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渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(24)」

 登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(24)」からです。

 


かような福祉型の信託目的が信託目録に記録すべき情報として記されている場合、第三者の債務のための抵当権設定の許容とという概括的な信託行為の定めは、特定の障害児の保護などの信託目的に対して、形式的に整合し得るのか、という問題がある。
 
信託の目的
親亡き後の障害児の保護
信託財産の管理方法
管理の方法
障害児の身上保護に配慮した信託不動産の管理
受託者の処分権限
信託不動産に対する第三者の債務のための抵当権設定

 


・障害児にとって、信託不動産に対する第三者の債務のための抵当権設定が、利益になる具体的な場面を、思い浮かべることが出来ませんでした。

・登記手続上、現在の受益者、またはその他の信託条項の次順位の受益者の欄で、障害児が特定せれているかが分からないと、判断するのが難しいのではないかと感じます。

 なお、記事で検討の出発点とされている、昭和41年5月16日付け民甲第1179号民事局長回答は、不動産登記令20条8号により、信託法4条違反を根拠として却下とされています[2]

 

以下のような信託条項の登記がされている場合、受託者による当該信託不動産の売買を原因とする所有権移転登記の申請は、登記手続上、その違反が明白とはならないだろうか。
信託の目的
受益者の生活・介護・医療の支援(福祉型信託)
受益者に対する安定的な住居の提供
信託財産の管理方法
信託法26条ただし書の定め
受託者は信託不動産を売却しない
受託者は信託不動産に担保権を設定しない
―中略―
資格者代理人は、予め、信託契約と信託目録に記録すべき情報の内容の工夫を要し、受益者の判断能力の低下に関わらず、信託期中の変更を可能とするような仕組みとしておくべきであろう(資格者代理人の執務規律の問題となる)。


 

 受託者の権限に禁止事項を規定し、例外を列挙するか信託の変更で対応しようとする様式に思えます。

 受託者の権限を限定列挙し、想定外の事態に信託の変更で対応する様式の方がシンプルなのかなと考えます。

 


◆受託者が信託財産のために行う法律行為の効果は何か?
□信託の目的に違反している場合の効果は?
その違反が著しい場合の効果は?
□受託者の権限外行為の場合(信託法26条、27条)の効果は?
その違反が著しい場合の効果は?
□法31条1項1号、2号の利益相反取引で2項違反の場合の効果は?
□同条4項の行為をした後、第三者への処分行為の効果は?
□同条1項3号、4号の利益相反取引で2項違反の場合の効果は?
□忠実義務(30条)違反の場合の効果は?
その違反が著しい場合の効果は?
□8条違反の場合の効果は?
□善管注意義務(29条2項)違反の場合の効果は?
その違反が著しい場合の効果は?
□受託者の意図的な権限濫用の場合の効果は?


 今後判例、裁判例が出てきて変わるかもしれませんが、民法上の信義則違反、公序良俗違反を除いて、信託法を根拠として無効とする場合は、2条、3条、4条、5条、7条、8条、9条、10条に限られるのではないかと思います。

 



[1] 907号、令和5年9月号、テイハン、P43~

[2] 河合芳光『逐条不動産登記令』平成17年、きんざい、P121