版を契約してモーションで使っている。足りていない火力部分をエンチャントで補うようなイメージで使っている。

ある程度一生懸命ある分野で取り組んでいても先達のような素敵な成果が出ないという悩みがあるかもしれない。そういった時に、必要なのが発想の転換だ。ある考え方はなぜ正しいのか間違っているかということを突き詰めて考えていく。そのことで対象に対して解釈によって相対化、距離を置くという術を身につけられる。哲学にヒントがあるかもしれない。うまい形を作れないなら、そもそも生っぽい形の暴力性こそが生きるような美学へと自身の感性を変化させる。
そもそもデザインではなく他のことで勝負する、プログラミングであったり企画の面白さであったり一緒に組む人の人選であったり。
とにかく、心折れずに最後までやり切るための手段を多く持っておくに越したことはない。


パソコンに絶望を焚べよ、パソコンに人間性を捧げよ

DARK SOULSをやりながら、ゲーム実況を見ながらどこかの誰かも同じく絶望に直面しながらも乗り越えようとしていることに勇気をもらった。そして、実際に私自身もプレイしながら分厚い技術書を読んで分からないと思いながら日々勉強をしていた。
DARK SOULSは、自身にとって娯楽以上の哲学、生き方そのものである。
私たちは今日もパソコンに絶望を焚べ、そしてパソコンに人間性を捧げている。

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