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自己分析なんてそんなもの。

就職活動時、ESを書き出す時に、事前に必ずやっておけと言われる「自己分析」。今ではどこまで重要視されているかわからないが、僕がシュウカツしていた25年前には、それは必須科目だった。

けれど20歳そこそこの男子学生が、改まって自己分析・・自分とは何者だなどと考えても、出てくる答えに目新しいものが含まれている訳がない。

田舎で小中高と過ごし、上京して大学に入り、適当に授業を受けて、アルバイトに精を出して、友だちとお酒を飲んだり旅行したりするだけの日々に、自分独自の事柄などがあるはずもない。

それでも、急に来年から働く場所を見つけるのに、突如自分とは何者かを「分析」しなくてはならないという。

感覚的にも実質的にも、その作業はまるで意味のないことのように思えたものである。


自分とは何者か。あれから25年経っても、明確な答えは出せていない。ただし、年を取った分、相手の求めている「自己分析」を披露することはできる。

例えば上司との面談、部下からの相談、同僚との愚痴などにたいして、自分の培ってきたキャリアや、志向、今の組織内の立場などを勘案し、自分はこういう人間であると、通り一遍に語ることができる。

けれど、それはあくまで仕事における、ある角度からの「自己分析」に過ぎない。


今日、最近の飲み疲れから、日中に本格的な昼寝をした。少し遅い昼食の後、血糖値が上がっていく感覚を覚えて、フラフラと布団に吸い込まれていった。

ちょうど二時間くらい寝ただろうか。暇を持て余した子供が体の上に乗っかってきて、ほぼ強制的に眠りから目を覚ますことになった。

そして妻が言う。本格的に寝ていたね、と。その証拠にいびきをかいていたという。

妻や子供からは指摘されるが、僕はどうやらいびきをかく人間であるという。しかもかなりの音量だという。

それはとても信じがたいことである。確かに親父はいびきをかく人間だったけれども、まさか自分もそうであるとは・・。あまり実感が持てない。

けれど、複数の他者が同じことを言うのであれば、それは信じなくてはならない。先ほどの話に照らし合わせれば、自己分析の一つに組み込まなくてはならない。

僕は本格的に眠りにつくといびきをかくタイプです、と。


自分とは何者なのかと、いきなり迫られることがある。けれど自分の全てを知るのは大変に難しいことだ。それを語るのはさらに困難である。

なのでひとまずは、「お前は何者か」と質問してくる人に対して、相手が喜びそうなことだけを言えば良いのではないだろうか。

積極的な人間を求めているのなら、活発に行動してますとアピールする。丁寧な人間を求めているのなら、慎重に物事を勘案するタイプですと主張する。

具体的なエピソードを加えてあげれば、もう完璧。相手は、本当の僕の事など深掘りせずに、そういう人間なんだって思い込んでくれるはずである。


僕は本格的に眠りにつくといびきをかくです、昨日も妻に指摘されました・・・。そんな風に答えて、ウソだろ~なんて誰も思いません。そんなものなのです。



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