マガジンのカバー画像

アンティークコインの世界

82
前7世紀に世界で初めて金属製の円形コインがリディア(現在のトルコに位置した古都)で発行された。物々交換の効率の悪さから解放され、小さく軽く携帯しやすいコインによって人間はさらに商…
運営しているクリエイター

2019年10月の記事一覧

アンティークコインの世界 〜ニュースタイルアテナ〜

アテナイが発行したアテナとフクロウを刻む4ドラクマ銀貨は、アンティークコイン収集家の中で最も人気の高いコインのひとつである。ギリシア関連のあらゆる書籍、学校の教科書でも紹介される古代ギリシアを代表するコインだ。だが、一般的に紹介されるアテナイのコインは前5世紀の繁栄期に発行されたタイプで、本当は少しずつデザインを変容させながら前1世紀まで発行されている。今回紹介するコインは、アテナイがローマに造幣所を閉鎖される少し前に発行されたものである。この時代に発行されていたものは、アテ

アンティークコインの世界 〜最も思い出深いコイン〜

最も思い出深いコインは?と問われれば、プトレマイオス1世が亡きアレクサンドス大王の肖像を表して発行した4ドラクマ銀貨だ。思い出深いこともあって、このコインは『アンティークコインマニアックス』の表紙に採用している。 通常、コインの上に描かれるアレクサンドロスはヘラクレスをリスペクトしてライオンの帽子をかぶっているが、本貨では象皮の帽子をかぶっている。且つエジプトのアメンを象徴する牡羊の巻角を生やしている特別な図柄。投資用として最近注目されているが、歴史・宗教研究においても重要

アンティークコインの世界 〜コインと共に神話を追う〜

古代ギリシア・ローマコインには、神話に登場する神々や英雄が描かれている。当時の人々にとって、神話は先祖たち、そして自分たちの出生の秘密を知る大切なものだった。 古代ギリシアの世界観 ギリシアの神は2回ほど人間に反省のチャンスを与えたが、人間は世代が変わると全てを忘れてしまう馬鹿で無脳な者たちとわかったので、愛想を尽かして皆天界に上り接触を避けるようになった。現在は「鉄の時代」と呼ばれる史上最悪な時代であり、世界はどんどん悪い方向へ、すなわち終焉に向かって歩んでいる。これが古