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弊社くんへ

弊社くんへ。こうやって手紙を書くのは初めてのことですね。

数年前の春、私は弊社くんの元に学生アルバイトとして加わりました。他のアルバイトさんひとりひとりに新人である私のことをきちんと紹介してくれたり、通常業務外のことも「調べながらやっていいよ!」と大きい塊の状態でタスクを任せてくれたりしました。未知のことをググりながら、その大きい塊を自分の力で小さい塊に切り分けていくのが楽しかった。私の得意な分野が自然と回ってくる環境はありがたいことだなぁと思っていました。

私はそのまま入社することになりました。学生から在籍していたため他の人より顔馴染みだったからか、気難しい顧客に「あの人が一番いい」と言ってもらえた時の衝撃は大きかったなぁ。業務内容こそまだまだヒヨッコだけど、この職場環境だと私の性格は活かされるのかもしれないと考えました。

怖いクレームを受けたこともありました。感情的で長ったらしく、相手を屈服させたいだけのクソクレームでした。怖くて給湯室で涙が出ました。そんな私を呼び出して、1対1で励ましてくれましたね。まぁ、その電話自体弊社くんが代わってくれても良かったんですけどね。

そして私は新規部署に異動となりました。よく分かりませんが花束をいくつか頂いたので、きっとめでたいことなんでしょう。私の話を聞いてくれていたアルバイトの皆さんと離れるのは心細かった。でも私は新天地の真新しさに期待をしていました。イチからの環境づくりというのは、どんなクソ制度を作ったって基本的にはプラスに見え、余程のことをしない限りマイナスになんてならないですから。

新天地は、期待通り居心地の良いものでした。業務量が減ったお陰で、話しにくい人間と話さずに済みました。デスクもチェアも新しく、お手洗いも綺麗で、空調の効きも最高でした。今の顧客をどうするか、よりも、まだ見ぬ顧客をどうするかに重点を置く業務は、責任も少ないものでした。企画を出しては「あんまり問合せ来ないですねぇ」、チラシを配っては「あんまり反響無いですねぇ」。弊社くんは「この感じでいいと思いますよ」と言っていましたね。実際、これが良い状態なのか悪い傾向なのか、誰にも分別がついていなかったように思います。

この頃から私はある確信をしていました。私には業務をコンスタントに継続する能力があまり無いということを。私の所謂ビッグファイブという性質のひとつに「知的好奇心」があります。それが最も高い数値だった。私の売り、であり欠点でもあります。

ある分野で突出したい場合には100の深さ、ある分野を業務として成立させる場合には50の深さが必要だとします。私は持ち前の「知的好奇心」で50の深さまで猪突猛進します。得意分野と合致していれば平均よりも高い成長曲線を描ける可能性が高いです。そして、その後の進捗は落ち込みます。

ここで目標や評価があれば深さ50を少しずつ55、60、65…と進めていけるのではないかなと思うのですが、そんな制度はどこにも無かった。私には上司が居るはずなのに、私には多くの裁量が与えられたまま。全体の目標はありません。後は察して確認しながら方向性は自分で決めてねというスタンスを感じていました。既に「知的好奇心」が満たされている私とは相性が悪い環境です。私なりに目標を求め、役割分担や指示系統が分からないと訴えたとき、弊社くんは「ちょっとピンと来ない」と言っていましたね。

今まで気づけなかったけど、弊社くんはティール組織とかいうフラットな会社をやりたかったのかな。私ばかりモヤモヤするのも許せないけど、今や、それを弊社くん本人に確認するのは面倒に感じてしまっています。

私は、弊社くんとの別離を考えています。
現時点では、ここまで。進捗があればまた手紙を書きますね。


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