アンティークコインの世界 〜皇帝を刻まない特別なローマコイン〜
帝政期のローマコインには在位中の皇帝の肖像が刻まれた。今の君主が誰であるのかを民衆に知らしめ、権力をアピールするためである。そして、皇帝たちは民に自身の崇拝を要求した。いわゆる、皇帝崇拝である。ローマ皇帝は神として扱われ、崇めるべき対象とされていた。だが、イスラエルの神を唯一神とするユダヤ人には皇帝崇拝は宗教上行えないものだった。皇帝を崇拝することは、自らの唯一神を否定することになるからである。ローマ人たちはユダヤ人たちの特異な思想を不思議に思いながらも、反乱を起こされては面