負け犬の挑戦
いやー感動した。感動したね。覆面億万長者。
え、見てない?
見るべきよこれは
このリアリティ番組の主人公、グレン・スターンズは、全米トップのレンドリース会社の創業者で、彼の興した会社、スターンズ・レンディング合同会社は累計15兆円の不動産融資貸付を行う全米トップクラスの金融会社に成長した。
リーマンショック後の2015年にブラックストーン・グループがスターンズ・レンディングの株の過半数を買取り、グレンが経営を退いたのち、2019年にスターンズ・レンディングは破産している。
それでも1000億円以上の資産を持つと推定されるグレンは、癌と戦い、克服し、新たなる挑戦に向かうことにする。
それがアメリカの田舎町で、たった100ドルの元手をもとに、わずか90日で100万ドル以上の価値を生み出すという企画で、ディスカバリーチャンネルが密着取材したのがこの「覆面億万長者」というわけだ。
ヘリコプターが離発着できるような巨大な船を所有し、ヘリコプターから自家用ジェットに乗り換えた億万長者が、雪の降るようなど田舎に放り出され、ボロボロのトラックと100ドル、連絡先の一切入ってないスマートフォンを渡されて、トイレ掃除のアルバイトや炊き出しのボランティアをしながら起業を目指すという落差の第一話に衝撃を受ける。
まさに負け犬。命も削りながら、ボロボロの状態でスタートする。炊き出しのボランティアをしたら、炊き出しがタダで食べられるなんて考えたことなかったけどできそうだ。俺もやりたい。
それから、信じられない方法で地道かつ着実に資金を増やし、アンダードッグな仲間たちを得て、最終的には全米へ展開できるようなビジネスを見つけていく。
日本では今年に入ってからYouTubeでシーズン1が順次公開されていたが、昨日公開されたのが最終回となった。
これは文句なく感動する。
一度でもビジネスを志したことがある人であれば、これで感動しなければ嘘だね。
後で調べると、グレンは番組の収録中にガンを再発したり(そもそもガンになった人が一週間も車の中で寝てるとか自殺行為に思える)、番組の放送中に自分が立ち上げた会社が破産申請したりとわりと散々な目に遭ってるのだが、どんなときも挫けず前を向いて立ち向かうグレンの姿は勇気づけられる。
何より、これほど清々しく見事なリアリティ番組の最終回があっただろうか。
仲間に感謝し、互いに尊敬し、そして未来を託して去っていく。
そして僕が人工知能の研究を続けていて最初に予感を感じて、そして今ではまったく揺るぎない確信に変わっている事柄、すなわち、人工知能以後の人類に求められる本当に価値のある能力は、真心と思いやりなのだということを強く実感させてくれる。
この番組の中で、グレンは常に公正であろうとしていたし、誰かを不当に傷つけようとしたり、蔑んだりすることなく、常に真摯にぶつかっていった。ライバルすらも味方につけるというジャンプ的展開が何度も繰り返され、もはやグレンという男の本当の価値は、持っているお金ではなく、この真心という精神性なのだと思い知らされる。グレン自身も、子供の頃は学習障害で苦しみ、両親はアル中で、決して裕福な暮らしをしているわけではなかった。
そうした暮らしのなかで、決して腐らず前向きにものごとを捉えていたことこそが真の財産であり、だから彼はコネもカネもない世界でも成功を再現できた。これは本当に素晴らしいことだ。
この番組にゆかりのある場所に行くためだけに色々な面倒を飛び越えて久しぶりにアメリカ合衆国に行きたいと思わせてくれる。
ディスカバリーチャンネルでは、8月27日に続編を公開する予定だそうだが、とにかくこれは面白いので見て欲しいし、ブルーレイが出たら買っちゃうだろうな
とにかく全人類にお勧めしたい。
第一話から最終話まで、なんども繰り返し見てしまう。