「鬼滅の刃」の世界~交響組曲「鬼滅の刃(きめつのやいば)」アナリーゼ

交響組曲「鬼滅の刃(きめつのやいば)」アナリーゼ

厳しいことを書きますが、物語を理解(もしくは残酷シーンが多く内容自体見たくない方、アニメを卒業された方なども最低限知っておきたい)せずに、楽曲を演奏すること<単に音を並べるだけ演奏や、音が合いバランスもとれてサウンドに酔うだけの演奏>は、聴衆を無視した自己満足に他ならないと個人的に(反論はもちろんあるでしょうが)思います。
そのため、指揮者なりのアナリーゼ<「鬼滅の刃」の物語の簡単な説明および各曲の楽曲に対する指示など(テンポ、和音、演奏指示など)>を再度記載したいと思います。

1000年以上前より、平安時代の医師より生き延びるために鬼にされた、鬼の頂点(無惨の血で手足となる鬼が増える)である鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)とこれら鬼を滅するために鬼殺隊の9人の柱(鬼殺隊最高位)と剣士たちおよび鬼殺隊の頭である産屋敷(うぶやしき)一族の熾烈な戦いに、竈門炭次郎(かまどたんじろう)と鬼に変貌した妹・禰豆子(ねずこ)【ともに鬼舞辻無惨に影響の大きい人物】がからむ物語です。
楽曲に登場する柱の一人「富岡義勇(全23巻の物語の登場の最初から最後までいろいろ絡んできます)」や多くの少年・少女の「鬼殺隊」、そして3曲目で名前としては登場しないものの十二鬼月の一人(下弦の五の鬼)「塁」とその偽りの家族との死闘場面を想像でき、曲に伝えることができれば何か聴衆に訴えることができるかもしれません。(何せ1部の大曲ばかりや企画で演奏体力が相当奪われていて、集中力も失っていると思いますが、アニメではありませんが全集中の呼吸かつ常中でお願いしたいものです)
漫画コミックは全23巻で、アニメーション(曲が挿入されています:ユーチューブで一部分、動画・画像が見られますので探してみてください。有料サイトはすぐに鑑賞できます。) は漫画コミックの7巻目まで、映画「鬼滅の刃~無限列車編」は8巻目です。

1) 壱. 家族
●16~17小節目(練習番号B後3~4)Hr.は各パート1で
●60小節目(練習番号G1)から62小節(練習番号G後3)2拍目まで、Vib.は記譜のオクターブ下もいれてロールで
●63小節目(練習番号G後4)はカットし64小節目(練習番号G後6)の3拍目でフェルマータ、なおHr.各パート1playで、Tubaは2playsで
●基本的には ♩=60ca.ではあるが、途中のrit.は十分に遅くなると思ってほしい。(もちろん a tempo は元のテンポ ♩=60ca.で)
●旋律系はアフタクトから始まることが多いので、十分に歌うことが必要。58小節目(練習番号G前2)4拍目は十分に長く、トリルはEののばしで終わること。
●最後のフェルマータの後、すぐに2曲目の冒頭へ(attacca:続けて)
●最後のフェルマータの和音は、残酷な悲劇が待っている雰囲気が出せるように、Trp.3rd(1play)に追加で第三間のド#(実音H)、3rd Cla.、2nd Hr.の実音Hはより強調し、2曲目のTimp.のHにつなげる
●合せてほしい和音:<>は推定の音
・13小節目(練習番号B前1) Dm(1→3→5:D→F→A)
・30小節目(練習番号D前2)1、2拍目 Esus4(1→4→5:E→A→H) 3、4拍目 E(1→3→5:E→G#→H)
・40小節目(練習番号E前4) A(1→3→5:A→C#→<E>)
・41小節目(練習番号E前3)1、2拍目 Dm add9(1→3→5→9:D→F→A→E) 3、4拍目 Dm(1→3→5:D→F→A)
・49小節目(練習番号F前2) DM7 add9(1→3→5→7→9:D→F#→A→C#→E)
・58小節目(練習番号G前2) E(1→3→5:E→G#→H)
・64小節目(練習番号G後5) 3拍目以降 A add9(1→3→5→9:A→C#→E→H)

アニメ「鬼滅の刃」の第1話「残酷」。主人公の竈門炭次郎は、山中で炭焼きの仕事をしながら母(キエ)と2人(ネズコ、ハナコ)の妹、3人の弟(タケオ、シゲル、ロクタ)と貧しくとも幸せに暮らしていました。しかし、炭治郎が麓で炭を売り、一夜遅れて家に戻ると運命は一変します。
この曲は、そんな日常の何気ない会話が交わされ、今は亡き病弱な父(タンジュウロウ:病弱ですが、古【いにしえ】より伝わる「ヒノカミ」神楽の踊りを踊るときは別人<別の場面で人食い熊を一瞬で倒しています>:実は呼吸の始まりの剣士<唯一、鬼の頂点である鬼舞辻無惨が恐れた剣士>と竈門家との出会いから「神楽」や「日輪の耳飾り(炭次郎が現在身に着けているもの)」の発祥がありそう) も含めた幸せそうに暮らす家族を描く曲です。
ここでの家族とは、映画<残酷なシーンが多く見たくない方はすみません。見なかった方で興味ある方はこのコロナの影響で行くのが難しそうですが、佐賀ではまだ公開中なのでぜひ>の中で、下弦の壱の鬼の血鬼術「夢」での炭次郎の現実世界に戻りたくなかった生活のことだと思います。
ほのぼのとした作品ですが、この後すぐに残酷な悲劇が待っている雰囲気が出せれば良いと思っています。

作・編曲家の今村愛紀氏による吹奏楽版のアレンジ版の4曲からなる交響組曲、その第1曲目。

2) 弐. 冨岡義勇のテーマ~炭治郎の戦い~鬼殺隊
●1曲目最後のフェルマータの後、すぐに2曲目の冒頭へ(attacca:続けて)
●基本的には ♩=120ca.ではあるが、42小節目(練習番号F)演奏し終わった方はフェルマータ(結構長めに設定の予定)が終わり、合図するまでG.P.(譜めくり等全く音を出さず、動かない)風で
●44小節目(練習番号F後3)にHr.1stに第3線に全音符で実音Eを加える
●最後のフェルマータ(演奏する方はffで)の後、しばらくあけてから3曲目の冒頭へ
●合せてほしい和音:短い曲ですがEm(1→3→5:E→G→H)が主体です。<>は推定の音
・2小節目(練習番号A前11) Em(1→3→5:E→G→H)
・34小節目(練習番号D後5)Em(1→3→5:E→<G>→H)
・44小節目(練習番号F後3)Em(1→3→5:E→G→H)

アニメ「鬼滅の刃」の第18話「偽物の絆」での冨岡義勇の登場シーンの曲です。冨岡義勇(とみおかぎゆう)とはアニメ第1話目終盤で鬼に変貌した妹・禰豆子を葬り去ろうとして対決しています。冨岡義勇に覚悟を諭され、鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)の元で修業を続け、試験に辛うじて生き残り鬼殺隊になります。
那田蜘蛛山で、十二鬼月の一人、下弦の五の鬼である「蜘蛛の鬼:塁(るい)」の偽り家族?である父鬼と対峙する炭治郎と伊之助(猪被り物をしているイケメンの筋骨隆々の少年)。炭治郎は父鬼に吹き飛ばされ、伊之助一人で父鬼と戦うも、絶体絶命のピンチを迎えます。そこに現れたのが、鬼殺隊の水柱・冨岡義勇だったのです。その時、その時点で鬼殺隊の中で力が上と思っていた伊之助が、極めて圧倒的力の差を感じた場面です。一方、炭治郎は鬼の少年累と対峙し、戦いが始まります。

4曲からなる交響組曲、その第2曲目。

3) 参. 竈門炭治郎のうた
●2曲目最後のフェルマータの後、しばらくあけてから3曲目の冒頭を開始
●3小節目のHr.はカットし代わりにT.Sax.(第3間)とBr.Sax.(第2線)に全音符で実音B♭で(p 二拍cresc. 二拍decresc.)
●1~41小節目(練習番号F後6) テンポは♩=72ca.でややゆっくりと
●42~45小節目(練習番号G前1) poco a poco accel. e bit(ほんの少しだんだん速く)
●46小節目(練習番号G)~ poco pìu mosso(ほんの少し速く) テンポは♩=76~78ca.でやや速く
●合せてほしい和音:
・53小節目(練習番号H前1) 1拍目、2拍目表Fsus4(1→4→5:F→B♭→C) 2拍目裏~ F(1→3→5:F→A→C)
・70小節目(練習番号J前1) 1拍目、2拍目表Fsus4(1→4→5:F→B♭→C) 2拍目裏~ F(1→3→5:F→A→C)
・102小節目(練習番号M後10) 1拍目、2拍目表Fsus4(1→4→5:F→B♭→C) 2拍目裏~ F(1→3→5:F→A→C)
●最後のフェルマータの後、ほぼすぐに4曲目の冒頭へ(poco attacca:ほぼ続けて)

アニメ「鬼滅の刃」の第19話「ヒノカミ」の挿入歌です。炭治郎は鬼の少年累と対峙し、折れた刀からの戦の中で「ヒノカミ」の呼吸により「水の呼吸」から「火の呼吸」の技と禰豆子の血鬼術「爆血」(通常は、十二鬼月かそれに近い位置の鬼しか使えない術を何故か鬼になりたての禰豆子が使えることが「無惨」に影響が大きいことが伺える)によりあと一歩に迫ります。
最後は那田蜘蛛山の戦いに応援に入った二人の柱(胡蝶しのぶ、冨岡義勇)のうち、冨岡義勇の水の呼吸・拾壱の型「凪(なぎ)」(炭治郎は同じ水の呼吸だが、型は拾までしかしらない)により消滅させられます。
アニメーションに涙なくしては見られない感動的なシーンは、神回といわれるほど人気が高いと言われています。その中で使われた「竈門炭治郎のうた」(元歌<中川奈美が歌った「竈門炭治郎のうた」は日本レコード大賞特別賞受賞>は下記リンクで)はとても印象的です。

4曲からなる交響組曲、その第3曲目。

中川奈美が歌った「竈門炭治郎のうた」リンク先:
https://www.youtube.com/watch?v=s7Oa39Tt4WE

4) 肆. 鬼殺隊
●3曲目最後のフェルマータの後、ほぼすぐに4曲目の冒頭へ(poco attacca:ほぼ続けて)
●106小節目(練習番号M前1)は小節カット
●107小節目(練習番号M)のHrs.は演奏カット
●1~24小節目(練習番号D前2) テンポは♩=75ca.で楽譜指示テンポよりやや速めに
●15小節目(練習番号C前1) rit.は二拍しかないのでかなり緩みます
●25~109小節目(練習番号M後3) テンポは♩=135ca.で楽譜指示テンポより速めに
●合せてほしい和音:<>は推定の音
・63小節目(練習番号H前2) D♭M7(1→3→5→7:D♭→F→A♭→C)
・109小節目(練習番号M後3) 1拍目 Cmsus4、(1→<3>→4→5:C→<E♭>→F→G)、2拍目Cm(1→3→5:C→E♭→G)

アニメ「鬼滅の刃」の第3話「錆兎(さびと)と真菰(まこも):鱗滝左近次の弟子だった男女の子供たち、入隊試験の時に鬼殺隊試験会場に放たれていた、鱗滝に恨みを持つ鬼に殺されていたようです。この二人の霊に導かれて訓練を重ね、大岩を断ち切ることが出来、入隊試験に臨みます」のオープニング後に「鬼殺隊」の紹介が入るシーンで流れる音楽です。この音楽が「鬼殺隊」のテーマとなります。
鬼殺隊は、人喰い鬼を狩る力を有した剣士、そしてその剣士を支える者たちが集まった、政府非公認の組織。そのルーツは1000年以上も前に遡り、大正時代における現在の構成員は数百名を超えるみたいです。

4曲からなる交響組曲、その第4曲目・終曲

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