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【マーラー交響曲第2番《復活》 分析編②】第5楽章
《復活》分析編第2回やっていきます。
今回は第5楽章を分析していきます。
第5楽章は第1楽章に対するアンサー的な楽章
でしたね。
本日の目次はこちら(タップorクリックで飛べます)
第5楽章
👇の表にまとめていますが、5楽章は楽章を通して怒りの日(最後の審判)を経て復活までの様子が描かれています。
ソナタ形式
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第5楽章も主題・動機が多く、一聴すると1楽章よりも複雑ですが部分ごとに分けると導入部とソナタ形式の提示部・展開部・再現部に相当する部分にはっきり分けることができます。
また、5楽章は歌唱様式のレチタティーボやアリオーソが入っていたり再現部(第3部)は合唱が中心になったりと、ベートーヴェンの第九との共通点もたくさん見られます。これに関してマーラーは次のように言っています。
大掛かりな構成の音楽を思いついたときは、いつも、音楽的アイデアの担い手として「言葉」に助けを求めなければならなくなります。ベートーヴェンも第9を作曲したとき似たような体験をしたに違いありません。ただ、ベートーヴェンの時代には、それにふさわしい題材がまだなかったという違いはありますが
主題・動機
「恐怖のファンファーレ」(第1主題)
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冒頭導入部でC音のオルゲルプンクト(保続低音)上で鳴るB♭mの和音を伴いながらこの「恐怖のファンファーレ」が登場します。この「恐怖のファンファーレ」は第1主題に相当します。着想はベートーヴェンのファンファーレから得たようです。
ちなみに、この冒頭の恐ろしい印象を与える不協和音(B♭m/C)についてマーラーは「死の叫び」と説明しています。
「永遠」・「昇天」の主題(第2主題)
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ホルンによる「永遠」・「昇天」の主題は第2主題に相当します。
ホルンによる3連符の「荒野で叫ぶ者」の動機: 「叫ぶ者」の告知(1度目)
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「怒りの日」「復活」「叫ぶ者」による終末論的主題(第3主題)
第3主題に相当する主題は「怒りの日」「復活」「叫ぶ者」の動機で成り立っています。
「怒りの日」の主題
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「復活」の動機
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「叫ぶ者」の動機: 「叫ぶ者」の告知(2度目)
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「懇願」の予示(第4主題)
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「懇願」は、再現部でアルト・ソプラノによって歌われる「おお、信じるのだ、我が心よ、信じるのだ(O glaube, mein Herz, o glaube)」のことです。「懇願」の予示は器楽によってレチタティーボ・アリオーソとして提示されます。これは第4主題に相当します。
旧約聖書との関係
《復活》の自筆稿スコアとヴォーカル・スコアには元々、「荒野で叫ぶ者」(Der Rufer in der Wüste)と「大いなる呼び声」(Der große Appell)というタイトルが書いてありました。(出版の際にマーラーが削除したようです。)「荒野で叫ぶ者」(Der Rufer in der Wüste)は現行版の練習番号3に、「大いなる呼び声」(Der große Appell)は練習番号29に元々タイトルが付けられていました。
特に「荒野で叫ぶ者」というタイトルは旧約聖書のイザヤ書第40章第3節〜第5節から来ているものと考えられます。
荒野で叫ぶ者の声がする。「主の道を備え、われわれの神のために砂漠の大路をまっすぐにせよ、すべての谷は高くされ、すべての山や丘は低くされ、高低のある土地は平らになり、こうして主の栄光があらわれ、人間はみなこれを見る。これは、主の口が語られたものである。」
7と3の数字と「神の超越性」
《復活》完成は1894年(34歳)で、ユダヤ教からローマ・カトリックへ改宗したのが1897年(36歳)なので、《復活》作曲時はまだユダヤ教徒でした。旧約聖書はユダヤ教・キリスト教の聖典となっています。《復活》も曲の世界観としてはユダヤ教的な側面が強いですが、一部キリスト教的な側面も見せます。
5楽章は特にキリスト教的に重要な数字(7と3)が印象的に使われています。
3の数字
3の数字は三位一体の神や神の世界を意味します。旧約聖書は一神教的な教義に対して、三位一体の考え方は新約聖書以降に出てきた解釈です。
7の数字
7の数字は、完成・完全を意味します。
3が神の世界・4が自然界のことで、それらを合わせた完成された世界を7で表します。
5楽章での「7」
「7」の数字は展開部の構成やグロッケンシュピールの音で見られます。展開部は7つの部分に分けられて「最後の審判」の恐ろしい光景を描いています。展開部の最後、「永遠」と「昇天」の主題のところでグロッケンシュピールによって7つの音が鳴らされます。
5楽章での「3」
「3」の数字は5楽章の終結部で印象的に使われます。終結部(732-764小節)の「永遠」の主題とともに3つの鐘が3拍子で鳴り響きます。元々4/4拍子に対して3拍子が作られているのも印象的です。
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その他印象的な部分
打楽器のクレッシェンド: 「地は揺れ、墓は口を開く」
提示部から展開部へとつながる部分で、バスドラム, スネア, タム・タム(2台), ティンパニを使ってクレッシェンドされる。マーラーによれば、ここは「地震」のように演奏されることを意図されています。
「地震が大地全体を揺るがす。太鼓の轟音を聴きたまえ、そうすると、きみの髪の毛は山のように逆立つのだ」
また、「地は揺れ、墓は口を開く」とも言っており、「墓は口を開く」は恐怖の雰囲気を表すものとしています。
しっかりこの演奏効果は得られていますし、「最後の審判」の展開部へと向かっていくことがはっきりと分かる部分ですね。
フルート・ピッコロによるナイチンゲールの鳴き声と
トランペットによるファンファーレ:
「黙示録」的な復活した世界の到来
再現部の冒頭に位置するフルート・ピッコロによるナイチンゲールの鳴き声とトランペットによるファンファーレも非常に印象的な部分でしょう。
トランペットによるファンファーレの部分についてはマーラーによって
「4本のトランペットは対照的な場所から響かなければいけない」
と指示されています。
これは立体音響効果を狙ったものですが、聖書の内容も想起させるものになっています。「マタイによる福音書」の第24章31節には次のようにあります。ちなみに、「マタイによる福音書」は新約聖書の巻頭に伝統的に収められていますが、内容は旧約聖書から引用されている部分が多いです。
「彼は大いなるラッパの音と共に御使たちをつかわして、天の果てから果てに至るまで、四方からその選民を呼び集めるであろう。」
ここの部分はマーラーによれば
「この世の生命の最後のこだまの震えのように聴こえてくる」
と解釈されています。
トランペットによるファンファーレの前にフルート・ピッコロによって演奏される部分はナイチンゲールの鳴き声を表しているとされています。
まとめ
第5楽章の分析についてはとりあえず以上にしておきたいと思います!笑
細かく紐解くと展開部での動機の変形などまだまだ面白い部分はたくさんありますが(下手したら《英雄の生涯》より大変です笑)、この回でエッセンスは網羅できていると思います。
ちなみに、、、
調性について
《復活》はC moll(1楽章)で始まりEs dur(5楽章)で終わります。このような変則的な調性の移行は古典派〜ロマン派中期では見られなかったものです。《復活》以降の交響曲で、マーラーは変則的な調性の配置を見せることが多くなっています。
マラ3: D moll → D dur
マラ4: G dur → E dur
マラ5: Cis moll → D dur
マラ7: H moll → C dur
マラ9: D dur → Des dur
《大地の歌》: A moll → C dur
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