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古代オリエント美術の世界

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なぜ古代文明なのか?それは古代について知ることは、現在の私たちについて知ることだからです。人間の基本的な部分は古代から変わっていません。そして何より、人間の歴史とは「戦史」でした…
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#美術

東京国立博物館 特別展 『ポンペイ』 作品解説

ポンペイの記憶と記録___。 今回は現在、東京国立博物館で開催されている特別展『ポンペイ』の作品解説をしていく。展示のキャプション説明だけでは補えない部分を補足し、古代ローマの世界の面白さを伝えることができれば幸いである。数多くの作品が展示されているため、その全てを紹介できるわけではないが、見所となるメインは押さえていく。 通常、国内の展示では撮影が許可されていないことが多いが、本展ではありがたいことに撮影が許可されている。それゆえ、こうして展覧会の紹介できるわけである。

オリエント美術の世界 〜古代ローマと鉱物〜

古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは、著作『博物誌』の中で、鉱物に関する章を設けている。古代ローマでも鉱物は彼らの生活を支える上で欠かせない存在だった。様々な道具に利用されたり、その神秘的な見た目から迷信が生まれたり、ローマ人と鉱物の関係性は興味深い。ここでは、そんなローマ人と関わりの深い鉱物を一部紹介する。 ティレニア海に浮かぶイタリアのエルバ島から産出した赤鉄鉱。この地から採掘された赤鉄鉱は古代ローマの文明を支えた。エルバ島の赤鉄鉱はローマが鉄器を生

オリエント美術の世界 〜ウジャトの護符と贋作の見分け方〜

ツタンカーメン王墓から発見されたウジャトの護符を、現代の職人がイラスト化してパピルスに描いたもの。コブラの女神ウァジェトとハゲワシの女神ネクベトがウジャトの装飾の一部として共に表されている。この二柱の女神は王権の主義者として崇拝されていた。 「ウジャト」とは古代エジプト語で「再生、復活、健康」の意。天空神ホルスの失明した片眼が治癒したエピソードに基づいており、護符等のモティーフにされることが多い。 画面右側で腰掛ける白い装束の男神がオシリス。死者をオシリスの前に案内し

オリエント美術の世界 〜イスラームとは何なのか?〜

イスラエルの唯一神が遣わした使徒ムハンマドにより、7世紀に創始されたイスラーム。彼らは伝統的に偶像崇拝を忌み、芸術の上にもその思想が強く表れている。だが、アラベスク文様や機能性を代わりに発展させ、多文化には見られない独創的で魅力的な工芸品を数多く遺した。 緑釉がかけられた土製オイルランプ。深い緑が落ち着いていて美しい。12世紀頃のもので、型で生産されたタイプ。アフガニスタン出土。電気がまだない当時、ランプは生活必需品だった。燃料となる油には、胡麻、椰子、オリーブなどが用い