病は気から2
筒井あやめ
彼女とペアになって1日、彼女は僕に対して存在を示すかのように彼女は僕の前に立ちはだかる。
それは今日、朝のバスからだった
筒井:あ〜〇〇じゃん!やっほ〜!
彼女は周りの人の目など気にせず大声を出す
〇〇:ちょ、ちょっと静かに…
筒井:え〜朝の挨拶は元気良くでしょ?もぉ挨拶は人生の基本だよ?
〇〇:人生語られても…
僕は吊り革を握って本を片手に読む
筒井:はぁ…余命1年のペアを目の前にして本とは…私じゃなかったら引いてたよ?笑
〇〇:君が引いてないのが逆に驚きだけど
バスが大きく揺れる中突然声を上げる
筒井:あ、そうそう!今日さ宿題忘れちゃって…
〇〇:うん
筒井:お願い!見してください!
彼女は手を合わせて頼む
〇〇:何でやってこなかったの…
筒井:色々考えてて?笑
その色々が何なのか僕は触れる事もできず許可を出すしか無かった。ずるい言葉だ。
〇〇:まぁ良いけど、今度忘れても貸さないからね…
僕は念押して彼女に言った。彼女自身も宿題をやらずに終わる人生は嫌だろう。
筒井:まぁ死ぬまでは忘れるよ笑
彼女は笑って誇らしげにそう軽く言う
バスが着き、学校にも着いた。
そこまでにペアとは言え女子と隣で歩いていると言う事実に違和感がとてつもなかった。
それは側から見てもそうだった。
彼女の事を知らない上に僕の事もよく知らない。
それは違和感の目が多くても仕方がない
筒井:ねぇ…君人気者なの?凄いジロジロ見られるんだけど
〇〇:逆だよ…分かるでしょ?昨日の雰囲気見て
筒井:確かに笑
僕たちは席に座りお互いに本を読み出した。
〇〇:君も本読むんだ…
筒井:え?なにその偏見、私でも読みますけどぉ?
〇〇:偏見っていうかなんか意外。
筒井:偏見じゃん!偏見だよ!私はこれでも昔図書委員長だったんだよ!?
〇〇:もっと意外だよ……
筒井:あ!アレでしょ?〇〇君は一応図書委員でしょ?機能してないけど
〇〇:一応ね?機能してないから
筒井:へ〜じゃあ今度当番の時行こっかな〜
〇〇:機能してないってば
そんな他愛も無い話を休み時間がある度ある度に話していた。
今までに無い時間で…とても楽しくて本を読むくらい時間が過ぎるのが早かった。
キーンコーンカーンコーン 🔔
昼休み、いつもなら1人で席に座って無言で食べていた。でも今はペアがいる
筒井:ねえ!〇〇の弁当めっちゃ美味しそうなんだけど…
〇〇:お母さんの手作りだけど…
筒井:うわぁいいな…お母さん上手過ぎじゃない?うちのお父さんでさ、ほら笑
筒井さんの弁当は明らかに料理上手とは思えない弁当の中身だった。
〇〇:お父さんと2人なの?
僕は綺麗な卵焼き、彼女は焦げた唐揚げを頬張りながら喋る
筒井:そうそう、お母さん一昨年癌で亡くなっちゃってさ
〇〇:へー大変だね…
筒井:他人事だなぁ…ペアに同情もないの?笑
〇〇:他人事って言うか分かんないんだけ、人が目の前で亡くなった事がなくてさどう感情移入すれば良いか分かんないんだよね
筒井:ふーん
筒井:じゃあさ、私が死んだら君が大号泣するか賭けない?笑
〇〇:あのさ、朝からそうだけど死ぬとかそう言うの良くないよ…
筒井:良くなくないよ!私が死ぬって事にポジティブなんだからそれでいいの!
その言葉に納得を重ねながらも、大声で彼女が死について語ったにも関わらず周りの同級生が見向きもしなかった事に驚いた。勿論話を聞いてないのだろうけど、自分だけが彼女の世界に物語に入ってるようだった。
ー放課後ー
僕たちは帰宅部のくせに学校の屋上に残っていた。
筒井:皆んな帰ってくね〜アリみたい笑
彼女は柵に寄っかかりながら下校する生徒を見て言う。
〇〇:アリみたいにって……
筒井:だってアリ見てよ、皆でワイワイ群れて下校だよ?なんか面白くない?
〇〇:だから人は蟻じゃないって……
筒井:冗談だよ笑
僕達は何となく来た屋上で談笑をざっと30分もしていた…その時間は本当に幸せでお互いを良く知れた。
筒井:ねね、君にお願いがあるんだけどいいかな?
〇〇:良いよ?
筒井:お〜じゃあさペアの約束にもう一つルールを付け足してもいい?
談笑のせいか心が開き始めたせいか、何のつっかかりも無く僕はその質問に許可した。
〇〇:全然良いよ何でも
筒井:じゃあルール2!
【お互いの事を好きにならない事】
〇〇:好きにならない事…?
筒井:そうそう!ほら?私って可愛じゃん?
〇〇:まぁそれは自分で言う事じゃ無いですけど
筒井:だからさ?君が好きになっちゃいそうだし?
〇〇:僕が君のことを好きになると思う?
筒井:念の為?笑
〇〇:まぁいいけど……もし僕が君のこと好きになったら?
僕は悪ふざけというか興味本位で聞いてみた
筒井:もしじゃなくてダメに決まってるから。人はね1日で相手の事を好きになっちゃうだよ、だから私に好きにならない事を約束して欲しいの。それを守るって言う約束。ダメかな?
彼女は僕の想像以上に怒っているようだった。本当は彼女自身が自分の死の重さについて良く理解していたのかも知れない。彼女を永遠に好きになるというのは無理という事実からだろう。
〇〇:良いよ、約束する。
筒井:うん、ありがとね笑
彼女の笑顔には涙が少し見えていた。
筒井:んじゃそう言うことで!また明日ね〜〇〇!
彼女は手を振りながら去っていく……僕も軽く手を振って見送った。
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【ルール2】
僕はこの約束の意味をあまり理解しきれてなかったのかもしれない。この約束がいつか僕の、彼女の心に傷を残すとは知らずに……
病は気から2
to be continued……
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