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「即効性のあるもの」を信じない

マーケティングの仕事をしていると一日一回は聞く言葉、「Z世代」。どこまで正しいかわからないが、この世代の若い方々は「石の上にも三年」という考え方が好きではないと聞く。

三年も自分の意に沿わない仕事をする我慢が無駄だということらしい。三年どころか、三カ月も続かないという話もある。


ここでは、その是非については問わないが、僕がこのような話を聞くたびに思うことは、我慢せずに簡単に会得できてしまう仕事に、何も魅力を感じないということである。

たった数ヶ月で学べてしまう仕事のやり方が、長い長いビジネス人生において通用し続けるとは思えないのだ。


また、我慢の期間がないままに即戦力となってしまう会社に対しても、それって大丈夫かと思ってしまう。

即戦力として一年目から活躍可能と聞いて、新人の方は力が湧くかもしれないが、二年目になったときに、新しい即戦力に取って代わられる存在になりはしないだろうか。

若手から活躍できますという触れ込みの会社では、中堅になった時に仕事が無くなってしまうのではないのか。


深読みし過ぎかもしれないが、短期で学べる仕事や、短期で活躍可能な会社には、何か裏があるような気がしてならないのである。


これは同様に、読めばすぐに人生が変わる系の自己啓発本だったり、すぐに文章が上手くなったりするHow To本に対しても、かなりの疑問を持っている。

仮に本を読んで開眼し人生が拓けたとして、それが長続きするものなのだろうか。誰もが読んだだけで習得できるようなHow Toなどは、すぐに皆が使い出して、あっという間に古びてしまうのではないか。


仕事も生き方も文章力も、試行錯誤と継続の果てに、時間をかけて自分に定着させるものだと僕は考える。

自分しかできないことを見つけ出していくことが、プロフェッショナルへの道だと僕は信じる。そして長くプロとして活動するためには、他者と比較しての優位性を確立しなくてはならない。

だから僕は、即効性を謳うものよりも、時間がかかることに価値があると考えている。時間や手間暇をかけることで、容易には真似できない技術や考え方を習得できる。それは唯一無二の武器であり、一朝一夕に得難い強い個性となるのではないだろうか。


ところで、主にネット界隈の文章を読んだり、動画を見ていると、「今の自分で十分」といった考え方が披露されることがある。「最初から誰にでも才能があって、それが発揮できていないだけ」という言説である。

僕はこうした安直なアドバイスも好きではない。

たしかに、今の自分で良いと言って貰えるのは嬉しいし、今のままで人生が輝いてくれるのならば話が早い。けれど実際には、今の自分を肯定しながらも、具体的な努力を始めなくてはならない。

そして、自分を信じ続けるために、自分を嫌いにならないように、継続的な行動力が求められる。


突然才能に目覚めて、それで生涯安泰などということは断じてない世の中だ。自分のことをしっかり考え、自分のためになりそうなことをコツコツと積み上げていくしか手はない。


即効性ではなく、継続性に、僕は活路を見出したいと思うのである。

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