東京ユヴェントスフィルのプログラムが最高すぎる!カウントダウン解説を書いてみるよ!リゲティ ルーマニア協奏曲①
7/21の東京ユヴェントスフィルの演奏会に向けたカウントダウン的プログラム解説、第2弾いきます。
カウントダウン解説については、前回の記事を参照👇
今回は、
リゲティ ルーマニア協奏曲
について解説していきます。
リゲティ
リゲティ(リゲティ・ジェルジュ・シャーンドル, Ligeti György Sándor)は20世紀を代表する前衛作曲家です。リゲティ=前衛というイメージが強い方も多いかもしれません。もしくはスタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』・『シャイニング』・『アイズ ワイト シャット』などで使われたリゲティの音楽のイメージでしょうか。彼の作品は必ずしも前衛的で難解なものばかりではありません。特に、今回ユヴェントスで取り上げるルーマニア協奏曲は非常に聴きやすい、リゲティ入門にはピッタリの曲と言えます。
それではまず、リゲティの生涯と背景・音楽スタイルの変遷を見てみましょう。
生涯と背景
1923年にルーマニアのトランシルヴァニアで、ハンガリー系ユダヤ人の家庭に生まれる
第二次世界大戦中にナチスの強制労働キャンプに送られ、家族の多くをホロコーストで失うという悲劇的な経験をした
1956年のハンガリー動乱後、オーストリアに亡命し、その後ヨーロッパやアメリカで活動
音楽スタイルの変遷
初期 (1950年代前半まで)
ハンガリーでの活動時期
バルトークやコダーイの影響を受けた民俗音楽的な作風
実験的時期 (1950年代後半〜1960年代)
西側に亡命後、電子音楽やセリアリズムを学ぶ
「マイクロポリフォニー(ミクロポリフォニー)」技法の開発
前衛的な作品を多数発表
転換期 (1970年代)
リズムへの関心が高まる
ミニマル音楽の影響を受け始める
オペラ『ル・グラン・マカーブル』(1974-77)作曲
創作停滞期と新たな作風の確立
『ル・グラン・マカーブル』完成後、作品をほとんど発表しなくなった
1982年の『ホルン三重奏曲』で新たな作風を確立
後期 (1980年代以降)
より調和的な要素を取り入れつつ、複雑なリズム構造を探求
アフリカの音楽やフラクタル幾何学からインスピレーションを得る
ピアノのための『エチュード集』など、技巧的かつ表現力豊かな作品を発表
リゲティは、最初から前衛作曲家であったわけではなく伝統的な手法から始まり民俗音楽を経て、徐々に前衛へ傾倒していったことがわかります。前衛へ傾倒したリゲティの作品は難解で苦手意識を持つ人も多いかもしれません。しかし、今回取り上げているルーマニア協奏曲は1951年作曲の作品。まだ初期の作品で、伝統的なスタイルや民俗音楽の要素などバルトークらの影響下にいた頃です。そのため、民俗的ではありますが前衛的な難解さはほとんどないと言って良いと思います。
ルーマニア協奏曲
それでは、ルーマニア協奏曲の内容について見ていきます。
作品の背景と特徴
1951年に作曲された初期の作品
リゲティの幼少期のルーマニアでの音楽体験に基づく
ルーマニアの民俗音楽の要素を取り入れているが、リゲティ自身の創作も含まれる
基本的に伝統的な形式と調性を用いているが、後の実験的な作風への萌芽も見られる
ルーマニアで採取した民謡や民俗音楽を使っていたり、民謡に似せた自身の創作をしているあたり、かなりバルトークとアプローチが近いです。その影響の強さが感じられます。バルトークの、東欧の民俗素材を使っている曲がお好きな方はこのルーマニア協奏曲もかなりハマるのではないかと思います。
構成
4楽章構成を取ります。
第1楽章: Andantino
第2楽章: Allegro vivace
第3楽章: Adagio ma non troppo
第4楽章: Molto vivace
第1楽章と第2楽章は、リゲティの1950年作曲の《バラードとダンス》(2つのヴァイオリン編)の転用・編曲したものです。
音楽的特徴
「協奏曲」という名称は、バロック時代の合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)を意識していると思われる。バルトークの《管弦楽のための協奏曲》(オケコン)も想起させる名称で、ベルトークへの敬意や受けた影響を感じられる
第3楽章では、ホルンが自然倍音を利用して演奏する。これは後のリゲティ作品、特に1982年のホルン三重奏曲でも使用される技法
4楽章のヘ長調(F dur)の中で、F#音を使って不協和音を作り出している部分がある。これが、当時の社会主義リアリズムの規範から逸脱しているとみなされた(※当時のハンガリーは共産主義国家)
4楽章最後にコンサートマスターによる鳥のさえずりのような演奏効果のあるソロがある
ちなみに、ルーマニア協奏曲は1951年完成にもかかわらず、完成後すぐに政府によって公開演奏が禁止され1971年まで公に演奏されませんでした。これは、上述のような不協和音が政府に「不適切である」(=社会主義リアリズムに反する)と判断されたためです。
4楽章最後のコンマスソロの鳥のさえずりの部分については、インタビュー動画の後半の方でも触れているのでぜひそちらも観てみてください!
バルトークのオケコンや合奏協奏曲についての解説記事はこちら。
演奏会情報
演奏会の詳細はこちら👇
まとめ
今回は、リゲティのルーマニア協奏曲について、リゲティとはどんな作曲家なのかやその音楽スタイルの変遷、ルーマニア協奏曲とはどんな曲なのかを簡単にまとめてみました。解説の中で触れているように、あまり前衛的な要素は感じられず、民俗的なダンスミュージックとして楽しめる曲だと思います。ぜひリゲティ=前衛というイメージにとらわれずに聴いて頂きたいと思います!
7/21の演奏会まで、あと5日!(本当に全曲分間に合う!?)
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リゲティ、ベリオ、ブーレーズ―前衛の終焉と現代音楽のゆくえ
ルーマニア協奏曲よりも後のリゲティについて書かれている本ですが、結構面白いです。
ジェルジリゲティ論
これは読んだことないですが、読んでみたい本です。
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