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古代オリエント美術の世界

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なぜ古代文明なのか?それは古代について知ることは、現在の私たちについて知ることだからです。人間の基本的な部分は古代から変わっていません。そして何より、人間の歴史とは「戦史」でした…
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#古代史

古代エジプト美術館を探検する:前編

今回は、東京・渋谷にある古代エジプト美術館について紹介していく。菊川匡 博士によって創設された日本で唯一の古代エジプトの専門美術館である。当館は博士自らの手で収集されたコレクションが展示されている。博士の審美眼によって集められた選りすぐりのコレクションが堪能できる。 膨大な量のコレクションが展示・収蔵されているため、前編と後編の2回に分けて紹介していく。前編ではエントランスと第一展示室及び第二展示室を紹介し、後編では第三展示室の暗闇の間を紹介する。暗闇の間とは何なのか?と疑

古代エジプト展 天地創造の神話 作品解説

江戸東京博物館 特別展「国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話」。現在、東京で開催されている大規模な古代エジプト展で、ドイツのベルリン・エジプト博物館の名品が展示されている。 ドイツは古くから考古学研究に深い関心を寄せており、トロイアを発掘したシュリーマンもドイツ人である。キリストの聖遺物を探し求めたナチスのヒトラーもドイツ人であり、彼は古代ギリシア文明にも深い関心を寄せ、『イリアス』の特装カバー本をつくらせている。また、ドイツはレプシウス等の優秀

オリエント美術の世界 〜ローマ帝国と鉱物〜

現代の私たちの生活の中で欠かすことのできない鉱物。普段は気づかないところで、鉱物は意外にも大活躍している。そして、それはローマ帝国の時代からすでに同様だった。ローマ帝国では多種多様な鉱物が採掘され、利用されてきた。今回は資料として記録が残されている鉱物の一部を紹介していく。 ブルガリアのマダンで産出した方鉛鉱。鉛が採れる鉱石で、少量だが銀も混じっている。ローマ帝国ではこの鉱石から鉛を採り、水道管の材料として用いた。だが、鉛は中毒性があり、精神異常をもたらすケースもある。一説

オリエント美術の世界 〜西南アジア〜

古代エジプトの墳墓からは、ラピスラズリ製の副葬品が出土する。だが、エジプトでラピスラズリは産出しない。このラピスラズリは一体どこから来たものなのだろうか?それはアフガニスタンのバダフシャン地方から産出したものだった。このことは成分分析からも明らかになっている。 ラピスラズリの原石 研磨したラピスラズリ つまり、少なくとも前3000年紀にはすでにエジプトとアフガニスタンをつなぐ交易ルートが確立されていたことになる。これを機に私は西南アジアの古代文明にも興味を持つようになっ