見出し画像

風刺画から見る中東情勢 #10

前回、前々回同様に、今回も「風刺地図」についてお話ししようと思います。

地図上で色のついているアラブ諸国の説明は終わりましたので、それ以外の部分の説明を行っていきます。

トルコ:「世俗的カリフ国」
「世俗的(アルマーニー)」という単語と「オスマンの(ウスマーニー)」という単語が、アラビア語的に形/発音が似ています。かつてはカリフ制度をもったオスマン帝国として栄えたトルコですが、今や世俗的な国家となっていることを皮肉っているのでしょう。

ヨーロッパ:「約束の地」
約束の地とは旧約聖書に書かれれれいる、神がイスラエルの民に与えるとされる土地のことです。「約束の地」はナイル川とユーフラテス川の間の地域にあると考えられています、この「約束の地」の考え方を根底に、シオニズム運動、イスラエル建国へと繋がっていったわけです。しかし、そこでこの地図はいうのです、「約束の地」はヨーロッパであると!

バルカン半島:「通路」
地中海:「2つの天国のうちの1つへの道」
アラブ人の難民の中には、地中海を通ってヨーロッパの地を目指します。数年前、シリアの内戦が激しかったころは特にそういった難民が多くいました。彼らにとって、バルカン半島はあくまでヨーロッパへの「通路」。めざすべきは「天国」のヨーロッパです。もう一つの天国は、死後に審判の日を経て向かう「天国」のことでしょう。小さなボートにぎゅうぎゅう詰めで地中海を渡るわけです。生きて到達できれば「天国」へ。到達できなければもう一つの「天国」へ、、、。

先ほどのヨーロッパが「約束の地」であるというのも、この難民の文脈から解釈することもできるかもしれません。ユダヤ人が「約束の地」に移住しイスラエルを建国したように、アラブ人難民にとって「約束の地」はヨーロッパであると!

イラン:「ホスロー・イスラム共和国」
フォントがここだけ違い、ペルシャ語っぽく表記されています。イランの正式名称は「イラン・イスラム共和国」ですが、イランがホスローに変わってます。ホスローとえば、ササン朝ペルシャの王ホスロー1世などがいますが、ここではいったいどういった皮肉になっているのでしょうか、、。

イラン以東:「スタンランド」
イランより東にはトルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタンなどがありますから、まとめて「スタンランド」です。

カスピ海:「キャビア」
キャビアで有名ですから。

黒海:「ペリカン湖」
ペリカンが生息しているからでしょうか。

ロシア:「反資本主義枢軸」

紅海:「ナイル川」
どういう皮肉なんですかねえ。

アラビア海:「アラブ人の海であって、ペルシャ人の海ではない」

ペルシャ湾(アラビア湾):「陸からの侵略防止」
イランに攻められないための堀とういことです。

はい、これで地図上の表記はすべて説明し終えました。解釈にはIsam Uraiqatさんのツイートに対するリプライを参考にしましたが、まだ理解が曖昧なものがあります。またわかったら更新していこうと思います。

ちなみに、Twitter上でこの風刺地図に対するリアクションで、一番多かったものは、スーダン北のハラーイブ・トライアングルに関するものです。「なぜエジプトとスーダンの間の国境が直線なんだ!」、「ハラーイブ・トライアングルはどこだ?」といったスーダン人の方によるものと思われるツイートがよく目につきました。

ハラーイブ・トライアングルとは、スーダンとエジプトの間にある三角形の土地のことであり、現在スーダンが領土有権を主張していますが、エジプトが実効支配しています。やはりスーダン人にとって、このトライアングルが地図上でどちらの領土として表記されているかは、かなり重要なことなのですね。

この風刺地図からも、アラブ人の共通認識や常識のようなものが読み取れますが、この地図に対するTwitter上のリアクションからもアラブ情勢の現状が読み取れます。

今回で、3回にわたって紹介してきた「風刺地図」の説明を終わります!

それではまた!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?