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誇張もダメ正直もダメ、率直な物言いで信頼関係は醸成する。

社会に出て営業一筋だったこともあり、交渉とか駆け引きなどの場面にいつも立たされてきた。営業先(=社外)との交渉だけでなく、それは社内においても行われた。むしろ社内の調整の方がずっと手強かったりする。

物事が決まるためには、誠意あるプレゼンテーションをして、その結果を享受するのが真っ当なやり方だが、実際の営業の現場では、そうした綺麗ごとだけでは物事は動かない

商品力やプレゼン能力で大きく結果は決まるものだが、最後の最後のツメだったり、試合に負けても勝負に勝つようなどんでん返しは、泥臭い駆け引きや交渉がモノを言う。

一般的なビジネス書では、そうした泥臭い部分は語られず、プレゼンテーションの極意だったり、資料の作り方だったり、マーケティング方法など、陽の当たる分野が語られている。

実際の泥臭い営業方法などは、再現性が無いせいなのか、あまり手引書にはなっていないような気がする。


僕自身、それほど商品力の強くない会社の営業マンだったこともあり、まともな手段だけでは、ライバル会社に競り負けてしまったり、条件も悪いものが突き付けられたりしていた。

その中で会社が求めるものを、対外的に交渉して成果を得なくてはならない。これには、綺麗な表紙のビジネス本では対応できないと認識してきた。

このような状況下で、先輩や同業他社のやり方を真似たり、独自の試行錯誤を繰り返すなどして、20年以上も悪戦苦闘してきた。これだけ長く一つの仕事を任せられたことは、それなりの結果を出してきたからだと前向きに受け止めている。


それでは、僕はこの間、何をしてきたのだろうか?

これまでもこのnoteでは、いくつかの営業的な考え方を書き出している。本稿では僕自身が身上としてきた「物事を率直に伝える」という点についてまとめてみたいと思う。

営業はきれいごとだけではなく、泥臭い攻防があるということを書いたが、その上で、率直に物事を伝えるとはどういうことなのか。


まずは「率直に伝える」の反対をまず考えてみる。

「事実をぼやかして言う」「誇張やハッタリをする」「遠まわしに察してもらう」「泣き落として同情を買う」・・・と、そんな感じだろうか。

それぞれ有効なテクニックであることは認めつつ、本当にこちらの真意が伝わらない可能性がある。またテクニックで一時的にうまくいったとしても、それが何度も通用するほど甘い世界ではない。

そもそも誇張したり真実を捻じ曲げて伝えたことによる成果に意味があるのだろうか? 短期的な売り上げにはなるが、売られた方が次に買い物をしてくれるだろうか。最悪な場合、ニセモノだと訴えられる可能性もある。


率直と正直は違う

かといって、率直な物言いで、他社と比べて弱い商品を買ってもらえるだろうか。率直な物言いといっても、弱点をひけらかすことをしてはさすがに商売にはならない。つまり正直に全部語ることはあまり意味がないと考える。

正直に事実を伝えあって結果を出せればそれに越したことはないが、実際には本音と建前が必ずあって、表立って見えないビジネス上の立場や各々が課せられた使命がある。

僕が率直に話したい部分は、実はそうした本音だったり隠された使命を明らかにすることである。

弱い商品を「弱いですよ、でも買ってください」では結果を出すことは難しい。そうではなくて「今回はこの点において御社の狙いに合致しますよ」と申し上げる。弱点にはことさら触れない。合わせて「こちらとしては、まず導入してくれれば良いです。それが僕のミッションです」と本音(らしきもの)を伝えるのがダメ押しとなる。


僕の思う「率直な物言い」とは?

僕が思う「率直」とは、互いのメリットをきちんと伝えあいましょうよ、ということである。その時に正直に弱点を公にしなくてもいいし、虚勢を張る必要もない。互いに結果を出すためにはどうするかを考えて、それを包み隠さずお伝えすることだ。

特に単発的ではない取引先である場合、毎回互いのメリットを模索する作業をすることで、信頼関係はあっと言う間に醸成される。上っ面ではない、本音ベースをきちんと引き出しあって、本当の意味で握り合う。

率直さが失われると、発言内容が場面ごとに揺らいで、中長期的に信頼を無くすことになる。


長く営業をやってきた、やってこれたことの要因として、率直な本音ベースの語り合いを毎回毎回行って、揺らがない信頼を勝ち取ってきたことが大事だったと今では振り返ることができる。

ただ一点注意したいのは、本音ベースの語り合いをする関係を作ることは、一朝一夕にはできないという事実である。時にはプライベートもひけらかし、好む本・映画・音楽を明らかにし、飲み会をして、お茶をして、雑談をして、ゴルフをして、麻雀をして、じっくりゆっくりと関係を醸成していく必要がある。

そういう関係を築く作業において、誇張やはったりや婉曲表現は邪魔となる。また、何でも正直にしゃべってしまうことも逆に信用を損ねる。取引先とは親しくすべきだが、別に友だちになる必要もないからだ。


誇張でもなく、正直でもない。率直な物言いこそが、ビジネスにおいて大事なことではないかと強く確信している。

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