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マークの大冒険 もうひとつの世界史

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冒険家マークの時空を越えた旅の物語。
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記事一覧

マークの大冒険 古代エジプト編 | ピラミッドに眠る指輪

ホルスの完全顕現による騒動から一週間ほど経った頃だった。深夜、辺りが静まり返った時間にマークはホルスと話していた。 「いつまでぼーっとしている気だ?とりあえずここから出るぞ」 エジプシャン・ブルーの美しい片眼のアミュレットに閉じ込められたホルスがマークの周囲を周っていた。 「何言ってんだ、また勝手に。キャンプも破壊して、ボクらはこのプレハブに軟禁中なんだぞ」 マークは寝台に腰掛けながら、呆れた表情で言った。 「任せろ、案内してやるよ」 「案内ってどこに?」 「ピ

マークの大冒険 百年戦争編 | パテーの決戦前

1429年6月18日、北フランス・パテー近郊、 パテーの決戦前____。 「鹿の群れが森林地帯に入った時、わずかにだが、人の声が聞こえた。おそらく、あそこでイングランド兵が身を潜めている。追撃に来たボクらを迎撃するつもりだ」 パテー近郊、フランス軍の野営地で作戦会議が開かれる中、マークはジャンヌ・ダルクに言った。 「なら、攻撃あるのみ。受けて立とう。リッシュモン、どう思う?」 甲冑を纏う女騎士ジャンヌは、腕を組みながら傍らのリッシュモンに問うた。 「俺も攻撃に賛成だ

マークの大冒険 百年戦争編 | シャルル7世との密会

ジャンヌ・ダルクとリッシュモン率いるフランス軍は、その目覚ましい快進撃によりパテーの戦いで大勝利を収めた。その後も彼らは連戦を重ね、ついにランスへの道も開かれる。ジャンヌ・ダルク一行はランスまで進み、王太子シャルルはランス・ノートルダム大聖堂で念願の戴冠式を果たした。そんな喜ばしい出来事から、ほどなくしてのことだった。 🦋🦋🦋 「これからは外交で穏便にことを済ませたい。それなのにジャンヌは攻撃一択で、こちらの立場が全く分かっていない。戴冠式までは良かったが、これ以上の勝手

マークの大冒険 百年戦争編 | オルレアン包囲戦

1429年、フランス王国オルレアン市____。 シノンで王太子シャルルと謁見を果たしたジャンヌ・ダルクは、甲冑と軍旗を与えられ、正式に軍に迎え入れられた。そして、ジャンヌはジル・ド・レ男爵が率いる部隊と共に籠城しているオルレアン市民の救援に向かう。1429年4月29日の夜、ジャンヌたちはオルレアンに入城し、市民から大歓待を受けた。この救援により、オルレアンに希望の灯がついた。それから間もなくしてのことだった。 「まずは、あそこから討とう」 ジャンヌは、トゥーレル砦を指差

マークの大冒険 百年戦争編 | ジャンヌ・ダルクの最期

ランスでの王太子シャルルの戴冠式を境に、ジャンヌ・ダルクの運命は雲行きが怪しくなって来ていた。ジャンヌは首都パリの奪還を主張したが、シャルル7世はこれに乗り気でなく、ジャンヌは十分な兵と物資を与えられない状態で出陣する。首都パリの防衛は堅く、フランス軍の結果は無惨なものとなり、彼らは撤退を余儀なくされた。 その後もジャンヌは積極的な攻撃を主張し、各地を転戦した。だが、その強運も尽き、コンピエーニュ包囲戦でイングランドと手を結ぶブルゴーニュ軍の捕虜となった。そして、ブルゴーニ

マークの大冒険 百年戦争編 | 本当に大切なもの

晴れた日の土曜日の午後、写真事務所の中でマークはボヤいていた。事務所の窓の外から入る陽光が、部屋の中に微かに舞う埃を浮かび上がらせている。遠くの国道を走る車の走行音が僅かに聞こえてくる。近くの電柱からは鳩の鳴き声が聞こえ、ガレージの車のボンネットの上で猫たちが日向ぼっこしていた。本当に絵に描いたような平和な日で、穏やかでゆったりとした時間が流れていた。 「結局、今回も意味のない冒険だったよなぁ。せっかく稼いだ金は、全部ジャンヌの身代金に使っちまったし。何やってんだろなぁ」

マークの大冒険 現代日本編 | 秘密を暴きし者

「それでは、今日はここまで。次回は貨幣を用いた考古学現場の年代推定についてだ。フォーラムにレジュメを上げておくので、各自、次回の授業までに目を通しておくように。それから再来週は、研究出張で休講予定となっている。詳細は追って連絡するので、そちらもフォーラムで確認しておくように」 教壇に立つマークは、聴講する学生たちに言った。講義の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、学生たちは講堂の最前席に出席カードを置いていくと、そそくさと教室から出て行った。2限目が終わり、楽しいランチタイム

マークの大冒険 現代日本編 | 秘密を語りし者

「......キミはどうして、ボクが果実を持っていると思ったんだい?」 「それは_____。全ての答えは、文献の中に既にある。教授の著作の言葉ですよ」 「それじゃあ、キミはボクがタイムトラベラーか何かで、いろんな時代を行き来してたって言うのかい?」 「はい。その通りです」 「そんな馬鹿げた話があるかい?」 「でも、それが事実です。そうした結果が現実としてある。エジプトのサッカラで起こったホルスの顕現事件。もちろん、覚えてますよね?公式では砂嵐に光を照射したプロジェク

マークの大冒険 古代エジプト編 | 夜空の下の約束

エジプト、サッカラ近郊____。 二人の青年がテラスで仰向けになり、夜空を眺めながら話していた。夜空の闇は深く、漆黒という言葉が相応しい。それだけに一層、星の輝きが際立っている。月明かりが青年たちを照らし、まるで彼らを舞台役者かのように引き立てていた。 「マーク、俺はお前にずっと嫉妬していたんだ。お前は何でも持っていて、いつも俺の先を行く。だから、ずっと羨ましいと思っていた」 「そうか?ボクもキミと全く同じことを思っていたけどな。キミには何ひとつ及ばないって」 「ウケ

マークの大冒険 フランス革命編 | もうひとつのフランス史 退屈な仮面舞踏会

西暦18世紀末、ブルボン朝フランス王国_______。 豪勢な建物の中で、華やかに着飾った人々が賑わいを見せている。フランス貴族の間でも流行っている仮面舞踏会である。 人々は仮面をかけて変装し、踊り、飲み、談笑している。顔が隠れていることもあって、参加者は普段より少し大胆になることができる。そして、相手の顔が見えないというミステリアスさからスリリングな楽しみを享受することができるのだ。 そんな人々の様子をダンスホールの壁に寄りかかって眺めるルイ16世とマーク。二人はいか

マークの大冒険 フランス革命編 | エジプト遠征での秘密

4月、校門の先には桜の花びらの絨毯が続いている。大学のキャンパスを照らす春の優しい陽光。そんな穏やかな光が窓の先にある教室を包んでいる。教室では、マーク教授による第一回目の講義が行われていた。 「始めに言っておこう。ボクの授業では、寝ていても、ゲームをしていても、違う授業のレポートをしていても構わない」 マーク教授の発言に生徒たちの驚きの声が上がった。 「なぜなら、学生時代のボク自身がそうだったから、ボクにそんな説教がましいことを言える権利はない。キミらがボクの授業の中

マークの大冒険 フランス革命編 | マリー=アントワネット奪還作戦

「マジかよ、ボクが消えるのか?そんな......」 マークの身体が透け始めていた。彼は自身の透けた手を見て驚きを隠せない表情でいた。 「おい、嘘だろ?!行くな、マーク!!」 どんどん透けて薄くなるマークを見たホルスは、マークの腕を掴もうとするが、容易くすり抜けた。 「ホルス、助けてくれ!!」 マークの悲痛な叫びが轟いた。その叫び声の後、彼の姿は完全に消えた。 「マーク、どこだ!どこに行った!!」 ホルスは大声でマークの名を呼ぶが、消えたマークが戻って来ることはな

マークの大冒険 フランス革命編 | タンプル塔脱出作戦

真っ暗闇の中、マークが倒れている部分だけがスポットライトのように照らされている。しばらくすると、倒れていたマークが目を覚まし、起き上がる。 「ここは?」 マークは当たりを見渡すが、周囲は真っ暗闇で遠くの方に僅かに青白い光が幾つか見えるだけだった。 「あれからボクは、確か身体が急に透け始めて、それで消えた。ホルスがボクの腕を掴もうと、叫んでいたような気がする。ボクは一度消えて、ここに来た?」 マークは、鞄から方位磁針を取り出し見つめる。 「コンパスの針がめちゃくちゃに

マークの大冒険 フランス革命編 | 対なる指輪の秘密

ウェスタの白き間にて_____。 「ホルス、気をつけろ。ファンタズマ・デジトゥスだ。一度だけ文献で見たことがある。ウェスタは指の僅かな動きだけで相手を制する。なぜなら彼女は......。家庭の女神の裏の顔、いや真の姿は支配の女王だからだ。最高神ユピテルさえも抗えない存在、支配を司る者。それがウェスタ、キミなんだろ。純潔の女神であるのは、キミが常に支配する側にいるからだ。誰からも支配されることがない存在。キミはどんな相手も意のままに操る。その美貌、美声、巧みな話術と支配の魔術