【書き出し用】年単位で放置された18禁_二次創作の続きを書こう_薄桜鬼_狂咲鬼哭_64土
ぐちゃぐちゃと血しぶきを上げながら一つになる。
赤い花びらを飛ばしながら、やがて二人の声も聞こえなくなり、お互いがお互いを蠢かせる、生々しい音だけが部屋の中に木霊して耳と心が悲鳴をあげる。
「気が済んだか?」
いつの間にか隣に薫が立っていた。ぱさりを音を立てて、項垂れている妻の身体に羽織をかけて、壊れ物を扱うように優しい手つきで千姫の肩を抱き寄せる。誰よりもなによりも矜持の高い薫が、わざわざ膝を折って千姫のために腰をかがめているのだ。
そうだ。夫である薫はだれよりも矜持が高いが、それ以上に情が深い。羽織のおかげなのか、薫の優しさゆえか、自分が夫の愛情に包まれていると感じるのは都合がいい話だろうか。
「薫、ごめん、千鶴ちゃんが、千鶴ちゃんが」
続く言葉が見つからない千姫は、蘇芳香の瞳にうっすらと涙を浮かべて形の良い唇を震わせた。
結局何もできなかった。望む未来を手に入れることが出来ず、手のひらの隙間から砂を零れ落ちていくのを、零れた砂が奈落の底へと落ちていく様を観ていることしかできなかった。
目の前で転がっている、血肉の繭が欲をかいた鬼姫の罪そのものだ。
つづく
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