半導体開発の今後

October Thursday 21. 2021
Verbalization Practice:274th day

Reference:AppleやGoogle、半導体開発に本腰 「設計」競争を左右 日経

IT大手が半導体の自社開発を始めている。Googleは28日に発売予定の新型スマホ「Pixel(ピクセル)6」に自社開発の半導体を使っている。Appleも2020年に独自半導体「M1」を開発し、Macbook Proに搭載した。

半導体は設計や開発にコストがかかるため、これまでは外部企業に委託するのが普通だった。しかし、AI等の技術革新や高速通信が普及し、半導体に求められる性能が急速に高まると、汎用的な市販品では不十分になり始めた。さらに、独自半導体を作ることで他社との差異化もでき、半導体が製品の競争力を左右する要因になり始めている。

元々、半導体は設計開発と製造を水平分業するサプライチェーンが構築されていた。しかし近年、製造側のファウンドリーも半導体の設計機能を内製するようになり、その動きがGoogleやAppleに波及している。また、テスラやトヨタといった自動車産業でも、EV向けの半導体を自社開発する動きが生まれている。

さらに、米中摩擦による地政学上のリスクも半導体の水平分業を加速させた。2021年の半導体受託製造は台湾が64%、韓国が18%と東アジアに集中していた。特に台湾では米中関係の悪化で先行きが不安定になるなか、生産拠点の分散が必要になっていた。そのため、アメリカや日本をはじめとする各国は、TSMC等の半導体製造工場の誘致に走った。

地政学上のリスクからの生産拠点分散の話は、今年前半の記事でよく取り上げられていたが、その動きが企業の競争力の確保という形で昇華しているように感じた。もしかすると、それ以前から独自生産の動きはあったのかもしれないが、危機から新たな生産システムが生まれるという良い実例なのかなあ、などと思いながら記事を読んだ。

また記事では、半導体の自社製造の動きは、確かに差異化のための技術革新に大きく貢献するが、資本力が無ければ製造分野への投資とその運営を担うことは難しく、企業間格差の拡大を招くという指摘もあった。世界的に格差是正がトレンドになっている今、差異化による商品の競争力を保つための資本力を認めつつ、新規参入企業の可能性をどのように維持していくかが難しい点だろう。

今日知った用語

ファブレスメーカー ( fabrication facility less ):自社は製造工場を持たずに開発を行い、生産を他者にアウトソーシングして、その製品を調達し自社製品として販売する。製造設備の初期投資の必要性がなくなり開発に集中できるというメリットがある。半導体では4年に一度、製造企業でシリコンサイクルのために製造プロセス更新・投資が行われるため、減価償却期間が短く、事業として成り立たせるのに体力が必要だった。そのためリスクのある製造業を分離することで安定的な研究開発を行えるファブレスの仕組みが採用される傾向にあった。研究から開発まで一貫して行う垂直統合に対し、このようなサプライチェーンを水平分業という。

シリコンサイクル:半導体産業で見られる約4年周期の景気循環。技術革新のスピードが速い半導体産業では、減価償却費を意識して少しでも稼働率を高めることで製品当たりの製造コストを下げようとする。しかし、半導体市場が拡大し景気の良い時期に各社が投資を行うため、その生産が本格的になるのは1~2年後。かつ各社のタイミングが揃ってしまうため、供給過多になり値崩れして景気が悪くなる。そうこうしていると、技術革新が起きて次の設備投資のタイミングになる。という繰り返しをしているようだ。

アウトソーシング:自社の特定の業務を、より特化した協力関係にある外部専門業者に発注すること。

OEM( Original Equipment Manufacture):オリジナル製品の製造業者。自社で製造した製品を他社ブランドで販売する製造業者。

English Translation

Because semiconductors are costly to design and develop, they have usually been outsourced to outside companies. However, as technological innovations such as AI and the spread of high-speed communication rapidly increased the performance required of semiconductors, general-purpose commercial products began to be insufficient. Furthermore, the creation of proprietary semiconductors can differentiate a company from its competitors, and semiconductors are beginning to become a factor that determines the competitiveness of products.

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