パレスチナ、船頭多くして船山に上る 風刺画から見る中東情勢#31
先日、来たるパレスチナ選挙に関するNote記事を書きましたが、引き続き最近も同件に関する風刺画がよく目につきます。
そんな中でアイデアが似ている(被っている)風刺画を見つけましたので、今回はそれらを取り上げたいと思います。
なお、前回の記事は下記の通り。
15年ぶりにパレスチナの議長選が行われるということ。また注目が集まっているのは、この選挙は対立しているファタハとハマースの和解や統一に繋がるのか?といったところでした。
(両者の対立は、前回の議長選の後にハマスがガザ地区を武力で実行支配したことに始まり、それからハマース(ガザ地区)とファタハ(西岸地区)に政治的支配は分離しています。)
そしてまた、何より両者の和解が難しいことであると認識されているということでした。
今回も、ファタハとハマースの対立を示唆した風刺画ばかりです。
まず一つ目の作品。
タイトルは「パレスチナ問題」。
ロンドンのAl Quds Al Arabi紙に掲載されている、ヨルダン人風刺画家Osama Hajjaj氏の作品です。
パレスチナ*の形をした”いかだ”には舵が二つ付いており、それらは”いかだ”の正反対の両端についています。
*正確には現在のイスラエル占領地+ガザ地区+西岸地区ですが。
二つ目の作品です。
出典:Al Arabi Al Jadeed 2021.2.26
タイトルは「パレスチナの分離」
ぱっと見、普通の車かな?と思いきや、よく見るとハンドルが二つ、バックミラーが二つ付いています。つまりこの車には運転席が二つ。
ナンバープレートには「パレスチナ」の文字です。
こちらはロンドンのAl Arabi Al Jadeed紙に掲載の、Sa’ad Al Muhandi氏の作品でした。
上で見た二つの画が示しているのは、日本語で言うところの「船頭多くして船山に上る」に近いことではないでしょうか。
パレスチナには今二つのリーダー(ファタハとハマース)があり、それらの進める方向は真逆である。また選挙によるパレスチナの統一は難しいことが示唆されていると考えられます。
とはいえ、両者がそれぞれ目指すところというものがいまいち把握しきれていないのですが、これから選挙が近づくにつれそれぞれの政策など明らかになっていくのではないでしょうか。
まだ議長選の候補者は明らかではないのですが、次の記事によると下記の人物名が挙げられています。(名前は記事から参考、その他情報はWikipediaなどから。)
参考、出典:Al Arabi Al Jadeed 2021.1.25
ハマース
・イスマーイール・ハニーヤ
現ハマース党首(2017~)。通称”イブン・ガザ(ガザの息子)”。
・ハーリド・マシャアル
前ハマース党首(~2017)
ファタハ
ファタハには下記の人物を中心とした5つの派閥があるようだ。
・マフムード・アッバース
現パレスチナ自治政府第二代大統領。PLO執行委員会議長。
・マルワーン・バルグ―ティー
第二次インティファーダの指導者。
5つのの終身刑でイスラエルで服役中(2002~)。
過去の世論調査でNO.1人気パレスチナ政治家。
・ムハンマド・ダハラーン
元ファタハのガザ地区指導者。英語、ヘブライ語が堪能。
アラファト初代大統領の毒殺に関わったと批判されファタハから追放。
現在はUAEに在住。UAEとイスラエルの国交正常化の仲介を行ったとも。
・ナーセル・アル=クドゥワ
ファタハ中央委員会。
アラファト初代大統領時代のパレスチナ自治政府外務大臣。
・タウフィーク・ティラーウィー
ファタハ中央委員会。
ジェリコのイスティクラール大学を設立。
これに加えて、ファタハではパレスチナ首相のムハンマド・シュタイエも有力候補となってくるでしょう。
また次のビデオは2020年の世論調査の選挙結果ですが、やはりマルワーン・バルグ―ティーの人気が高いです、
引き続き、パレスチナの議長選には注目です。
それでは。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?