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古代オリエント美術の世界

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なぜ古代文明なのか?それは古代について知ることは、現在の私たちについて知ることだからです。人間の基本的な部分は古代から変わっていません。そして何より、人間の歴史とは「戦史」でした…
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2019年7月の記事一覧

オリエント美術の世界 〜イスラームとは何なのか?〜

イスラエルの唯一神が遣わした使徒ムハンマドにより、7世紀に創始されたイスラーム。彼らは伝統的に偶像崇拝を忌み、芸術の上にもその思想が強く表れている。だが、アラベスク文様や機能性を代わりに発展させ、多文化には見られない独創的で魅力的な工芸品を数多く遺した。 緑釉がかけられた土製オイルランプ。深い緑が落ち着いていて美しい。12世紀頃のもので、型で生産されたタイプ。アフガニスタン出土。電気がまだない当時、ランプは生活必需品だった。燃料となる油には、胡麻、椰子、オリーブなどが用い

オリエント美術の世界 〜謎に包まれたパキスタンの先史土器〜

パキスタンで前3000年頃に制作された土器群。バローチスターン地方から出土したものである。バローチスターンとはパキスタン西部に位置する地方の名称で、その名は「バローチ族の土地」の意である。「スタン」というのは「国」や「土地」を意味しており、「アフガニスタン」なら「アフガン族の国/土地」という意味になる。 バローチスターン地方は太古より高度な文明が発展しており、また、東西を結ぶ十字路として歴史上重要な役割を果たしてきた。だが、同地の先史時代の土器は、今までほとんど目を向け

オリエント美術の世界 〜イスラームグラス 聖なる香りを閉じ込めたガラス器〜

イスラームグラスとは、7世紀以降に中東世界を支配下においたイスラーム勢力の文化圏で生産されたガラス製品のことを指す。イスラームは宗教上の思想で偶像表現を禁忌した。だが、その結果アラベスク文様などの植物文様を発達させる。また、無地でシンプルではあるものの、機能性を発展させた生活用品を遺した。そんな彼が愛して止まなかったのは、香料から精製される芳香だった。イスラームの人々にとって香りは癒しの役割の他、宗教上でも非常に重要だった。芳香は神から与えられた神聖なるものだったのだ。それゆ