見出し画像

よく食べるが基本なのだ

「食欲」と聞いて思い出すのは、映画にもなっている奥田英朗の小説「サウスバウンド」である。作中、成長期に差し掛かった長男・二郎がとてつもない喰いっぷりを披露しており、これが強烈なインパクトを残している。

二郎は、朝昼晩とたっぷり食べるのに、間食も止まらないし、夜もバクバクと食べ続ける。食べても食べてもお腹が減って仕方がないのである。

かなり大袈裟な大食いの様子が描かれているが、ここまでではないものの、成長期の男子ども(女子もかな?)は、一日中空腹と戦っているのである。これは僕の経験でも違わない。

僕の場合だと、朝食と昼食の間にお弁当を食べてしまったり、放課後、帰宅前に買い食いし、家に帰ってもおやつを食べて、夕食もがっつり食べて、さらには夜食にも手を出したりしたものである。

「サウスバウンド」の二郎は、気持ちの良いくらいに大食漢な少年であるが、どこか僕自分にも重なるところがあって、今でも「食欲」のことを考えると浮かんできてしまうキャラクターなのである。


さて、ここ数週間、見事に食欲を無くしていた。17日連続連勤中は昼夜がお弁当という生活だったので、仕事に区切りがついたので、いよいよ外食などを楽しもうなどと思っていた矢先に倒れて、いきなり食欲を失ってしまっていた。

僕は、基本的に多少具合が悪くとも、いつも通りに食べることを信条としていて、家族にもそのように認識されているが、今回は不思議と食べる気が湧いてこなかった。それよりは寝ていたいという体のサインが出ていて、食べることは二の次となってしまったのである。

具合はどんどんと悪くなるし、夜も眠れなくなるので、いつのご飯も徹夜明けの食事という感覚となって、全く箸がすすまなくなった。そうしてほとんど食べることのできない状況へと追い込まれていったのである。

ダウン寸前で病院に行った帰り、その日もおにぎり一個しか食べてなかったので、駅に備わっていたはなまるうどんに駆け込んだ。一番量の少ない「小」だったが、これが全くお腹の中に入ってくれない。

なんと半分食べたところで残してしまい、そのまま帰宅することにしたのであった。こんなこと、普段では想像もつかないことである。体調が深刻に悪いと食欲は全く無くなるものだと、初めて分かった。


さて、そんなことですっかりやせ細ってしまったが、一昨日あたりから急激に食欲が湧き出ている。食べても食べてもお腹が空いてしまい、ご飯は基本お代わり必須となっている。

もちろん、胃も細くなってしまったので、ガツガツと健康優良児のように量は食べられなけれど、食欲は完全復活である。何か失ったもの取り戻すかのように、ご飯を食べたくて仕方がないのである。

食べ始めると、いきなり健康そうに見えてくるから不思議なものである。自分としても急に血色が良くなったように思える。元気に向かって一歩足を踏み出した気分である。


昨日病院で主治医に「どのように安静にしていましょう」と質問をしたら、「良く食べて、良く寝てください」という答えであった。なるほど、食べるが全てにおける基本なのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?