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清の時代にタイムスリップ。『宮廷の諍い女』を観て。

中国語の先生に勧められて見たこちらのドラマ、『宮廷の諍いいさかい』(2012年)。【中国語名:甄嬛传zhēn huán chuán

中国本土だけでなく、台湾や香港でも社会現象となった話題作のようだが、最近になってまた、2000年代生まれ以降の中国の若者間で人気を博しているらしい。

中国の時代劇ものはこれまで観たことが無く、何より76話まであるので長すぎて絶望的になったが、先生がこの物語のフィギュアを買うほどの大ファンだったので何とか一念発起(笑)

膨大な時間を費やしてしまったので、相変わらず自己満にはなるが、感想を書き留めておこうと思う。

(写真はチャンネル銀河より)


物語の背景

1722年、9人の皇子たちによる皇位を巡る争い“九王奪嫡”の末、愛新覚羅・胤禛(あいしんかくら・いんしん)が康熙帝の後を継いだ。それは清の第5代皇帝・雍正帝時代の幕開けであり、皇帝の寵愛を巡る側室たちの激しく哀しい諍いの始まりでもあった…。
皇后と側室の華妃が勢力を二分する後宮に、側室として宮廷入りした甄嬛(しんけい)は、華妃と手下の側室が仕掛けてくる冷酷な罠を智慧で乗り越えて華妃を打ち倒す。諍いで心も疲れ切った甄嬛は宮廷を後にし、外の世界で皇帝の弟・果郡王と安らぎの時を得るが、幸せな時間の裏では、甄嬛を不幸に陥れる真の敵の影が忍び寄っていた。甄嬛の辛く哀しい人生の扉が、今、開かれる―。

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日本でいう、大奥の世界。
と言っても、もっと残酷かもしれない?中国の後宮。
そこは、皇帝からの寵愛で女の位が決まる世界
寵愛の為ならば他人を陥れることも躊躇わない側室たちは、流産、毒殺、拷問、様々な手口を使って保身に走る。
物語の中盤からはもう、この世界では誰も信用できない…と恐れ慄きました。

後宮の側室たちの位はこれだけある

史実に基づく登場人物も多いが、ストーリー自体はフィクション。

当初は、ただの女のドロドロ復讐劇なら見るのを辞めようと思ったが、
段々と「この局面をどう乗り越えるのか」に関心が移行、
賢い人たちの生き様は見応えありです。


「権力者の心を読む」が生き残りの道


日本で尊ばれる「集団の空気を読む」も、まあ無茶な、と思うことが正直あるが、「特定の誰かの心を読む」だなんて、これまた無茶な要求。
心を読み違えれば、最悪、首が飛んでしまうのだ。

私なら、一話目で抹殺されてしまうだろう…。


ここでは、皇帝の心=正義

恩を忘れると酷い目に。濡れ衣を着せられて抹消されていく者も少なくなく、実際にも幾度となく起きてそう…と妄想してしまうほど。
そして「用無し」は切られる、非情な世界。大切なのは、忠誠心と分別。言論の自由はなく、清朝への侮辱と当たる書物は徹底的に抹殺されていく。

清朝の最盛期にも当たる時代だからか、とにかく権力のスケールが大きい。


そんな世界で這い上がるのが、甄嬛しんけいという架空の人物。
物語後半になると、これは孝聖憲皇后こうせいけんこうごうがモデルであると気づく。

孝聖憲皇后…満州族ニオフル氏。次期皇帝にあたる乾隆帝の生母であり皇太后。周囲の側室よりも位は下であったが、寵愛を受けて上り詰めた人物。

雍正帝の正室であり皇后であった満州族のウラナラ氏は、息子を授かるも夭折。皇太后にはなれなかった史実があるので、なるほど、確かにドラマチックな展開である。

ただし、満州族の国である清は、長子相続という慣習がなく、長男として授かってもその子が世継ぎとなるとも限らなかったそう。皇后だけど皇太后になれないというのも、まあ珍しい話ではなかったのかな。


このドラマの見どころは…

多くの視聴者を魅了していると噂の、甄嬛しんけいが発揮する人心掌握術

当初は少女のような可愛らしさがあった甄嬛だが、段々と、感情を表に出さない肝が据わった女性へと変貌を遂げていく。
元々賢い人物ではあるが、忍耐強さ、口の堅さ、証拠は小出しにせず最後に一気に仕留める手腕。自分の心の内を決して見せないので、周囲にいたら何を考えているか分からない怖い人、と映るかもしれない。
常に朗らかに見えて、きちんと次の一手を考えている彼女はたくましい存在でもあったが、幾多の苦難が彼女をこんなにも変えてしまった、と悲しくもなった。

ただあらゆる登場人物の中では、徳があるまともな人物なので、自然と応援したくなる存在でもある。

他の女性たちの手腕も見どころ。一見、喜怒哀楽が激しく権力を振りかざす人物の方が恐ろしく見えるが、わかりやすい方が駒としては扱いやすかったりする。
虎視眈々と裏で手を回し、忠誠を見せながら裏切る人物もいて、背筋が凍る思いがした。


また、史実を知っていると面白さも倍増するであろうこのドラマ。
中国の歴史に詳しくない私でもおやおや?と思ったのは、下記の二点。

①雍正帝の時代に生まれた子どもの数が圧倒的に少ない。
(先帝の康熙帝は50人程もいるのに)
→45歳で即位した雍正帝、治世は13年と短い。かなり勤勉な皇帝で一日の睡眠時間は4時間に満たなかったという逸話もあるが、多くの女性が仕えているにも関わらず、何人もの子どもが夭折したり、そもそも妊娠できなかった女性が多いのは、高齢ゆえ?それとも…?

②雍正帝の死因がはっきりしない。
→勤勉ゆえ過労死したという説もあれば、女により殺害された説、薬による中毒死説もあったり…。


ドラマに関連するお話

撮影場所について、実際の故宮(昔の紫禁城)で撮影が許されたのは、これまでのところ『ラスト・エンペラー』(1987年)のみのよう。

観ていない方はぜひ観て欲しい名作!

他のドラマは基本、「横店故宮」という映画村のような場所で撮影されているようだ。

https://www.shanghainavi.com/miru/532/


実際の故宮は、改修中であったり、立入禁止となっている場所もあるとか。
17時には閉館することから、巷では「幽霊が出るから早く閉まる」説もあったりなかったり。
迷信に違いはないが、ドラマを見ていると、実際にここで沢山の人が命を落としたんだろうな、という気持ちにはなる。
(側室が井戸に投げ込まれて死亡したという、殺害現場も公開されている)


もう一つよく言われているのは、このドラマは美しい女性が沢山出てくるものの、美しい男性はほとんど出てこない。

同じ雍正帝を演じた役者間でも、このドラマの雍正帝は「四大爷」、別のドラマのイケメン役者の方は「四爷」と呼ばれているそう。ググると彼らが出てくる(笑)

四爷…カッコいい男性を指す言葉で、尊敬の意味もある
四大爷…「お父さんの兄」を意味するところで、おじさんのような意味
(四なのは、雍正帝が康熙帝の四男だったから)

四大爷
四爷

ドラマを見終えた今、私は四大爷により愛着がありますが(笑)


✳︎

以上、初の中国宮廷ドラマは、中でも評価の高い本作品となりました🌷
今回、日本語字幕で視聴しましたが、中国語の先生からは、中国語字幕で二刷(2周目)に入れ、とのお達しが。
もちろん、無視です。しばらくドラマは観たくなくなるくらい、長過ぎました(笑)

ですが、架空のストーリーだったとしても、中国史に興味を持つきっかけにはなったなと思います。

また時間を置いて、別の作品にトライしようと思います。

もし何か、皆さんのオススメ華流ドラマがありましたら教えてください🙏
(長編が多いので、今後もなるべく作品数絞って観て行きたい…笑)


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