Flying Lotusレビュー

Flying Lotus

ヒップホップ要素の強いエレクトロニカを手掛けるアーティスト。非常にアクの強い、個性的なビートが特徴。テレビゲーム好きとしても知られ、楽曲を構成する電子音にどこかゲームっぽい雰囲気が伺える。

1983
 B+

[総評]
2006年。 つんのめるような感覚のある、非常に特徴的なビートと、それに複雑に絡み合うシンセサウンドあるいはノイズ、それらを強い音圧で繰り出す、というFlying Lotusサウンドの特徴が、アルバム1作目ながら発揮されている。(とはいえ、後のアルバムでこれらの要素をより深化させていく為に、1枚目である今作は比較的抑えめと言えなくもないが。)
時代の先端を行くエレクトロニカ、あるいはインストゥルメンタル・ヒップホップといったサウンドだが、そんな中でさらっと60年代ラテン・ジャズのサンプリングを混ぜるあたり(「Unexpected Delight」)、一筋縄ではいかない。

Los Angeles
 C+

[総評]
2008年。前作『1983』の段階で、かなりひねくれたクセのあるサウンドを展開していたが、今作はまさに音の洪水というべきアルバムで、不規則なビートに乗って怒涛のように様々な音が流れていく。ただ、「音の洪水」の源泉となるのは、短いループとサウンドエフェクト的なサンプル、それに複雑なビートのみである為(わかりやすいメロディーのようなものはあまり見られない)、前作以上に難解。ビートは効いているものの、『実験的エレクトロニカ』的作品に仕上がっている。
Flying Lotusのサウンドを形容する上でしばしば用いられる「宇宙的なサウンド」という要素が(前作にも現れてはいたが)今作で随所に現れており、次作ではそれがより顕著に現れるようになる。

Cosmogramma
 B-

[総評]
2010年。前作同様とにかく混沌としたサウンドである。とはいえ、旋律めいたものが所々に現れるようになっているのを始め、シンプルな4つ打ちビートがあったり、電子音だけでなくストリングスやハープ、サックスといった音が現れるなど、前作に比べると多少は取っ付き易くなっている。しかしながら、そのサックスパートはまるでフリー・ジャズを思わせるようなサウンドであったりするのだが。
前作がエレクトロニカ的に統一された混沌であったのに対し、今作はあっちこっちに広がった(「Cosmo」というだけあって)宇宙的な混沌が広がっている。

Until the Quiet Comes
 B-

[総評]
2012年。それまでのFlying Lotusサウンドの特徴であった重低音の効いたビートが文字通り「鳴りを潜め」(全く無くなった訳ではないが)、楽曲全体を埋め尽くしていた剥き出しの電子音がエレクトリックピアノに置き換わっていたりするなど(これまた電子音が全くなくなったわけではないものの)、それまでの3作品に比べるとアルバムタイトル通り「Quiet」な作品。
とはいえ、Flying Lotusサウンドの持つ混沌さは随所に残っている。構成される音こそ異なるが、雰囲気は前々作『Los Angeles』に近い。

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