【書き出し用】年単位で放置された18禁_二次創作の続きを書こう_薄桜鬼_狂咲鬼哭_72
「薫、お前も生きたいか?」
「い、生きたい。死にたくない、死にたくないよぉ」
妹によって父の態度が軟化したからこそ、薫はやっと自分の言葉を発することができた。
そうだ。幼い自分は、あの時、生きることを選んだのだ。人間に殺されるのが嫌なのではなく、もっと厄介な、自分たちに向けられた明確な殺意から逃れるために。千鶴のように立ちあがることができないものの、薫は父に自分の意志を伝えることが出来て、ほっと一息をついた。
だが、そんな安堵もつかの間のことだった。
父は何と言った? 自分がなんと返答しようと【結末は変わらない】と。
――なぜだ? それはいつの事だ?
そんな疑問に答えてくれる者はその場におらず、幼い薫の焦燥は増すばかりだ。
我が子の意思を聞き届けた父は、目をつぶったあとに、ゆっくりと瞳をあけて、母を抱きしめながらゆらりと立ち上がる。
「ならばお前たちは、なにもかも忘れて人として生きよ。我が大通連と小通連を餞別としてくれてやる。良い路銀になるはずだ――行けっ!!!」
父の声が遠のき、炎が部屋に渦巻いた。
手渡された大小を携えて、自分たちは走って走って、そして――。
千鶴は父との約束を違えず、記憶を消失して人間として生活し、薫は約束を忘れて復讐の鬼と化した。
あぁ、俺達はなんて、皮肉の利いた人生を歩いてきたのだろう。
つづく
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