見出し画像

エンタメビジネスの三段活用

主にエンタメ業界におけるモノ作りにおいては、下記3点の活用が欠かせないと考えています。

①リソースの活用
②人材の活用
③データの活用

まず①リソースの活用ですが、ここでは自社IPや過去のライブラリーの活用を指すことにします。

ゲーム業界などでは顕著ですが、一度ヒットしてタイトルがユーザーに浸透した作品は、次々と続編や派生商品が作られていきます。過去の名前で食っているわけですが、常に新しい仕掛けを加えていくことで、新鮮さを保ち続けることが大事となってきます。


②人材の活用ですが、これは外部のクリエイターだけではなく、クリエイターの力を最大限に引き出す自社のプロデューサーや編集者の活用を念頭に置いています。

ものを生み出すのは、何より人(クリエイター)の力によりますが、その力を継続的に引き出していくためには、ビジネス面でアドバイスできる人材が絶対に必要なのです。


③データの活用は、消費者・ユーザーの動向を市場調査などでリサーチし、集まったデータをもの作りに反映していこうという話です。リサーチ自体は誰でもできますが、これを分析、解析するのは人の力だったりします。


以上3点がヒット商品を呼び込む、重要かつ必要十分条件だと考えています。もう少し詳しく考えていきます。


①リソースの活用

エンタメコンテンツの創造には、常に新しいチャレンジが求められていますが、新しさはリスクでもあります。いわゆる固定ファンがない0ベースの商材を受け入れてもらうためには、お金も時間も運も必要です。新規案件を毎回立ち上げていくのは大変に困難ですし、経営的リスクも伴います。

そこで、フランチャイズ化、シリーズ化、既存のIPの活用などを新規作品の開発と並行させることで、経営的リスクを軽減させることができます。逆に、固定ファンが確立しているものであったら、コケる可能性も低くなるので、新しいチャレンジを潜り込ませることができるかもしれません。

最近の例ですと、公開したばかりのマーベル作品「シャン・チー」がそうしたシリーズ化と新規試みを組み合わせたプロジェクトではないかと思います。マーベル映画ファンは全世界にいるので、一定の集客は約束されています。そのベースがあった上で、まだほとんど知られていない主役・監督・コミックを用いた作品作りを行っています。

どうしても過去作のリソース活用は後ろ向きのイメージがあるのですが、うまく活用すれば、新しい鉱脈を見つけ出すことができると思われます。


②人材の活用

世の中には才能溢れるクリエイターは大勢いらっしゃいます。けれど、まだ世に出ていない新人であれば誰かが引き上げなくてはなりませんし、ベテランに対しては新たな創作意欲を吹き込む必要があります。常に才能には、それを支える人材が必要なのです。

もちろん、自分でプロデュースできる才能の持ち主もいます。けれど、長い目で見たときに、ひとりで延々と活躍できるかと言えば、ほんの一握りの方を除いていないと思っています。

有名な例で言えば宮崎駿監督と鈴木敏夫プロデューサーが挙げられます。宮崎駿というとてつもない才能があっても、それを活かして事業化させていくためには、鈴木氏のような対外的に交渉できる人間が必要なのです。

エンタメ業界にいると、こうしたクリエイターの力を引き出す人間が必要なのは誰もが実感できます。ですので企業としては、もしくはチームとしては、プロデューサー・編集者となる人材を養成していかねばならないのです。


③データの活用

自分がマーケティングの仕事をしているせいかもしれませんが、何かを判断したり、全体的に集団を前に進めるためには、行動の根拠となる科学的なデータが必要なのではないかと感じています。

エンタメとは違いますが、例えば新しいカップ麺を作る場合に、今のトレンドだったりブームだったり隠された需要だったりは無視できません。小売り価格・原価・開発スピード・地域差・食全体のブーム・ラーメン業界のトレンド等々、考えたり計算しなくてはならないパロメーターが山ほどあります。

その時に、例えば地域ごとの味付けのデータ、性年代別の需要、現在の売れ筋などがリサーチできていれば、それに基づいた商品開発ができると考えています。

なんとなく健康ブームだから健康ラーメンを作ったとしても、健康に気にするひとはそもそもラーメンを食べないかも知れません。世帯年収別での売れ筋を把握しておけば、実は安いから売れるわけではない、といったデータを導いて、多少高めでもブランドできるものを開発しよう、という流れが作れるかも知れません。

データを集めて、それを検証することで、ある程度の確信を持って行動に移せると考えております。最初に方針も固まるので、プロジェクトが進行中にブレることも少なくなります。

ただし、データの扱いは恣意的にもなりうるので、データを活用するマーケターは、それなりの人材でなければならないと思っております。


①リソースの活用
②人材の活用
③データの活用

上記三点の活用、名付けて「エンタメ三段活用」について論じてきました。この3点を突き詰めれば、エンタメ創造には人材が命という結論になるかと思います。

僕自身を振り返れば、この業界に20年以上も一線で働けているのは、とてもラッキーなことです。けれどその一方でまだまだ全然思いが果たせていない忸怩たる思いがあります。本稿をきっかけに、さらなる精進を肝に銘じて筆をおくことにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?