パーマン仲間の大パーティー!『特大クリスマス』/藤子Fのベスト・クリスマス①
藤子F先生は数多くのクリスマスをテーマにした作品を書いていますが、実は幾つかの得意パターンがあります。
得意パターンの一つめは、貧しい家庭の一夜の奇跡、というお話。
もう一つは、主人公がサンタとなって夢をなくした子どもたちにプレゼントを配るというお話。
もちろん変化球もありまして、全てこの二つに整理できるものではありません。
貧しい家庭での奇跡パターンの作品としては、エスパー魔美の「エスパークリスマス」、新オバケのQ太郎の「サンタとよっぱらい」、ドラえもんの「重力ペンキ」などがあります。
主人公がサンタになるパターンでは、ドラえもんの「サンタメール」、バケルくんの「バケルくん、サンタになる」、新オバQの「サンタはいるんだよ」などです。
変化球としては、パーマンの「特大クリスマス」、バケルくんの「サンタのおくりもの」、オバQの「サンタは苦労する」、エスパー魔美の「魔美をおくります」などがあります。
余談ですが、サンタクロースを、サンタ苦労す、と読み替えたギャグも好きで、何度か出しているネタとなっています。
さて本日は、クリスマスエピソードのランキング3位の発表です。
前回の稿でリストアップした作品を色々読み直しているうちに迷いだしまして、なんとかベスト3を決めたのですが、はっきり言って順不同の面白さです。今の気分とお考え下さい。
さて栄えあるベスト3位は、パーマンから「特大クリスマス」です。
「特大クリスマス」
(「小学四年生」1967年12月号/藤子・F・不二雄大全集4巻収録)
パーマンの魅力はいくつもありますが、一つにパーマン仲間5人の友情があります。あれ、5人もいたっけ?という反応もあるかと思いますが、最初の連載時には、パーマン5号=パー坊という仲間がいて、これは後のリバイバルに当たって存在を消されてしまった幻のキャラクターです。
パー坊の話題はまたいずれ、回を改めて詳しくご紹介します。
今回の「特大クリスマス」は、特別の事件が起こるわけではなく、むしろ何も起こりません。パーマン仲間たちが集まってクリスマスパーティーを開くだけのお話なのですが、なんかいいんです。仲間に入りたいなあとすごく思わせる感じがあります。
冒頭、パー子が巨大な星飾りを持ってパーマンの部屋に入ってきます。そこでのパー子のセリフが振るってます。
「クリスマスツリーつける飾りよ。
あたしたちパーマンでしょ。
だからうんと大きいのを作って盛大にクリスマスパーティーを開きたいのよ」
仲間の連帯を感じさせる好印象の始まり方です。さっそくパーマン仲間が集まり、特大のクリスマスを企画、役割分担をします。パーマン1号は会場と木、3号はケーキ、2号と5号はツリーの飾り物を用意することになります。
「さあ忙しくなったぞ」と、パーマンの嬉しそうな表情。
会場と木は、学校の裏山にすぐ決めて、飾りつけを探します。学校から玉転がしの張り子、ポチの犬小屋、サンタクロース人形の代わりに、サンタのサンドイッチマンに気にぶら下がってて欲しいと申し出て怒られます。
集まってきた飾りを会場に運びます。潰れた店から貰ってきたサンタの看板、みつ夫の布団から勝手に抜き出した綿、そして洗濯物も飾り出します。
パーやんは実家のお寺から巨大なローソクを持ち込み、寺の子がキリスト誕生を祝うのか、という突っ込みに対して、「誰の誕生日でもめでたさに変わりないよ」とどこ吹く風。
いい感じなのはここまで。
ケーキはおから。2号がどっさりのお菓子を持ち込みますが、動物園のお客が投げ込んだもので、ガムのかすやイモの皮なども含まれているのを見て、他のみんなは遠慮するわとテンションダダ下がり。
ごちそうもない、外で寒いとなって、パーマン仲間での言い合いに発展しかかりますが、そこにクリスマスキャロルの音が聞こえてきます。
その先にはご馳走がたくさんと、サンタからのクリスマスカードが添えられています。なんか怪しいと思ったところで、みんなの欲しかったおもちゃが空からたくさん降ってきます。
そこに、「諸君遠慮なく受け取ってくれ」と、サンタの衣装に扮したスーパーマン(バードマン)が現れます。
それはスーパーマンが、パーマンたちに用意したクリスマスプレゼントだったのです。そして最後は、パーティーの一コマで終わります。
お話としては、本当に他愛のないもので、考察するような要素もありません。ただ、パーマンになって良かった、という恩恵溢れる展開が心に沁みます。作品自体が、読者へのクリスマスプレゼントのように感じられます。
こういう軽いお話も描かれているところに、パーマンの魅力を覚えるのです。
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