EAT ME 【第1話】


あらすじ
この世界では、獣の血が混ざっている人間「混血民」が存在している。そして弱肉強食のヒエラルキー通り、弱い者が強い者に噛まれると武器化する。主人公、蛇琵京子(じゃびきょうこ)とその相棒、蛙亭葉(あていよう)。この2人は、混血民達にまつわる事件捜査の為に作られた組織「喰猟管理局(くりょうかんりきょく)」に所属している。そんな2人の元にとある捜査が来る。「村の鏡が盗まれた。」疑われているのは、2人の同級生であった。普通の人間「純血民」から見下される中、彼女達は事件を解決出来るのだろうか。そして、裏で暗躍する雑食派閥「オールド・クロウ」とは?

【プロローグ】

とある研究所。爆発音。白髪の子供。何故か光っている。

女 もう、やめて……あの子が壊れてしまう……!
子供 ……
女 私のことならもういいから……お願いだから、もう……

子供の黒く渦巻いた目が見える。

10年後

夜の路地裏。

ラジオ さて、最後のニュースです。また''食べ合わせ"事件が起こりました。犯人は、不明。現在、喰猟管理局(くりょうかんりきょく)が行方を……
京子 あーあ。止めちゃった。聞いてたのにぃ。

蛇琵京子(じゃびきょうこ)真夜中なのにサングラスをかけ、気だるげな声。

葉 こんなの聞いたって意味無いでしょ。周りからは聞こえなければいいカモフラージュなんですから。

蛙亭葉(あていよう)姫カットに長い髪。そして赤い口紅をしている。

京子 ほんと、そういうとこだよ?もっと気楽に行こうぜぇ。
葉 あなたは、気楽すぎるんです!もっと危機感を持って……
京子 はいはい。捜査すりゃいいんでしょ、捜査すりゃあ。

彼女達の目の前には、臓器を抉り出された死体達。

京子 うげっ!やばいなこれ……
葉 グロテスク。
京子 最近やけに多くない?この事件。
葉 ほら、捜査しましょ。
京子 ロボットかよ。それしか言わないね、よーちゃん。
葉 よーちゃんって言わないで。さっさと調べてくださいよ。
京子 へいへーい。

死体の一部が動き出す。

葉 はっ!京子!
京子 だからぁ、分かってるって……

京子の蹴りが入る。すると、どんどん死体達が起き上がってくる。

葉 なんですか、これ……。
京子 さぁ?でも元は純血に違いない。あたしの鼻がそう言ってる。
葉 だったら何故、生き返って……
京子 こりゃ混ぜられちゃったな、獣の血を。
葉 そんな、人間でマウス実験みたいな……
京子 まあ、やりかねないよ。あいつらなら。

壁に赤い液体で、烏の絵が描かれている。そして、ウィスキーのオールド・クロウのボトルが置いてある。

葉 雑食派閥、通称「オールド・クロウ」。
京子 お酒は好きなんだけどねぇ。
葉 本当に、嫌な奴ら……。
京子 さてと、こいつらをどうにかしなきゃだねぇ。
葉 そうですね。でも元は純血民ですよ?私達が手を出したら……
京子 別にいいでしょ?混ざりもんだし。
葉 後で怒られても知りませんからね?
京子 分かってるってぇ!さぁてと……

そう言って、葉を引き寄せる京子。

京子 「いただきます」

葉の首筋を噛む京子。すると葉の姿が鉄パイプとなる。

京子 なぁに?まだ、鉄パイプ止まり?
葉 天才なあなたと違って、私はまだこれが精一杯なんですよ!
京子 ヤンキーじゃあるまいし……
葉 ヤンキーとどっこいどっこいじゃないですか。
京子 どこが?
葉 中身。
京子 ムカつく。
葉 あっ、前!
京子 今、大事な話、してんのよっ!
葉 くそっ!
京子 チッ、かすった。
葉 うぉぉぉ!

鉄パイプが少し伸びる。

京子 あら、蛙の舌技?エッチねぇ。
葉 言い方!ほら、また来ます!
京子 分かってる……って!

打撃音。鳥がいっせいに飛び立つ。
keepoutのテープが貼られている。路地裏の事件現場。

モノローグ
紀元前、人は生きるために狩りをする。食べ物のため、そして繁栄のために。毎日、戦いの日々であった。ある日、1人の人間が傷を負ったライオンに噛まれてしまった。死んだかと思われた人間であったが、気を失っていたようだった。その日を境に、その人間に奇妙な事が起き始める。狩りをしていた時の事だった。目の前に通ったのは、鹿。目視した瞬間、その人間は鹿に噛み付いていた。すると、その鹿は光をまとい獲物をしとめられる矛となったのである。そう、その人間は自分の噛まれた部分にライオンの傷口から流れた血が入り込み混ざりあってしまった。以来、人口の約2割の人間達は生き延びる為に様々な動物の血液を取り込み、「武器化」する人間へと変化していった。動物の弱肉強食のヒエラルキーはそのままに、強者が弱者を噛むことによって、弱者は強者のための矛となり盾となる。

【みにくいアヒルの子】

京子と葉は車に乗っている。運転しているのは葉である。

京子 ねぇー。
葉 なんでしょう?
京子 パインアメゲームしない?
葉 でた、よくわかんないゲーム。
京子 いいじゃん。口の中にパインアメが入ってるか否か。それだけだよ?
葉 こっち運転中だから。そっち見れないから。
京子 勘でいいんだよ、勘で。……はい、じゃあどっちでしょうか?
葉 ……パインアメ食べてる。
京子 嘘!なんでわかったの!?
葉 いや、わかるわ。袋がガサゴソ言ってたじゃん。
京子 ちぇっ。
葉 ほら、もう少しで着きますから。
京子 分かったぁ。少し寝るね。
葉 なんで今寝るんだよ!もう、人の話聞いてくださいよ、本当に。
京子 あ、そういえば!
葉 寝ないのかよ。
京子 こないだの事件、あれさ「雑食」だよね?
葉 そうですね。最近、あいつらの活動が頻繁に起こってます。
京子 そっちの捜査駆り出されると思ったのにぃ……
葉 それはあなたが暴走したせいでしょ!?
京子 そんなことしたっけ?
葉 覚えてないんですか!3日前のことですよ!

回想・遡ること3日前

都内某所・喰猟管理局(くりょうかんりきょく)

猪俣 また、やってくれたな、蛇琵。

喰猟管理局長官、猪俣昌幸。

京子 なんのことでしょう?
猪俣 しらばっくれるな!お前が捜査した事件でお前が事件を起こしてどうする!?
京子 だって、向こうが喧嘩売ってきたんですもん。買わなきゃダメでしょ?
猪俣 そのせいで、上から苦情が来てるんだ!

喰猟管理局(くりょうかんりきょく)
暴走する獣との混血の人間達を取り締まるべく存在するこの機関は、純血民の警察と同等の権限があるが、あくまで混血民が関わる時のみ。いついかなる時でも、決して純血民には手を出してはいけない。

猪俣 蛙亭!お前もだ!一緒にいながらなんで止めない!
葉 すみません。あっちの刑事が突っかかってきたもので。
猪俣 お前も喧嘩買ってたのかよ!大体お前の家系は、温厚な家系なはずだろ!?
葉 この職についてなければそうだったと思いますよ。
京子 珍しいよねぇ、蛙亭家は代々、研究員の家系なのに。
葉 まあ、色々あるんですよ、家にも。
猪俣 とにかく、混血民として恥じない行動をだな……

電話がなる。

猪俣 こちら猪俣。……分かった。今すぐ向かわせる。
京子 事件ですか!
猪俣 あぁ。
京子 何事件ですか?「食べ合わせ」ですか!
猪俣 いや、違う。
京子 なぁんだ。じゃあ、パス〜。
猪俣 パスなんて言える立場か。
京子 ちぇっ
猪俣 この事件、解決したら、こないだお前らが起こした問題は、目を瞑ってやろう。
京子 まじか!行ってきまぁす!

京子、行ってしまう。

猪俣 おい、人の話は最後まで聞かんか!
葉 すみません。それでは、私も。
猪俣 蛙亭。
葉 はい?
猪俣 お前、本当に大丈夫なのか?
葉 ……身体のことでしたら、問題なく。
猪俣 そうか。なら、いいんだが……。
葉 それでは。

長官室から出ていく葉。

車に乗っている京子と葉

京子 あの時、どこに行けばいいのかわからなくて迷ったなぁ。
葉 人の話は最後まで聞けって言われてるでしょ!
京子 へいへーい。
葉 まあ、私たちが駆り出されるってことは、混血が関わってるってことですよね。
京子 ……さぁてと、寝るか。
葉 なんでだよ!

現場到着

場所は山奥の村。

葉 ほら、着きましたよ。
京子 もっと寝たかったのに。
葉 眠れる時間ありましたよね?5時間も車走らせてたんだから。
京子 まあまあ、細かいことは気にしなぁい。
葉 ったく、少しは気にしてくださいよ。
京子 お、山だ!やっほー!
葉 コラっ!現実逃避しない!!

山奥の村
映画の撮影中

京子 こんちわ〜。喰猟管理局のもんでぇす。
横島 やっと来た!待ってましたよ。
葉 すみません、渋滞してたもので……
松村 ちっ。さすがは喰猟管理局の方々。社長出勤ですか?
葉 刑事さんもいらっしゃるんですか?
横島 一応……
松村 被害者は純血民だからな。
安藤 先輩、まだ混血民が犯人って決まったわけじゃ……
松村 あのな、2種族の人間が関わってる時は、大体混血の奴が犯人なんだよ。覚えておけ、新人。
安藤 いや、それは……
京子 でたよ、でたでた。
松村 あぁ?
京子 そうやって差別するんですよ、純血民は。
松村 なんだ、てめぇ!
京子 怖っ!こわぁい!
松村 はぁ?
京子 だってぇ、「罪があるように見せるお前が悪い」って言ってるってことですよね?うわぁ、セクハラって言われても同じこと言ってそう。やだぁ。
松村 なんだと!
葉 京子さん、やめてください。
松村 そうだそうだ!
葉 こんな人と話してても何の生産性もないでしょ?
松村 てめぇ!
安藤 先輩!
横島 あの……
松村・京子 あぁ?
横島 ひぇ!
安藤 すみませんすみません。事件の内容についてですよね!僕達は聞いたので、この方々に説明してさしあげてください。
松村 おい、お前な……
安藤 ほら、行きますよ!

松村、安藤に連れていかれる。

京子 あの子……良いねぇ。
葉 それで、えーっと……
横島 この現場でADをしています。横島真希と言います。
葉 横島さん。喰猟管理局の蛙亭と申します。こっちは蛇琵です。宜しくお願い致します。
京子 かたいな〜。よろしくぅ!
横島 は、はぁ。
葉 まったく……。それで横島さん、事件の概要をお願い出来ますか?
横島 はい。実は、この村で撮影中、村の宝が盗まれてしまったという事態でして。何でも、災いから村を守るための鏡らしいんですが……
葉 鏡ですか?
横島 はい。何でもその鏡が見つからないと撮影は許可出来ないと言われてしまって。
京子 それで、私たちが呼ばれたのはなんで?
横島 それが今回この撮影に混血民の方がいらっしゃいまして……
京子 へぇ、普通こっち側は一般の職業すら難しのに。
横島 それが……

1人の女性、大口歯洲望(オオクチバスノゾミ)が走ってくる。

望 京子ー!葉ー!
葉 げっ!
望 げっとはなによ。げっとは。
京子 久しぶりじゃん、のぞみん!
望 ほんとに!久しぶりすぎて、興奮しちゃう!
葉 うわぁ。さぶいぼが……
望 葉ったら、またそんな反応しちゃって!本当は嬉しいんでしょ!
葉 どっからどう見ても違うでしょ!
望 もう、葉の照れ屋さん!
葉 マジで眼科、行った方がいいと思います。
京子 それで、なんでのぞみんいるの?
望 いや、実はさ、あたいこの映画で主演やることになったんだよね〜!
京子 え!凄いじゃん!めでてぇじゃん!
望 でしょ!そしたら、その矢先にこれよ。マジで先行き不安っていうかさ?
京子 そっかぁ。大変だあねぇ。
望 ほんと、それなぁ。
横島 あの……
葉 すみません。この2人には構わず、お話を。
横島 はぁ……実は、その盗まれた鏡なんですが、なんでも、混血の方が鏡を覗き込むと、動物の血液が抜けるらしいんです。
京子 それって……
葉 混血が純血になれるってことですね。
望 だから、あたしが疑われてんのよ。わざわざ擬態申請書までだして女優になっちゃったもんだからさ!
京子 あれも取るの大変だからねぇ。
横島 あの、擬態申請書っていうのは?
葉 我々のような混血民は、血気盛んな血族程、一般の仕事が難しく、噛み付き衝動に耐えられる訓練が必要なんです。
横島 そうなんですね!
望 私も女優になりたいから、頑張って訓練を受けて擬態申請書が受理されたって訳!
横島 すごい!勉強になります!
京子 どうしてそんなことを?
横島 私、映画監督になりたくて、色んな事が勉強なんで!
望 ……そっか。楽しみにしてるよ!いつか使ってね!
葉 その前にやってないことを証明しなきゃですね。
望 そうだった……

遠くから他のスタッフが呼ぶ。

横島 あ、今行きます!……という訳でして、こちらもなるべく早く撮影を再開したいので、よろしくお願いします。

横島、去っていく。

京子 なんだか、匂うね。この事件。
葉 蛇の感ってやつですか?
望 さすが、蛇琵京子!我らの首席!
京子 まぁねん!
葉 出た、このノリ。
望 よーちゃんだって、頭良かったじゃんか!
葉 頭は、良かったんです。実技がダメだったのはあなたも知ってるでしょ?
京子 よーちゃん、未だに鉄パイプしかなれないしね。
望 あらまぁ……。
葉 余計なこと言わんでいい!
京子 さて、まずはどこから調査すべきかなぁ。
葉 まずは、村の方々にお話を聞きに行きましょう。
京子 そうだねぇ。
望 あたし、ロケバスにいるわ。邪魔してもしょうがないし。
京子 そう?りょうかーい。

望、戻っていく。

京子 ……んで、なんであんたは怖がってんのよ。
葉 学校での実技訓練の時に噛み付き方が異常で……
京子 そういえば、そうだったような?
葉 私、蛙の家系じゃないですか?望さんは大口歯洲家、別名ブラックバスの家系……つまり私が捕食対象。あぁ、思い出すだけで、ゾッとする!
京子 そんなに?
葉 そうですよ!あなたはいいですけどね!基本、噛み付く側ですから!でもね、噛み付かれる側にだって要望はあるんですよ!
京子 しょうがないよ、血だけは変わらんからさぁ。
葉 先生も先生です。あの時の実技訓練、私は未だに根に持ってます。
京子 未だに武器化だけはダメダメだしねぇ。
葉 家系能力的に難しいんですよ。
京子 そういえば、なんで喰猟管理局を志望したのよ。
葉 ……敷かれたレールから外れたかったから、ですかね。
京子 そっか。
葉 というか、あなたがあの時訓練を休まなければ、望さんに……
京子 はいはい。愚痴なら後でお茶飲みながらでも聞くからさぁ。
葉 どうせ、缶コーヒーでしょうに。
京子 缶コーヒーだって、立派なお茶飲みに入るでしょうよ。
葉 もう、いいです。埒が明かない。
京子 いやいやいや、この話始めたのよーちゃんだよね?
葉 では行きましょ。
京子 切り替え早!しかも、さらっと流したし。
葉 仕事は仕事ですから。
京子 硬いなぁ。もっとラフに行こうぜ。
葉 あなたがラフすぎるんです!

そこへ、安藤が近づいてくる。

安藤 あの……
京子 はっ!さっきの良い子だぁ!
安藤 良い子?
葉 気にしないでください。
安藤 はぁ……。
葉 それで、刑事さんがどうしたんですか?
安藤 いえ、先程は先輩が皆様に失礼な態度を……
葉 いえいえ、こちらこそうちのバカが失礼を……
京子 バカとはなんだ、カバとは!
葉 いや、言ってねぇよ。
安藤 僕、安藤と申します。警視庁捜査一課に所属しております。
京子 へーエリートだ。
安藤 実は配属されたばかりでして……右も左もわからないままこの事件への捜査に出向くよう言われまして……
京子 じゃあ、お姉さんが右も左も前も後ろも教えてあげよう!
葉 ややこしいです。
安藤 あの、本当におふたりは……
京子 混血民ってことかって?
安藤 ええ。
京子 まあ、分かりづらいよねん。
葉 見かけは普通の人間と一緒ですからね。
京子 しっぽがあるとか、特徴があればいいんだけど。
葉 あら、あるじゃないですか。
京子 え、どこが。
葉 目つきの悪さ。
京子 ……。
安藤 それで、おふたりのお名前をお伺いしても?
京子 私は蛇琵京子(じゃびきょうこ)。こっちは、蛙亭葉(あていよう)。
安藤 蛇琵って、あの蛇一族の!?
京子 そ。シャーの一族。
葉 ポーみたいに言わないで。
京子 まぁ、あんまり蛇琵家でも下の方だけど……それより、あの先輩刑事は?どうしたの?
安藤 それが、こんなの俺がやるような仕事じゃねぇって、車で寝てます……
葉 最低。
京子 いいなぁ、私も寝てこようかなぁ。
葉 はい?
京子 ……すみません。嘘です。
安藤 それで、もしよろしければ一緒に捜査させて頂けないかと……
葉 そうですね……
京子 いいんでない?
安藤 本当ですか?
京子 村の人だって、我々みたいなのがいたら警戒されそうだし。
葉 確かに。我々はいま疑われる側にいますからね。安藤刑事がいてくだされば、安心です。
安藤 ありがとうございます!
京子 それじゃ早速、行きますか!

山奥の村

村長 立ち去れぇぇ!
京子 うわぁ、化け物ぉ!
葉 失礼でしょ!
京子 いてっ!
恵 ちょっと、おじいちゃん!すみませんすみません!
村長 離せ恵!混血をこの村に入れてはいかんのだ!
恵 そんなの関係ないでしょ!
村長 代々伝わる話によると、混血が来たりてこの村に災いをもたらす。ならばこの鏡用いて混血を退治せよと!さすれば、鏡が力を奪い取り、混血では無くなる。
葉 鏡って……
京子 混血を退治する為に鏡を見せて、力を取るって事は……
葉 力をなくした所をボコボコにするっていう、いわゆるリンチ。
京子 うわぉ、集団暴力だ。サイテー。
村長 なんじゃとぉ!?
恵 だから、やめてって言ってるでしょ!血圧上がっちゃうわよ!
村長 はい……
京子 (素直だ。)
葉 あの、あなたは?
恵 私は山村恵です。この人の……孫になります。
安藤 お孫さんなんですね!それで、他のご家族の方は?
恵 それが……

たくさんの子供達が出てくる。

子供達 おじいちゃん!
安藤 ええええ!
村長 お前ら家にいろと言ったじゃないか!
子供1 だって、家にいても暇なんだもん!
子供2 つまんない!
村長 ダメだ!家にいろ!じいちゃんがこいつらを退治してやるから!
子供3 この人達、悪い人達なの?
恵 違うのよ!この人達は、鏡の事でお話を聞きに来たのよ。
子供4 そうなんだぁ。
恵 そうだ!みんな、おじいちゃんを家に連れてってくれる?
子供達 はぁーい!
村長 何を言ってるんじゃ恵!まだこいつらと決着が……
恵 勝負すらしてないでしょ!ほら、早く家に戻る!
子供5 ほら、おじいちゃん行くよ!

村長、子供達に連れていかれる。

恵 すみません、お騒がせしてしまって。
安藤 いえいえ、随分ご兄妹が多いようで。
恵 まあ……
京子 本当の兄妹じゃないでしょ?
安藤 え。
京子 明らかにみんな顔とか違ってたし。目の色とか違う子もいたしね。
葉 ここはどういう村なんですか?
恵 ここは……捨て子が集まる村。通称「捨て子村」です。
安藤 「捨て子村」……
京子 いやな、ネーミング。
葉 捨て子が集まるとは?
恵 その昔、この村は生け贄を捧げる場所だったそうです。毎年生け贄として若い娘達が捧げられていたそうで、その中で1人の女性だけが唯一生き延びていたらしいのです。ある日、山奥で小さな赤子が捨てられていました。山の麓にある村では、当時貧困が問題となっており、野菜も米も採れず、生きていくので精一杯だったのでしょう。その女性も1人でいる寂しさを紛らわせるだけだったかもしれませんが、その赤子を育てることにしました。赤子はすくすくと成長したと思ったら、また山の麓で赤子が捨てられていたそうです。そんなことの繰り返しばかりで、いつの間にか10人を超える子供達を引き取っていたようなのです。
葉 それで「捨て子村」
安藤 あの、盗まれた鏡というのは?
恵 引き取られた女の子が山奥で貰ったという話らしいのです。最初は、ただの鏡として使っていたのですが、ある日村に武器を持った人間達が襲ってきたそうで、その瞬間鏡が光りたちまち武器は人間へと変化したそうです。
葉 それでお守り代わりに……
安藤 混血民の方は、暴走することってあるんですか?
京子 まあ、基本的に訓練が必要だけどある程度は抑えられるよ。あとは純血の人には手を出せない。……一部以外はね。
安藤 一部というのは?
葉 いま、噂になってる「食べ合わせ」事件ですね。混血だろうが純血だろうが関係なく噛み尽くす。
京子 雑食がいるんだよ。めんどくさい事にさ。
安藤 そうなんですね。
京子 それはともかくとしてだ。今は子供が捨てられるなんてことは無いんだろ?なのにこんなにたくさんいるんだねぇ。
恵 今は養護施設として、運営をしているんです。行くあてのない子供達を村長が自ら引き取って育てているんです。自分も親に捨てられたからだと思うんですけど。
葉 そんな過去が……

安藤の携帯がなる。

安藤 はい、安藤です。……ええ!すみませんすみません!はい、すぐ戻ります!
葉 どうしました?
安藤 実は、先輩が起きてしまって……
京子 あらら〜お目覚めですか。
安藤 本当はご一緒したいのですが、すぐ戻らなければならないので、僕はここで。お役に立てずすみません。
葉 いえいえ。お気になさらず。
安藤 それでは。

安藤、走っていく。

京子 そういえば、さっきの鏡なんだけどさ、あれって子供達を守る鏡じゃない?
恵 その混血の方々からですか?
京子 方々って言うより、方?
恵 はい?
京子 その女性ってもしかして混血だったんじゃない?いつ暴走するかわからないから渡したみたいな?
恵 それは、どういう……

子供2が来る。

子供2 恵姉ちゃん、遊んでー!
恵 おじいちゃんは?家に連れていったの?
子供2 じいちゃん、寝ちゃった。
恵 ええ、さっきまであんなに暴れてたのに……
子供2 ねえねえ、お姉ちゃん達は?だぁれ?
京子 お姉ちゃん達はね、悪者退治に来たんだよぉ。
子供2 悪者退治?
京子 そう、悪さするやつをやっつけにきたんだよ!
子供2 ……
京子 なんだよぉ、そんなにじっと見つめてぇ
子供2 お姉ちゃん達の方が悪者みたい。
京子 え。
恵 こら!
子供2 だって黒い服着てるから。
京子 わぁ、単純。
恵 すみませんすみません。
葉 いえいえ。元々この人、人相悪いので。
京子 フォローしてよ。
葉 ごめんね。黒い服は、決まりだからさ。それにこの服は、私たちにとっては正義の証なんだ。
子供2 正義の証?
葉 そう、何にも染まらない、揺るぎない正義って意味でね?
子供2 そうなんだぁ。なんか、かっこいい!!
葉 でしょ?
京子 その優しさ、あたしにも分けてくんないかな?
葉 嫌です。
京子 冷たっ!
葉 さ、他の方々にも聞きに行きますよ。お話、ありがとうございました。
恵 いえ。それでは。
子供2 お姉ちゃん、またね!
葉 またね。

恵と子供が帰っていく。

京子 ねぇ。
葉 なんでしょう?
京子 あの恵ちゃんって子、やけに落ち着きがあったよね?大人の落ち着き方とか?子供らしくないなぁ。
葉 ……見習った方がいいのでは?
京子 でた、冷たい発言。
葉 めんどくさ。
京子 聞こえてるから。
葉 あらやだ、そんなつもりは。
京子 あったでしょ、そんなつもり。
葉 ……
京子 おいおい。

横島が走ってくる。

横島 た、大変です!
葉 どうしたんですか?
横島 の、望さんが、望さんが!
京子・葉 !?

ロケバス
息苦しそうな望

坂木 望!望!しっかりして!

京子と葉が来る。

監督 ……
京子 吸われちゃったね。
坂木 え?
京子 吸われちゃったの、鏡に血液を。
横島 なんで、吸われるとこんな……
葉 私達、混血民は初期の頃に比べて、武器化することが多くなり、獣の血と人間の血は支え合うように混ざりあっています。
京子 つまり、ハーフアンドハーフってことねん。
葉 しかし、その2つの血液の片方が急激に無くなると……
横島 今まで保っていたものが無くなり、体が動かなくなる。

望、気だるそうに目を覚ます。

望 あ、あれ?
京子 のぞみん、大丈夫?
望 う、うん。なんか体に力が入らない……
京子 多分ね、吸われちゃったんだよ、鏡に。
望 鏡って……盗まれた、やつ?
京子 そう。いつ見たかわかる?
望 どうだったかな?ロケバスで台本確認してたら、いつの間にか……
坂木 望!大丈夫!?今救急車来るから!
望 坂木さん……
葉 きっと救急車は応対してくれませんよ。
坂木 なんで!
京子 我々は、混血なんでねぇ。ちょいと特殊なんですよぉ。
葉 大口歯洲家の長老を呼びますか。
望 待って、やめて!
葉 いいんですか?死にますよ?
坂木 死ぬのはダメ!彼女はいまやっと売れてきたとこなの、こんなところで死なせる訳にはいかない!
望 真陽……
京子 あなたは?
坂木 坂木真陽です。望のマネージャーになります。
京子 そうなんですね。まあ、事情は後ほど聞くとして……よーちゃん、電話。
葉 了解!
望 だ、から……
坂木 喋っちゃダメよ!なんでそんなに嫌がるの!
京子 絶縁してきたからねぇ。
望 どう、にか……専門の医療機関があったじゃない。
京子 今違う事件で手一杯。
望 じゃあ、このまま……
葉 我儘言わない!
望 ようちゃん……
葉 もう電話しますから!
望 ……

望、意識が遠のいていく。

葉 ちょっと望さん!望さん!
京子 大丈夫。いま体内で血液をどうにか生成してるところだよ。でも、さすがに自分では全てを賄えない。
葉 ……わかりました。私、電話してきます!

葉、電話をするためにロケバスから降りる。

京子 さて、のぞみんの容態については、よーちゃんに任せるとして……のぞみんに鏡を見せたヤツがいるってことだ。

監督・横島・坂木・恵・村長の顔が映し出される。

京子 誰が犯人なのか、炙りださなきゃねん。

1話 ~完~

第2話
https://note.com/sherry452/n/n989a7ba6bafc?sub_rt=share_pb

第3話
https://note.com/sherry452/n/n034b1f551e4a?sub_rt=share_pb

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