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風刺画から見る中東情勢 #9

前回同様に、風刺画ならぬ「風刺地図」を読み解きます。前回扱えなかったアラビア半島周辺地域を今回は見ていきましょう。

・サウジアラビア:「New Las Vegas」
ラスベガスといえば世界一の歓楽街といったイメージですが、サウジがニュー・ラスベガスとはどういったことを意味しているのでしょうか。サウジの未来都市計画「neom」のことかなとも思いましたが、どうなのでしょう。あるいはサウジがメッカ巡礼を商業的に利用していることを、すなわち聖地をラスベガスのような人々を惹きつけかつお金を落としていくような場所として利用していることを皮肉っているということなのでしょうか。

(追記:9月16日 どうやら、2019年7月にサウジで開催されたJedda Season (Jedda world Music Festival)のことを言っているようです。サウジの掲げるビジョン30の一環として、サウジを世界有数の観光大国にすべくこのような規模の大きい音楽フェスが開かれました。招待されたアーティストも世界的に有名な方ばかりでした。このようにサウジは人々を引き付ける観光地として「ニューラスベガス」を目指すようであります。)

・UAE:「管制塔」
UAEの塔といえば、世界一高いブルジュ・ハリーファを連想させますし、また管制塔で飛行機といえばエミレーツ航空がありますが、そういったことを言っているのですかねえ。。他の国に内政干渉を行なっていることからも、他国を「監視」しているとも考えられますかねえ。。

・オマーン:「ユートピア」
これだけ情勢が不安定なアラブ諸国の中で、オマーンは安定しています。自然が豊かで、石油もある。そんなオマーンは他のアラブ諸国から見て、ユートピアなのでしょう。

・カタール:「アルジャジーラの首長国」
カタールといえば、アルジャジーラくらいしか思いつかない。他に何もない。

・バーレーン:「サウジアラビアの自由な市場」
自国でお酒を飲めないサウジアラビア人が、バーレーンまでお酒を飲みに行くとかいう話を聞いたことがあります。サウジアラビア人は、規制が厳しい自国ではできない遊びをバーレーンまで行ってするわけであります。

・クウェート:「クウェートは無し」
without Kuwaitと書かれています。

・イラク:「戦い(Irak)」
アラビア語的ダジャレです。「イラク(Iraq)」ではなく「戦い(Irak)」です。まさに今も内戦状態が続いているイラクは、Irakの真っ只中であるわけです。

・シリア:「アレッポとシャームのアサドの国」
あのイスラム国(ISIS)はシリアのラッカを首都としていました。ISISは「イラクとシャームとイスラム国(The Islamic State in Iraq and al-Sham)」の略です。今回のは、これをもじっているわけですね。シリアではアラブの春以降、体制側と反体制側の衝突が起こり、またそこにイスラム国や外国の干渉が入り込み、内戦/混乱の状態が続いていました。そうした混乱に乗じたアサド政権の反体制派に対する虐殺行為も指摘されています。イスラム国もアサド政権も同じようなものだという、アサド政権に対する批判でしょうか。

・イエメン:「イエメン・サイー ウド」
かつては貿易の中心地として栄え、「幸福のアラビア」と呼ばれたイエメン。そこから派生して「幸福のイエメン」という言い方もあります。「幸福のイエメン」はアラビア語で「イエメン・サイード」ですが、、、ここで「幸福の」を意味する「サイード」という単語はは途中で切れてしまい、「サイー ウド」となっています。ここから連想するのは「サウード」という単語です。「サウジアラビア」とは「サウード家のアラビア」という意味であるように、「サウード」とはサウジアラビアを指しています。すなわち、「サイード」という文字が途中で途切れているのは、現在イエメンは内戦が続き国内は”分裂”状態であるということを表しており、また「幸福(サイード)」が「サウード家(サウード)」となっているのは、その内戦にはサウジアラビアが干渉していることを表しているのでしょう。サウジアラビアがイエメンに内政干渉している目的が、サウジに都合の良い政権をイエメンに成立させることであるなら、いずれイエメンは「イエメン・サウード」になるのかも知れません。

・イエメンのソコトラ島:「8番目の首長国」
UAEは7つの首長国からなる連邦国家です。そのUAEがソコトラ島を狙っていることを皮肉っているのでしょう。というのも、ソコトラ島はガラパゴス島のように独自の生態系を発展させた島であり、珍しい木などが生えてます。その木をUAEが密輸しようとしていたことが、2017年に発覚しました。

・レバノン:「レバノン国 L.L.C.」
まるで会社名のように最後にL.L.C.と書いてあります。L.L.C とは合弁会社のことです。多宗教国家であるレバノンは、大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンナ派、国会議長はイスラム教シーア派から選ばれます。また国会議員の数も各宗派ごとに割り当てられています。そんな多宗教国家レバノンを合弁会社に例えているのです。

・イスラエル/パレスチナ:「オスロ」
もちろんオスロ合意から来ているのでしょう。

・ヨルダン:「USAIDからの送金」
USAIDとはアメリカ合衆国開発援助庁のことであり、アメリカはヨルダンにとって最大の援助国であります。というのもアメリカはイスラエルとの関係から地政学的にヨルダンを重要視しており、多額の援助を行なっているのです。

とりあえず、これでアラブの国の説明は終わりですが、まだ説明すべきと頃は少し残っっているので次回それを少し話して、この「風刺地図」は終わりにしようと思います。

それでは!

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