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娘に贈る回顧録 11/7300 じいじ、そんなにも…?①

むかし、じいじは厳しい人だった。

靴の脱ぎかた
食事のしかた
ドアの閉めかた
挨拶のしかた

子供の頃
何度も注意されて、怒られて。

階段を降りる足音にも気を遣ったっけ。

出産で里帰り。

無事にあなたが生まれて。
入院中、ばあばは毎日のように
あなたの様子を見にきてくれたけど。

退院の日も、迎えに来て荷物を運んで、
そのまま家まで黙って運転。

「寒いから、早く部屋に入れ」

もっと喜んでもらえると思っていたから、
少しさみしかった。

泣き声がうるさいのではないか。
夜中に起きるのは迷惑ではないか。 
私にもあなたに対しても愛情はないのかも。

そんな風に思っていた。

※※※※※※※※※※※※※※
『えー。じいじは優しいじゃん』
『大好きだよ』
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1ヶ月検診の時、看護士さん。
「お孫さんにメロメロでしょう」
「夕方、新生児室の前に毎日来ていたわよ」
「男性1人で。すぐ帰っちゃったけどね」

そうだったの?

そうだね。
思い返せば、
私も大事にされていた。
言葉にも態度にも出ていなかったけれど。

そして、
あなたは言葉にも態度にも
溢れ出る愛情に包んでもらったね。

目と耳を疑うほどの。
笑ってしまうほどの。



久しぶりに、会いに行こうか。