ものづくりナメるなよ
僕には書きたいことがあります。
僕の書いたレビューを通じて、藤子作品から何か一つでも新しい発見してもらいたい。藤子Fノートの主たる目的はそこです。
普段読み飛ばしてしまう漫画には、実はその奥に豊潤な世界があります。書かれた時代の社会背景や、作者の思いがあります。短い作品の中にも、隠された工夫や凝った構成があります。
マニアだからこそ気がつくことがあります。
それをできる限り掬い取って、分かりやすい言葉と文章に置き換えていきたいと思っています。
ファスト動画が話題となりました。動画作品に関わらず、コンテンツが斜め読みされて、あっという間に消費されています。
コンテンツ、つまり作品を生み出すためには、とてつもない労力がかかります。ゼロからイチを創り出すためには、冗談ではなく、命を削らねばなりません。
ものづくりは簡単ではないのです。
斜め読み、早送り…。それで時間は多少短縮できるでしょうが、それでは得られないものがあります。
僕が全てのコンテンツを解説・考察していくことはできませんが、愛する藤子作品なら可能です。
知識量や、研究量はもっと上の方が大勢いらっしゃいますが、全作品を網羅した解説を試みようとしている例はなかなか稀有かと思います。
そこに僕の存在意義があると考えています。
藤子作品のレビューを書くたびに、僕自身、新発見があります。たった一コマ、一つのセリフに魂が込められていることに気がつきます。
僕はそれをできる限り、浮き彫りにしたい。そう思って、藤子レビューをコツコツ続けています。
僕はたまたまエンタメコンテンツの業界にいますが、この世界の住民であっても、ものづくりをナメている人が大勢います。
簡単に作れると思っている人、これ暗いですねとか難しいですねなどと印象だけ言う者、こうしないとヒットしませんと安パイを押し付けてくる輩。
世の中に響き渡るコンテンツを創り出すには、そんな誰でも言えるような事を言っていても駄目です。クリエイターたちに寄り添って、ゼロイチの創作に心血を注いでいかなくてはなりません。
真剣に作り上げたものしか、ユーザーや消費者には届いていかないのです。
藤子Fノートを始めて、藤子F先生の偉大さを知る日々です。心血を注いでエンタメを作ることの、素晴らしさ、楽しさ、無謀さを感じとっています。
エンタメコンテンツを作る側に蔓延(はびこ)る、真面目なモノ作りへの軽視。
消費する側に蔓延(まんえん)する、ナナメ読みを肯定する言論。
届ける側にも、受け取る側にも、ものづくりへの敬意を失っている人々が増えているのではないかと、本気で危惧しています。
僕にとって、藤子作品のレビューを書くことは、単なる趣味だと考えてきました。けれど、何百本もの記事を書いていく中で、藤子先生の創作にかける決意を肌で感じるようになり、自分の中での位置づけが変化しています。
レビューを続けた結果、創作への敬意が深まってきているのです。
それはそのまま、今自分が生業としている「エンタメコンテンツを贈り届ける」という仕事にも影響を与えています。
作り手側としては、本気で良いものを作りたい。そしてきちんと届けたい。
受け手側としては、本気で読み解きたい。そして心に留めたい。
そうな風に思うようになりました。
ものづくりナメるなよ。
ものづくり軽視の世の中に対して、そう叫びたい。
これはもちろん、仕事慣れしてしまっている自分自身への戒めでもあります。
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