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with・afterコロナでオフィスの「使い方」「借り方」はどう変わる?特にスタートアップに重要な視点

COVID-19による緊急事態宣言の中、オフィスにほとんど行かなくなった、あるいはもう既に1ヶ月以上は行っていない、という方も少なくないかと思います。企業経営者の方は事業へのダメージに加え賃借オフィスの家賃負担に頭を抱え、従業員の方はリモートワークにより同僚との他愛もない会話が損なわれ、チームメンバーとの業務遂行に支障が出てきている、と感じている方も多いでしょう。
緊急事態宣言が解かれた後、経営者はオフィスのあり方をどう考えるべきなのでしょうか?従業員はオフィスに何の価値を求めて出社することになるのでしょうか?そんなことを考えてまとめてみました。

まずはじめに今回が初めての投稿になりますので簡単に自己紹介させていただきます。
私は不動産会社に勤務し起業家・スタートアップ中心の街づくりを推進しながら、社会人起業家コミュニティ(本業とは別にサイドプロジェクトとして事業開発を目指すコミュニティ)に属しています。
主にこれまでオフィス事業を担当してきたことで、オフィス不動産の慣習を学び、経営者の方がオフィスに対して求めること、従業員(ユーザー)が求めることを生の声として聞いてきました。

それでは、with・afterコロナにおけるオフィスに対する考え方を、
①ワーカー(従業員)の視点
②経営者の視点
で考えてみましょう。

○ワーカー(従業員)の視点

「リモートワークでも全く問題ない」
「リモートワークの方が上司から余計な指示を受けずに快適に仕事ができる」
という感想もあれば、
「自宅にいると集中できない。会社で集中したい」
「在宅勤務でも作業効率はあまり変わらないが、精神安定上同僚と雑談したい」
などなど、人によってそれぞれ感想は違います。

私はリモートワークを通じて、資料作成の作業や通常の会議体においてはほぼ不都合を感じておらず、むしろ社外の方とのミーティングにおいては外出の移動時間がなくなったため、より多くの方とディスカッションすることができています。

一方でデメリットと感じる部分があるのも事実でして、強く実感していることは、以下の2点です。
(1)「偶発的・自然発生的な会話がないことに対するもどかしさ」
(2)「アイディアブレストなど創造的なディスカッションのし辛さ」

この2点を深掘りしていきます。

(1)「偶発的・自然発生的な会話がないことに対するもどかしさ」
リモートワークにおける会議は、事前に予定された時間に行われることがほとんどですが、逆に予定を入れなければ自然発生的に誰かと会話することが難しくなります。
上司へ軽く相談したい案件があった場合、予定を入れるほどではないけどサッと上司を捕まえて相談したい、そんな時、オフィスにいれば上司の顔色、忙しさなどを踏まえて、「ベストタイミング」で相談することができます。これができないもどかしさがリモートにはあります。
あるいは業務上直接の繋がりがない別部門の同期とたまたま会ったので仕事やプライベートの話をする、ということがリモートだとないわけです。
オフィスにいれば無意識的に目の前にいる人に声をかけたりと、他愛もない会話をすることが可能であり、こうしたコミュニケーションを求める方も少なくないでしょう。
もちろん、バーチャルオフィスという考え方もあり、XRを活用したテクノロジーの進化で、まるでオフィスにいるかのようにチームメンバーと違和感なくコミュニケーションが取れる時代がやってくる日も、そう遠くないのかもしれません。

(2)「アイディアブレストなど創造的なディスカッションのし辛さ」
これはスタートアップや新規事業開発を手がける部門の社員にとっては機会の多いことかと思いますが、オンライン会議では話すタイミングを躊躇することも多く、AさんとBさんが話している横で、CさんとDさんが会話する、といったブレスト時には普通に行われることが難しくなります(会話がダブって皆聞き取りづらい)。
また、リアルな場であれば出てきたアイディアのアウトプットをまとめるにあたり大きなホワイトボードを活用し、ポストイットを貼り付ける作業をしたりしますね。その時にはボードの左や右を行ったり来たり、議論によって注視すべきポイントを変えていたかと思います。この一覧性がオンライン会議では損なわれることがあります。PC画面の大きさ、仮に大型モニターを自宅に備えている場合でも、大きなホワイトボードの一覧性には敵わないと感じています。
リモートではできない、ということではありませんが、やはり創造的なディスカッションの生産性を高めるには、リアルの場の方が望ましいでしょう。

まとめると、ワーカー視点においては、必要な時に行くべき場所がオフィスであり、単に「働く場所 = オフィスのみ」ではないということです。
この「必要な時」はワーカーそれぞれによってタイミングが異なるでしょうが、オフィスは「必要な目的」を達成することができる場所である必要があります。
とあるエンジニアにとっては上司への報告相談よりも、集中的にプロダクト開発に取り組むことが最大の目的でありミッションであれば、無理して出社する必要はないでしょう。
一方自宅だと仕事に集中できない人にとっては、会社という空間が自らの意識を高めるものであるのならば、1日資料作成しかしなくても、会社は必要な場所となるでしょう。
ワーカーのニーズは様々ですが、こうした状況を踏まえれば、旧来の島型ワークスペースのように、社員全員がデスクに向かって作業することを前提としたオフィスはほぼ消滅すると考えられます(無論それを必要とする会社の場合は除きます)。

○経営者の視点

「オフィスは本当に必要か?」まずそんな声が聞こえてきそうです。
事業活動に必要な固定費用として多くの割合を占めるオフィス賃料。東京都心5区の平均募集賃料は坪単価で月30,000円を超え(※三幸エステートHPを参考)、全社員が働けるオフィスを前提にすると、相当規模の固定費となります。
固定費を削減できればその他の事業活動に必要な投資に充てることができるため、当然ながら固定費は少ない方がいいのです。

では、なぜそもそもオフィスを借りているのでしょうか?
経営者からすれば、会社のマネジメントを行いやすくするため、社員のコミュニケーションの活性化を図るため、主要顧客への営業のためなど、いくつか理由があると思います。あるいは、もしかするとオフィスは普通あるでしょ、という単純な発想からなのかもしれません。
最近では働き方改革が注目され、自社オフィスの中に集中できる個室ブースや、ディスカッション重視の会議室、卓球台の設置など、多少の遊び心をくすぐる空間を創る大手企業も増えてきました。
一方、資金力のないスタートアップはそこまで創り込むお金がありません(まず投資家に反対されるでしょう)。仮にそうした設備が自社オフィス内にあるスタートアップの場合は、今回のように予測不可能な影響を受けると、「余計なものだった。。固定費を削減するためにもそんなスペースはいち早く無くして必要最低限のスペースにしたい。。」となるわけです。

しかし、多くの不動産賃貸借契約はすぐに解約や縮小をすることができません。
なぜなら不動産オーナーからすれば突然の解約を避けるため、契約期間が年単位に設定され、解約予告期間も6ヶ月などの定めになっていることが多いからです(スタートアップ向けのオフィスでは規模も小さいため解約予告期間を短く設定している物件もあります)。
当然のことながら、不動産オーナーとしてはテナントにすぐに解約されてしまうと、次のテナント獲得のために一定期間を要し、空室期間が発生すると収入が全くなくなってしまいます。オフィスビルの維持管理にも相当の費用がかかるため、賃貸収入を生業とするオーナーにとっては大きな痛手です。

結論として、オフィスはどう借りるのが適切なのか?
先に述べたワーカーの視点からすると、オフィスは「必要な目的」を達成するための場所です。逆に言えばその目的が達成されるのであれば、それ以上の期待や可能性を求めるオフィスは、余分ということになるでしょう。本当に卓球台やハンモックがあるスペースが必要であるかは、冷静に見極める必要があります(決して否定するわけではなく、それが本当に「必要か」という観点です。

そして「借り方」として重要なのは、必要になった時に増やし、不要になった時にすぐに減らせるオフィスを借りる、という極めてシンプルなことなのです。
つまりコワーキングスペースやシェアオフィスがその代表例でしょう。こうしたオフィスは、通常のオフィスと異なりすぐに利用ができすぐに解約ができる(概ね1ヶ月前予告で)ことが多いです。
自社オフィスの賃借面積を最小限に抑え、会議室やテレビ会議をするための個室はシェアオフィスを活用する。社員数が増えれば一時的にシェアオフィスを利用させる。業績が悪化すればシェアオフィスを解約して固定費を削減する、などの対策がとれるわけです。
もちろんシェアオフィスの料金が高ければ手を出せないこともあると思います。であれば、戦略的に安いコワーキング、シェアオフィスのそばにオフィスを構える、という手も必要だと考えています。

これから新しいオフィスを開設されようとしている企業様、あるいは移転を検討している企業様にとって、こうした考え方が参考になれば幸いです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

#オフィス #スタートアップ #コロナ

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