第一回:ピンク

好きなものを書き溜めていこうとおもった。

好きなものは、それにふれている時には「好き!」って思えるのだけど、そこから離れると「何が好きだっけ?」ってよくわからなくなることが頻繁にあるからだ。私だけ?

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ピンク。桃色。さくら色。薄紅色。サーモンピンク。ベビーピンク。フレンチローズ。

幼少の頃は惹かれなかったのに、20代も半ばをすぎて、突如ピンク色がとても好きになった。小さい頃はどちらかというと、青とか緑とか、寒色系を好んでいた。思春期になってからもオレンジや黄色などビタミンカラーを好んでいて、ピンクが好き!と自分にも他人にも宣言していいのは「”スクールカースト高めの子”の特権」という感じがあったから、カースト低めの自分は他の色を魅力的だと思い込むことによって、ピンクから目をそらしていたのかもしれない。

”スクールカースト高めの子”はえてしてギャルであり、ミニスカートであり、ルーズソックスとまではいかないまでもゆるっとさせた白ソックス、人によっては茶髪でさえあった(中学生なのに)。持ち物の色やモチーフ、形状が他人とかぶる「持ち物被り」はカースト低め女子にとっては恐ろしいことだったので、彼女たちが好むピンクや赤などを避けることで、自己防衛をしていたのかもしれない。大げさかもしれないけど、今となっては色の好みの選択について、そんな風に考えることもできるな、と思い返している。

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大学に入って、卒業して、そこでようやく小さいコミュニティの価値観から自由になった。またの名を、社会にほっぽり出された、とも言う。就活、進路、資本主義社会へのコミットへの強要、セイジケイザイ、それらが自分ごととなってようやく、「○○ちゃん、△△が好きなの〜?私もめっちゃ好き〜!!!」と他人の猿真似ばかりしているのではなく、自分が独自に出会い、独自に「好きだな〜」と思うことを好きでい続けてもいいのだと気づいた。遅いね。それまではたぶん、自律した存在でいることに自信がなかったのだ(そして、その当時よりは自律できているかもしれないけど、今も自信はない)。

そんなわけで、自分には可愛すぎて似合わないかもしれない色を好きだと言っても良い、と徐々に思い始め、財布や、小物はとにかくピンクを選んだ。服はなかなかピンクを選べなかったけど、やっぱり春にはピンクが着たくなり、ここ数年は春になるたびにピンクの服を何着か買っている。

好きな色のこれまでの変遷を思い返すと、もしかして、もしかせんでも「好きな色」によって見せたい自分を演出しているのではないか?と思い始めた。妙にエリート意識が(小学生なのに)高かった私は、青や緑が好きであると宣言することで周りの子供とは違う「冷静で頭脳明晰な自分」をアピールしたかったのだ。オレンジや黄色が好きな私は、ピンクや赤を好きな子とかぶることを恐れてもいたけれど、パワフルなビタミンカラーを身近に置いておくことで、学校に居場所がないちっぽけな自分のことを紛らわせようとしていたのかもしれない。ピンクや赤が好きな私は、リーダーシップがあることをアピールしたい側面もあったけれど、誰かに庇護してもらいたかった。そして今は「庇護ピンク」から、健全な、「自分の好きな色としてのピンク」にその色を変化させつつある。

ピンクについてもう一つ象徴的だったのが、体調が悪かった時、他の色は灰色に見えるのに、ピンクだけ、より強く、快い色として目に映っていた期間があった。具体的には、3月〜4月の1、2ヶ月間くらいだろうか。明らかに、メンタルや脳など「こころ」と言われる部分がおかしかったのだけど、その時期はピンクがめちゃくちゃ綺麗に見えた。電車の中吊り広告のピンク、他人の服のピンク、そういうピンクたちがとびきり鮮やかに見えていた。他の色は、赤やオレンジなども、鈍い灰色だった。(ちなみに、どん底の時は満開の桜も灰色に見えた。)今はそんなことはないけれど、あれはどう考えてもヤバかった。読者諸氏もこのような体験をすることがあれば、即座に社会活動を中断し、美味しいものをたくさん食べ、たんまり寝て、元気になるまでどうぞ快い場所で過ごしてください。

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そういうわけで、なんだか特別な色だ、ピンク。

私にとっての好き、は、他の感情と隣り合わせになって、ネガティブを写す鏡になっているのかもしれない。


書いてみて思ったけれど、好きなことを書こうとすると、ネガティブなエピソードがたくさん出てくるのですね。このテーマだけなのか、他も書いてみたらそんな風になるのかわからないけれど、好きを純粋に語れるようになりたい。


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