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生き残るための基本/『シャドウラン 5th Edition』コラム03

01 前口上

 

 この記事は新紀元社から発売されている『シャドウラン 5th Edition』日本語版(以下SR5J)ユーザーに向けた雑文です。 
 記事の閲覧・利用に関する前置きは下の記事を参照してください。



02 生き残るための基本


 前回のコラムで、SR5Jでは、キャラクターは簡単には死ななくなった、と書きました。しかし、まったく何の準備もしていなければ簡単に死にます。それは、例えばそこらへんのカラー・ギャングをアサルトライフルで撃ってみれば簡単に証明できることです。
 あなたのキャラクターがどんなビルドであれ、今すぐにでもできる努力があります。よりよい防具にお金を出すのです(何ごとにも代価は要ります)。
 以前の版と違って、防具を着るために必要な能力値は【強靱力】ではなく【筋力】になりました。【筋力】1のキャラクターでも、フルボディ・アーマーをペナルティなく着ることができます。しかし、防具に何かアクセサリーをつけようとすると、それは【筋力】を超える2ごとにペナルティを発生させます。


 基本的な考え方は、装甲値12の防具に、【筋力】+1までの防具アクセサリーを組み合わせます。多少リッチに新円を使えるなら、装甲値13のスリーピング・タイガー、14のビッグゲーム・ハンターなどが考慮になります(そこら辺は好みに合わせて考えてください)。入手値12以下の縛りがないなら、フルボディ・アーマーを一着用意しましょう。好むと好まざるとに関わらず、化学遮断(あるいは放射能防護や内蔵エアタンク)の必要なミッションがいずれ訪れます。
 基本ルールにはヘルメットと盾しか防具アクセサリーの選択肢がありませんが、『ラン&ガン』にはセキュアテック PPP、フォアアーム・ガード、防弾マスク、ゲルパックといった選択肢があります。もちろん、スリーピング・タイガーとシナジスト・ビジネス・ロングコートを合わせたり、エグゼクティブ・スイートにセカンドスキンを組み合わせる手もあります。いずれにせよ、あなたの【筋力】を遊ばせておく手はありません。生き延びるために、1点でも多く装甲値を上げるべきです。


03 さらにその先


 身体強化に抵抗がないなら、骨格補綴はコスト・パフォーマンスに優れたダメージ抵抗を強化する手段です。四肢をサイバーリムに換装しているなら、リムの装甲値強化も忘れてはなりません(それと、身体コンディション・モニターが増えることも)。呪文使いなら《鎧》の呪文や錬金術調整物、アデプトなら《魔力装甲》を活用しましょう。

 装甲値が17~18以上になると、アサルトライフルのフルオート射撃を受けてもなかなか貫通しないように(身体ダメージでなく精神ダメージを受けるように)なります。このため、いくら【強靱力】が高くても、血小板工場があっても、先に精神コンディション・モニターが埋まって気絶してしまいます。しかしアドレナリン・ポンプや痛覚遮断のバイオウェアがあれば、精神ダメージでは気絶しなくなります。そこまでしなくても、いざという時のために覚醒パッチを用意しておきましょう。
『Chrome Flesh』を採用しているなら、Double Elastinの遺伝子導入で精神ダメージを減らすことができます(ドレインやフェイディングのダメージは減らせません。念のため)。

 ある程度以上ダメージに耐えられるようになると、今度は負傷修正が無視できなくなってきます。ダメージ補正器、外傷ダンパー、痛覚遮断といったバイオウェアに、「苦痛に強い」の資質、《鎮痛》の呪文、それからChanneringのメタマジック(Street Grimoire)が有効です。
 資金に余裕があるなら、特殊なダメージに対する抵抗力を上げておきましょう。絶縁、耐火、化学防護の防具改造はつけておいて損はありません。


04 当たらなければどうということはない


 残念ながら、装甲値やダメージ抵抗のダイスを増やす手段は早晩頭打ちになります。あまり【筋力】に投資しないキャラクターでは、アサルトライフルまでは耐えられても、APDS弾を詰めたスナイパーライフルには耐えられないでしょう。次に手をつけるのは、防御テストのダイスを増やすことです。
 防御テストは【反応力】+【直観力】が基本です。しかし、複雑動作フルオートの射撃を受けると-9のペナルティを受けます。遮蔽や全力防御の修正を足して防御テストのDPが15以上になるように、能力値を伸ばしたり、全力防御に関係する資質(『ラン&ガン』p.127)を取得したり、防御テストに影響する遺伝子導入(ReaKt)、《戦闘感覚》、《Deflection》などの呪文、調整物、アデプトパワーを活用します。防御テストを上げる戦闘機動を使用してもよいのですが、おそらく攻撃テストを増やしたい指揮官の方が多いでしょう。
 防御テストが30DP近くになってくると、【精度】の関係でたいていの射撃や近接武器攻撃を避けられるようになります。

 しかし残念ながら、防御テストを増やす手段はおおむね高コストであり、一度のミッションで得られるカルマや報酬では追いつかないことが多いでしょう。すぐにできる「当たらないための努力」としては、煙幕手榴弾や《影》の呪文などによって相手の視界を妨害することが挙げられます。

 仮に、敵味方に同じだけのペナルティを与える行動であっても、敵の方が多ければ「ダイスプールの収支はプラス」になります。もちろん、敵の行動にペナルティのある幻影呪文、操作呪文、精霊のパワーなどを活用しても構いません。


05 最後から2番目の手段


 敵の攻撃を避けることも、耐えることも難しいなら、手番を使って敵の攻撃手段を攻撃するという手もあります。
 具体的には、「叩き落とし」の部位狙いで武器を落とさせたり、「データ・スパイクを送り込む」のマトリックス動作で武器や光学機器をブリックしたり、「牽制」の部位狙いや電撃ダメージ、《Frigid》や《虫の群れ》などの呪文で相手のイニシアティブを下げさせて行動機会そのものを奪います。あえて手榴弾を遅延信管や無線リンクで投げて、敵に移動を強制することで間接的に攻撃機会を奪う手もありますが、そうそう上手くは行かないことでしょう。
 これらの行動は本来「自分の手番と相手の行動機会を交換してアドバンテージを稼ぐ」ためのものであることに注意してください。たいていの場合、相手の武器を失わせても別の武器を準備して攻撃してくるだけだったりするので、普通に攻撃した方が有効な場合も多いのです。


06 とっておきのやつ


 敵に対して有効な手段がなにもないなら、最善手は「逃げる」ことになります。これは、文字通り全力でその場を離れることだけでなく、攻撃を手控えて遮蔽を取ったり、ドアを閉めたり一旦退いたりして敵の選択肢を狭めることも含みます。そうした消極策の効果は低いものの、コストや先行投資が要らないという利点があります。
 ただし、多くの場合、シャドウランナーにとって消極策はあまりよい結果に結びつきません。本来これは、高度脅威対応チームが到着するまでの時間稼ぎをする警備員たちのための戦術なのです。

 もちろん、全力で逃げるべき瞬間はあります。手持ちの武器が通用しない敵が出てきた時、明らかに対処しきれない数の敵に囲まれつつある時、そして「チームに行動不能者が出た時」です。
 行動不能者を抱えて撤退する決断が可能なのは、多くの場合、それがひとりの時だけです。複数の行動不能者を同時に抱えて撤退するのはほぼ不可能で、全滅覚悟で徹底抗戦するか見捨てていくかのどちらかになります。
 少なくとも、最初の行動不能者が出た時点で、撤退するかどうかを(PCの動作を使ってまで相談するかはともかく)検討すべきです。


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