評論家になるな
僕は営業部門を長く務めた後、マーケティング部門に異動となりました。
営業時代は、常に最前線に立って、マーケットを歩き回り、取引先と丁々発止をしてきました。難しい交渉をものにしたり、ウィンウィンの結果を残したりといったやりがいも感じてきました。
一方、マーケティング業務は主に数字やデータを扱い、フラットな視点で分析をしたり、作戦を練ったり、方針を立てる仕事です。これはこれでやりがいを覚えますが、一歩引いた立場になりがちな仕事だとも感じています。
どうしてもアドバイスや指示を出す役割が多く、これだけを続けていると現場から離れた評論家になってしまうのではないかという危惧を覚えます。
やはり第一線で戦い続けることで、生の情報を得たり、交渉術を磨き上げることができますし、現場で踏ん張り続けることで、人脈を形成したり、金脈を掘りあてたりすることができるのだと思います。
なので、最前線での格闘と、現場から一線を引いた立場での判断という、まるで違う役割を同時に成し遂げることに腐心しています。
ところで、僕が心の中で「パワポおじさん」と呼んでいる上司がいます。この人は、いかにもビジネス書を読みこんできたかがわかる資料を作成できる方です。
分かりやすく凝ったパワポ資料ではあるのですが、不思議と人の心を打たない作りになっています。いかにも評論家が頭で考えた机上の空論のように見えてしまうのです。
これは感覚的になるのですが、パワポおじさんが、一生懸命に現場で汗をかいた跡だったり、行動する人の感情が込められてないからだと思っています。パワポおじさんの美しい資料を見るたびに、皮肉にも人を動かす難しさを痛感します。
組織では、方針を立てる人がいて、その方針に沿って動く人がいます。リーダーとフォロワーと言い換えてもいいかも知れません。
リーダーは人を動かす仕事ですが、例え立派な方針があったとしても人は動いてくれません。人を動かすためには、まず自分自身が先んじて行動し、結果を残すことが求められます。
リーダーは、フォロワーの現場での格闘に対して、懸念点を強調したり、ダメ出しするのが仕事になってしまいがちです。いわゆる評論家仕事です。
けれど、リーダーが評論家と思われたら、そのチームはかなりまずい事態に追い込まれます。「じゃ、お前やって見ろよ」と思われたらリーダー失格なのです。
理想としては、「俺ならやれちゃうよ」という実力を示してあげるべきです。過去の実績を誇るのではなく、実績を使って新しい成果を出して見せるべきです。
リアルタイムの現場を知った上でのアドバイスであれば、フォロワーは絶対に受け入れてくれます。少なくとも並走してくれていると感じてくれ、その人は動き出します。
年齢も上がり、役職に就いた今だからこそ、評論家になってはいけないと、常に自覚していきたいと考えております。
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