最終回

 どうも舎弟のならたです。物語には終わりがあります。終わりに向かって全てが進んでいくんです。とくに長く続いた作品はどう終わるのかが醍醐味になっていきます。しかし、意外に最終回って覚えてなかったりするんですよね。印象に残ってるのって、中盤の盛り上がりを見せるシーンとかそういう部分なんです。最終回ってなんだかんだで結構定番の展開ばかりでとくに印象に残らないことが多いのです。

 しかし、そんな最終回が多い中、私が子供の時、衝撃を受けた最終回があります。それは『仮面ライダー剣(ブレイド)』です。私は放送当時、小学三年生でした。仮面ライダーシリーズはそれまでも欠かさず観ていました。『剣』以前の作品も結構ハードな展開の作品が多かったのですが、とくに『剣』は異質でした。(以下、ネタバレを含みます)

 
 『剣』という作品は、仮面ライダーがアンデッドと呼ばれる怪人と戦っていく話なのですが、メインキャラクターの中に最強のアンデッド、ジョーカーがいます。ジョーカーはとある理由から普段は相川始と名乗り、人間の姿で生活しています。そんな彼も仮面ライダーに変身し、最初は敵か味方かわからないミステリアスなキャラクターでしたが、次第に主人公の剣崎たちと打ち解けていき、怪人というより人間的な側面が強くなっていきます。

 物語終盤、ほとんどのアンデッドが封印され、残るアンデッドがジョーカーだけになると、ゴキブリ型のアンデッドが大量発生し、全ての種を滅ぼそうとします。何故かというと、そもそもアンデッドが地球上に現れたのが一万年ごとに行われるこの世の種の支配者を決めるバトルファイトの所為で、これに勝利した種が世界を支配出来るのです。ちょうど一万年前のバトルファイトでヒューマンアンデッドが勝利したことで今現在人類がこの世界を支配しているらしく、もしもバッタ型のアンデッドが勝利したら、バッタが世界を制していたということです。しかし、ジョーカーはどの生物の祖でもないので、ジョーカーが勝利したことによって、全ての地球上の生物が滅ぼされてしまうのです。つまり世界を救うにはジョーカーを封印するしか手段がなくなってしまったのです。
 
 最終回、相川始ことジョーカーを封印しなければならなくなった仮面ライダー剣こと剣崎は最終決戦に挑みます。剣崎と始は既に友情が芽生えていて、お互い戦いたくない存在になっていました。始はジョーカーの姿で、剣崎は最強のフォーム、キングフォームで。このキングフォームは13体のアンデッドの力を借りた形態で、この状態のまま戦い続けると、アンデッドと融合し、ジョーカーの姿になってしまうのです。そんなリスクを背負った状態で剣崎はジョーカーと死闘を繰り広げます。そして、遂に剣崎は戦いの中でジョーカーになってしまうのです。

 しかし、それは全て剣崎の思惑通りでした。剣崎は元々自らがジョーカーになる為、戦っていたのです。ジョーカーが二体になることで、このバトルファイトの勝者がいなくなり、ゴキブリ型のアンデッドの大量発生はおさまります。つまり剣崎は、相川始を封印せずに世界を救う為に、自分もジョーカーになるという決断をしたのです。そして、エピローグで人々に日常が戻り、ジョーカーこと相川始も人間の姿で平和な日常を送っている姿が写しだされるのですが、そこには剣崎の姿はなく、物語は幕を閉じます。

 当時、この最終回を観て、完全に裏切られました。さすがにこの展開は予想出来ませんでした。それというのも、番組中期に公開された『剣』の劇場版で最終回後の世界を舞台にしていたからです。劇場版はテレビシリーズの四年後という設定で、そこでは剣崎がジョーカーを封印しているのです。それを鑑賞した上でその後のテレビシリーズを観ていたので、どうあのラストに繋がるのだろうという観点で楽しんでいました。そのミスリードがあった所為で余計に衝撃的だったのです。

 そしてなにより、この主人公の素直に賞賛出来ない狂った正義を突きつけられた当時小学三年生の私は、この最終回をなかなか消化することが出来ませんでした。ただそのモヤモヤした感情の中にたしかに格好良さも感じていたのです。最後の決断をした剣崎とこの物語の締めくくり方を決断した制作陣に対して。

 後に関連書などを読んで知りましたが、この最後の展開には剣崎が本来の仮面ライダーというものになるという意味が込められていたそうです。初代仮面ライダーは悪の組織に改造されて仮面ライダーとなり、その悪の組織を抜け出し、反逆者として怪人と戦うのです。つまり仮面ライダーは怪人と出生は同じなわけです。そして『剣』の剣崎は元々職業ライダーで、対怪人の組織の人間として雇われて仮面ライダーをやっています。ですから、職業ライダーから本来のモチーフ通りの仮面ライダーになったというわけです。

 この最終回以降、これ以上の最終回に出会えていません。最近、『仮面ライダージオウ』で『剣』の後日談みたいな話がありましたが、直接的な続編ではないにしろ、正直いらなかったのではと思いました。やるなら、ちゃんと単体でやって欲しかった。

 最終回というのはやはり難しいのかもしれません。どう終わらそうが、視聴者や読者にとっては終わること自体にネガティブな要素があり、どうしても喪失感が残るからです。だから剣の最終回は、その喪失感をかき消すぐらいの衝撃があったので正解なのだと思います。
#舎弟ならた #最終回 #仮面ライダー

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