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放送間近!『SSSS.DYNAZENON』放送決定記念!『SSSS.GRIDMAN』レビュー


 『SSSS.DYNAZENON』襲来‼‼‼‼‼


 2021年4月にアニメスタジオTrigger制作の『SSSS.DYNAZENON』が放送されます。今回それに先駆け、この前作にあたる『SSSS.GRIDMAN』を全話見直してみました。これが相も変わらず大傑作だったので私的なレビューをここに書き残しておきたいと思います。

 一言で表すならば本作『SSSS.GRIDMAN』は”全エピソードが90点以上の作品”。僕ごときが点数をつけるなんておこがましいですがそれでも本作が全体的に高いクオリティを保っていることは保証できます。

 このレビューは完全ネタバレありで進めていきます。どの作品もそうですが本作はネタバレを知らずに見たほうが面白いのでもし興味がある方はいますぐ見ていただきたい。

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 本作のあらすじをざっくりと説明すると、ある日記憶を失った響裕太(ひびき ゆうた)は同級生の宝多六花(たからだ りっか)の家で目覚めると、頭の中に聞こえる”グリッドマン”と名乗る声などに戸惑いながらも六花と記憶を失う前の友人であった内海将(うつみ しょう)とともに何とか日常生活を送っていくんですが、そんな時に彼らの住む町ツツジ台に突如として怪獣が襲来!怪獣に町が破壊されていく中、中古品販売店を営む六花の家にあった古いパソコン、通称「ジャンク」を通して裕太がグリッドマンと交信し、裕太がグリッドマンとして巨大化し怪獣を倒すのです。
 そんなこんなで次の日を迎えてみれば、先日の怪獣の被害はすべてなかったことになり、町の人々の記憶からも抹消。起きたことを覚えているのはグリッドマンに関わった裕太、六花、内海の三人だけ。ただ一つ変わったのは、怪獣によって命を落とした同級生の存在が最初からなかったことにされていたということだけです。(ここまでが第一話)

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 それから裕太たちは何度も町に襲来する怪獣たちを、アシストウェポンとなる新世紀中学生らと合流しながらも倒してゆき、町の謎に迫っていきます。
 そんなこんなで、実は裕太たちの同級生である新条アカネ(しんじょう あかね)が謎の人物アレクシス・ケリヴの手助けで怪獣を作り町に放っていることが判明。実はツツジ台はアカネが創造した世界であり、すべての住民はアカネが作り出したものだということが明らかになります。それからアカネの作り出した人間態になれる怪獣アンチが人の心を持ちグリッドナイトとしてグリッドマン側についたりと、いままでアカネの思うがままのはずだった世界がどうもアカネにとってうまく回らなくなると、アカネのメンタルが限界を迎え、裕太を物理的にカッターナイフで刺した後に自暴自棄に。その心の乱れをアレクシスに利用されてアレクシスが実体化。実は過去にグリッドマンと因縁のあったことがわかり、目覚めた裕太がグリッドマンとして覚醒し真の姿となったグリッドマンと一騎打ちに。無限の命を持つアレクシスを倒す力ではなく”直す”力を持つフィクサービームでアレクシスを封印すると、壊れた街ごとアカネの心を救い、最後は反省したアカネが六花との対話を通して外の世界に踏み出すことを決意。アカネが消えたことで今まで常に夏だったツツジ台に雪が降って終わってましたよ。

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キービジュアルにも映っている窓の外の怪獣がアカネの世界を一日ごとに修復していたのです。

 全体的に褒めるところだらけなんですが個人的には全体的な日常描写が大好きで、そのリアルさには感動しました。本作は元ネタが特撮ということもありメインとなるテーマは巨大怪獣と巨大ヒーローの戦闘なんですが、そこに至るまでの生活を描くのが非常にうまいのです。そのいい例としてキャラクターの話し方が非常に現実的であることが挙げられます。普通の人間として描かれるキャラクターの会話が非常に現実感のあるもので、演じる声優の方々の力もありよりリアルさが際立ちます。またある場面で人物Aと人物Bの会話がなされているところで、完全に意図的に人物C,Dの話している内容もかすかに聞こえてくる演出がなされています。世界には何人もの人がいてそれぞれの人生を送っており、物語的重要性を持つ会話だけが切り取られることは本来ないと意識させられます。
 本作は単なるアクションアニメにとどまらず日常がじわじわと違和感に包まれてゆく不気味さも備えているので、この日常描写の現実性がよりその不穏さを際立たせる要素にもなっているのです。またあまりにもリアルな描写にこだわっているにもかかわらず、町はアカネの創造物だったというオチもより印象的なものになっていると感じました。

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リアルを追求した日常描写。「こんな髪色の高校生はいない」なんて無粋なことは言わないで

 本作の見どころは魅力的な登場人物にもあります。なんといっても僕が心つかまれたのはメインヒロインの二人、”宝多六花””新条アカネ”。この二人のキャラを生み出したという事実だけでもこのアニメはすさまじい価値があります。
 宝多六花は半ば無理やりグリッドマンたちに巻き込まれた立場でありながらも持ち前の優しさですべての人の命を重んじるスーパーいい子。ぶっきらぼうな態度をとることもありますがその奥にはやさしさの光る絶対に幸せになるべき女性なのです。

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↑本作随一の良心、宝多六花(CV:宮本侑芽)。LINEのアイコンを友達との楽しい思い出の写真にするほどに私生活が充実しているいい子。怪獣によって町が破壊されるのは嫌だけど裕太に戦ってほしいなんていえない、となんとも優しすぎるジレンマを吐露するシーンは感動した

 そしてツツジ台の創造主でありその中ではパーフェクトとうたわれている美少女、新条アカネ。怪獣オタクで気に入らない奴らを夜な夜な作った怪獣でぶっ殺しまくっています。その狂気を演じられる上田麗奈さんの力量がハンパじゃないです。

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↑本作の狂気の部分を一身に背負い暴挙を繰り返す新条アカネ(CV:上田麗奈)。才色兼備な美少女で実は怪獣オタクで自室には何百体とフィギュアを飾っている。特撮ファン界における大盛カツカレーのような存在。

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そんな彼女も家では怪獣を作り気に入らない奴を殺していく日々を送っていたのです。表では完璧美少女ですが実はストローをかじり部屋をゴミであふれさせパソコン画面をはだしで蹴っ飛ばすような女です

 彼女たちは個々で見ても魅力あふれる素晴らしいキャラクターですが本作ではこの二人の絶妙な絡みが見られるのもすごいところ。ふたりの本格的な絡みが見られるのは第四話。暑すぎる日には登校にバスを使うという現実性マシマシのシーンから対峙する二人。バスの中では二人並んでではなく前後に分かれて座るシーンが二人のすれ違いを暗に示しています。

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↑前後に分かれて座る二人。この時点では二人の関係性がよくわからないのです。

 その後、六花もツツジ台の住人としてアカネに作られ、”なにがあってもアカネのことを嫌いにはなれない設定”が付与されていたことが発覚。しかしそんな六花も最後にはアカネの友としてアカネと対立する道を選び、最終回にやっと二人が肩を並べて会話するシーンはまさに感動モノでしたよ。

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↑すべてが終わった後にやっと対等に話す二人。アカネの弱さや卑怯さもすべてを飲み込んだうえでも六花はアカネの友でいることに変わりはなく、それゆえ離れなくてはいけないのです。あとこの場面のアカネは六花から定期入れのプレゼントをもらうのですがそれに対し「どっか行っちゃえってこと?」超絶ネガティブなとらえ方をします。かわいい。それにも不快感など一切見せずに「ずっと一緒ってこと」100点満点の返しをする六花。すべてが完璧すぎる。

 「私の願いがかないませんように」と六花の世界の神であるアカネに伝える厳しくも優しい名シーン。友であるからこそ甘やかすのみならず厳しさも見せる六花の行動はすべてやさしさにつながっているのです。

 この二人にばかり言及してしまいましたがほかのキャラクターも素晴らしいです。記憶はないけど正義感にあふれていて一人だけアカネの思い通りにならなかった裕太や、特撮オタクとして視聴者の声を代弁してくれる内海、最初は敵か味方か⁉みたいな雰囲気を出しておきながら終盤に差し掛かるにつれ店番を務めるくらいにまでなじむ新世紀中学生の面々だったり、アカネに雑に扱われながらも心を手に入れグリッドナイトとなるアンチだったり、何か秘密がありそうな六花ママだったり、全肯定してくれる怪しすぎるアレクシス・ケリヴだったり、全員が最高。

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すべての人がいとおしいのです

 随所にみられる特撮オマージュも見事でした。本作は元ネタが過去の特撮番組『電光超人グリッドマン』というだけあって基本的に世界観だったりアクションが特撮っぽいんですが、その加減がたまらなく好きなんですよね。

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↑着地すると地面からがれきが舞う重量感。敵のデザインも人が中に入っていそう感があって気分はまさにウルトラシリーズ

 世界観も日常がじわじわと崩壊していく様子なども特撮のケレン味にあふれています。例えばウルトラシリーズとかって宇宙人が地球人に紛れて計画を練っていたり、普通の生活のはずなのに何かがおかしいっていう不気味さがあったと思うんですよ。本作でも怪獣の被害を覚えていない住人や侵略者のように見えるアレクシス・ケリヴが普通に中華料理屋で食事していてその違和感に気付けるのも主人公周りの一部の人間だけだったり、”非日常に侵食されていく日常”の描写が本家特撮にも劣らぬ出来なのです。

問川さきる1

↑本作最初の犠牲者とんかわ。教室でボール遊びをしてたという理由だけでアカネの怪獣に殺されます。そして最初からいなかったことになってしまい、その存在を知るのはグリッドマンに関わった人のみ。まさかこの犠牲が全話にわたってキーポイントとなるなんて思いもしませんでした。ちなみに名前は「さきる」らしいです。なにそれ

 ほかにもアシストウェポンによるグリッドマンの強化がフォームチェンジっぽくていい、マジで何も知らない一般人のポジションとしての六花の友達なみこはっすがいい味出してる、ちょくちょく流れる合唱曲「ビリーヴ」が歌詞も相まって六花とアカネの関係性を示唆している、2クールくらいあればもっとキャラの掘り下げが出たと思うからもっと長くしてほしかった、などいろんな感想が思い浮かぶ非常に面白い作品でした。
 突き抜けた展開が持ち味のTriggerスタジオの制作ですが、その中でも日常描写のリアリティにこだわりその中のサスペンス要素や原作に対するリスペクトなど、洗練されたクオリティの高い作品であるのは間違いないです。

 2021年4月に放送される続編『SSSS.DYNAZENON』は『SSSS.GRIDMAN』と同じスタッフが再集結した作品であり、グリッドマンのあの終わり方からどう展開されるのか全く予想がつきませんが面白くなることは間違いないのでみんな見てもらいたいですね。もちろん『SSSS.GRIDMAN』を見ていたほうが100%楽しめますが、『SSSS.DYNAZENON』単体で見てもさほど問題はないと思います。
 『SSSS.GRIDMAN』は現在NETFLIXで配信されているので加入者の方はぜひ一見してもらえればと思います。そして『SSSS.DYNAZENON』を心ゆくまで楽しみましょう。

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