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クサガメ問題

日本で最も有名な淡水ガメの1つであるクサガメが問題になっています。今回はこのクサガメ問題を整理してみました。


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上の写真はみんな大好きクサガメ君 です

(ちなみに私はイシガメ派です)


クサガメ (Mauremys reevesii) は中国や韓国から日本の広域に分布しています。


このクサガメですが、近年の日本において、ある問題が認識されるようになってきました. 


これまで在来種と考えられてきたクサガメですが, 実は韓国及び中国からの移入種なのではないかとの考えが有力なったため、近年になり問題視されるようになりました. 


クサガメの外来種説に関しては以下で整理しています



日本におけるクサガメ問題

クサガメが引き超す問題として, 在来生態系への影響農業被害が挙げられます. 生態系への影響としては, 同属 (Mauremys) である日本固有種ニホンイシガメ (Mauremys japonica) との交雑や資源競争に関するものと, 在来餌生物への影響が挙げられます. 農業被害に関しては, レンコン (ハス) の食害が挙げられます (ただし, 別の外来種ミシシッピアカミミガメほどは問題視されていません).

ニホンイシガメに与える影響としては, 遺伝的なアプローチより, 野外においてクサガメとニホンイシガメの交雑化が生じていること, 交雑個体に稔性があることが明らかにされており, クサガメ問題の中でも特に重大な問題であると認識されています. この点に関しては, 上のサイトでより詳しく問題点を整理しました.

一方で, クサガメが在来餌生物に与える影響は, 全くと言っていいほど認識されておりません. これまでに, クサガメが植物質から動物質までと幅広い分類群の餌生物を捕食する雑食性を示すことが報告されていますが, この幅広い食性幅と在来生態系への悪影響を関連付ける人はあまりいませんでした. 

これはおそらく, クサガメが外来種であると考えられるようになったのが比較的最近のことであること (有力視されるようになったのが), 以前までクサガメが保全対象とされてきたため, あまり外来種として扱いたくない人が少なからずいるためだと思います (個人的な見解です).


 可愛いクサガメにはファンが多いですからね 


それでは一体, どのような餌生物が特に悪影響を受けているのでしょうか.

 

クサガメの食性の特徴として, 雑食性を示す一方で, 特に淡水の貝類を好んで捕食すると報告されていることから, 日本に生息する淡水貝の多くの種が捕食されている恐れがあります. クサガメは溜池, 河川や水田環境などの幅広い環境に生息することが出来るため, 多くの環境において貝類を減少させているかもしれません. 


中でも, 水質の浄化作用のある二枚貝類 (例えばシジミ類) も食べることから, 二枚貝類を捕食して個体数を減少させることで, 間接的に水質悪化に繋がっている恐れがあります. それから, 最近では, タナゴ類などの産卵母貝である二枚貝類の稚貝を食べて個体数を減らすことで, タナゴ類の減少にも繋がっていたりしないのかなぁと妄想したりもしています. 


また, タニシやカワニナなども捕食することから, これらの生物を餌とするホタルなどの水生昆虫を間接的に減少させていたり, 直接的にこれらの水生昆虫を捕食して個体数を減少させているかもしれません. 


しかしながら,  現在までに, 日本におけるクサガメに関する研究は進んでいるとはいいがたく (個体群構造, 生息地利用, 大まかな食性のリスト化など), どのような餌生物をどの程度捕食し, どのくらいの在来餌生物の減少に関与しているのかは全く分かっていません 


これは日本において, ニホンイシガメの保全生物学的研究やミシシッピアカミミガメの防除対策に関する研究が多く進められる一方で, クサガメを対象する研究を進めている人が明らかに少ないためだと思われます.


今後, クサガメを対象とした (早急な) 防除対策の必要性を提示するためにも, そこまでクサガメを管理する必要はないよと意見する際にも, クサガメが在来生態系に与える影響を定量的に評価することは必要不可欠です. 


逆に言うと, クサガメの基礎的な研究や, クサガメが在来生態系に与える影響に関する知見が不足していることから, 今なら誰でもやりたいことが何でもできると考えることもできます. 


クサガメファンの皆さん, 今ならクサガメはやりたい放題ですよ


絶滅危惧種となってしまった韓国や中国ではできないようなことがたくさんできると思います. 日本だと多くのサンプルが簡単に手に入るので.


 私はイシガメ派なので, どうしようか迷い中ですが


ではでは


ちなみに, 外来種とされるクサガメであっても駆除してしまった際に別の問題が生じる恐れもあります. この点に関しては, 別の機会にまとめます.





カメは売らずにカメでお金を稼ぎたい。そんなお年頃です。