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娘に贈る回顧録 10/7300 でも、それでも…

『おせっかいおばさん!』
『恥ずかしいからやめて!』

久しぶりにランチをしようと2人で出かけた。
買い物もしたいから、早めの出発。

駅のホームに赤ちゃんを抱っこしたお母さん。
大きな荷物も肩に。

並んで待つ。

電車が到着。だいぶ混んでいる。
やっと乗り込む。

大丈夫か?
「良ければ荷物持ちましょうか?」

…「お願いします」
荷物をよこして、
お子さんを庇うように腕をまわす。

…「これから一歳検診なんです」
「時間が決まってるからね、間に合いますか?」

…「ミルクだから」
「ポットや何やらで荷物も増えますよね」

…「ベビーマッサージの講習もあって」
「じゃあ、バスタオルや着替えもあるわね」

区役所の駅に着く。
荷物を返す。「気をつけてね」
出発までホームから見送ってくれる。

恥ずかしかった?
声をかけたのは私だけど、
話し始めたのはあちらからよ。

※※※※※※※※※※※※※※※

混んでる時間なのは分かってる。
    でも、時間が指定されてる。
荷物も大きい、迷惑になるのも分かってる。
    でも、赤ちゃんに必要なもの。


あのお母さんは、
私に話しているだけじゃあない。
周りの乗客に言い訳したかったのよ。

※※※※※※※※※※※※※※

混んでる時間だろ!
赤ん坊連れて荷物持って、迷惑だろ!
子供もかわいそうだろ!
母親なら考えろよ!

13年前
あなたを抱いてあの同じホームにいた。
区役所にむかう電車の中で投げられた言葉。

何も言えなくて、悲しくて、いたたまれなくて。
誰かが側にいてくれたら。
あの時そう願ったの。

そんな心細さを持ちながらの外出。
少しでも和らげることが出来たら。

思わず声をかけたけれど、
お節介だったかな?
大きなお世話だったかな?

でも、それでも……。