見出し画像

【マーラー交響曲第2番《復活》 分析編⑤】第4楽章

こんにちは。
《復活》分析編最終回です。
今回の分析は第4楽章『原光』についてです!

4楽章『原光』は元々歌曲集《子供の不思議な角笛》に組み込まれていた曲でしたが、後に削除され最終的に4楽章として《復活》に組み込まれたという経緯がある曲でした。

歌詞テキストに使用されているのは詩集『子供の不思議な角笛』のテキストで、アルトとオーケストラ用に作曲されています。

本日の目次はこちら(タップorクリックで飛べます)

第4楽章『原光 Urlicht』

この4楽章はスケルツォ楽章(3楽章)で提示された人生に対する懐疑的な問いに対して答え、交響的カンタータ(合唱付きの楽章)であるフィナーレへと導くもので、ストーリーの演出上重要な役割を担っています。

マーラーは4楽章『原光』について次のように解題しています。

『原光』は、神と永遠の生に対する魂の問いかけと、それらを獲得しようとする魂の闘争なのだ

三部形式

第4楽章の構成

マーラーは詩の構造を三つの連からなるもの、と考えたようです。
そのため楽章の構成も三部形式となっています。
主部(部分A)再現部(部分A')の部分は同じ動機と主題に基づいていますが、構造や性格は同じではありません。部分A冒頭で聴かれた歌の旋律は、部分A'の最初ではより緊張し、切迫した動機に変化します。

ちなみに、和声的にもドミナントを続けていることによる推進力で焦燥感や切迫感が演出されていますね。

再現部(55-58小節)

詩の構造

表の通りに各部ごとに詩を三連に分けると👇のようになります。

導入部
O Röschen rot,
おお、紅のちいさなバラよ、

第1部(部分A)
Der Mensch liegt in größter Not,
Der Mensch liegt in größter Pein,
Je lieber möcht' ich im Himmel sein,
人間は大いなる窮乏のうちにある、
人間は大いなる苦悩のうちにある、
だから私は天国にいたいのだ。

第2部(部分B)
Da kam ich auf einen breiten Weg,
Da kam ein Engelein und wollt mich abweisen,
Ach nein, Ich ließ mich nicht abweisen,
私が広い道にたどりついた時、
天使が現れて私を追い返そうとした。
あぁ、いやだ!私は追い返されたりはしない、

第3部(部分A')
Ich bin von Gott und will wieder zu Gott,
Der liebe Gott wird mir ein Lichtchen geben,
wird leuchten mir bis in das ewig selig Leben,
私は神のもとから来たものであり、そして再び神のもとに帰るものなのだ、
親愛なる神様は私にかすかな光を与えて下さるだろう、
永遠の至福に満ちる生への道を照らし出してくださるだろう。

出典: マーラー交響曲のすべて

主題・動機

コラール風の旋律

コラール風の旋律(Tpより)

冒頭でファゴット・コントラファゴット・ホルン・トランペットによるコラール風の旋律。この旋律は主部(部分A)の27〜30小節(「だから私は天国にいたいのだ!」の部分)・再現部(部分A')の63〜65小節(「永遠の至福に満ちる生」の部分)でそれぞれ回帰します。

主部(部分A)と再現部(部分A')の同じ動機による主題

主部(14-20小節)
再現部(54-58小節)

「サナギの状態」を表すグロッケンシュピール

中間部で天使が現れる場面では、グロッケンシュピールが使われています。
マーラーはこのグロッケンシュピールについて、友人のバウアー=レヒナーに次のように言及しています。

新しく、子供として始められるべき、サナギの状態にあるような、天上にある魂に思いを至らせるものである

「サナギの状態」(Pauppenstand)はゲーテの『ファウスト』第2部第5幕最終場面に出てくる言葉で、この場面は後に交響曲第8番(マラ8)第2部の歌詞テキストとして使われます。

マーラーのゲーテに対する造詣の深さや受けた影響の大きさが垣間見えますね。

ちなみに、ここのグロッケンシュピールは7つの音が鳴らされます。
この7という数字は、キリスト教的には完成・完全を意味する数字で、フィナーレの「永遠」と「昇天」の主題のところでもグロッケンシュピールに7つの音を鳴らさせていましたね。

まとめ

『原光』の分析編は以上です。
『原光』はスケルツォからフィナーレをつなぐ、ストーリー上重要な楽章です。後のマラ8のテキストにつながる、ゲーテの『ファウスト』ともコンセプト上の繋がりが見えておもしろいです。

今回で《復活》分析編も完了しました!

次回は今回散々《復活》と繋がりが深い曲としてご紹介してきたマーラーの交響曲第1番《巨人》について解説を書いていきたいと思います!
(仮決めなので変えるかもしれません笑)


サポート(投げ銭)でnoteのクオリティと執筆者のモチベーションが上がります!🔥🔥 このnoteの曲解説がおもしろい!!と思われた方はぜひ!投げ銭をよろしくお願いします!🙏🙏🙏✨