【書き出し用】年単位で放置された18禁_二次創作の続きを書こう_薄桜鬼_狂咲鬼哭_66

 千姫を君菊に託した薫は、妹の成れの果てが転がる部屋へと赴いた。
 外界を隔てる扉を開ければ、磯の残骸を煮詰めたような悪臭が鼻を突き、脳裏に南雲家での忌まわしい記憶がよみがえるものの、復讐と決別した京の若長(わかおさ)は、感情に流されることなく目をつぶり呼吸を整える。
 ひぃ、ふぅ、みぃ。……。
 落ち行くまで頭の中で数を数えて、波立った感情が収まるのを感じながら、すっと栗色の瞳を開ければ、それは部屋の真ん中で大きく脈を打っていた。
「ふん、ざまぁないな」
 あくまで薫は部屋の中に入らず、部屋の灯りが行き届いている外の方に立っている。まるで、自分の立ち位置を二人へ表明しているかのように。そして、これから迎えるであろう新時代の波に立ち向かう者として、滅びゆく古き血に別れを告げるかのように。
 二人の身体が癒着し融合した血に塗れた肉塊は、卵のような形状でありながら白い表皮をまとい、青と赤の細やかな毛細血管を全体へ張りめぐらせて、力強く脈打つさまは心臓のようにも見えた。骨が肉が体内組織が一体となったことで、原初の形へと回帰した異形の物体。
 古来の鬼は性別もなく、形状も不定形で、人の形ですらしていなかった。

つづく

#薄桜鬼
#18禁
#18歳以上
#風間ルート後
#二次創作
#風間 ×千鶴×千姫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?